龍野のことについて書いて ので、続いて、現在の竜野市の地域出身の哲学者、三木清のことについて書くことにします。

 三木清は、京都帝国大学の卒業で卒業の後、ドイツに留学しているのですが、1924年にはパリに移りパスカルを研究することになります。 その成果は、帰国後に、『パスカルにおける人間の研究』として1926年に出版されています。三木清は、京都帝国大学に就職することを希望していたのですが、かなわず法政大学の教授となり ます。一方、岩波茂雄の岩波書店設立に協力し、岩波新書には、三木が執筆した『哲学入門』が収められています。そして、青年たちの悩みに応えたエッセイ集『人生論ノート』は、ベストセラーとなり、現在も版を重ねています。マルクスを研究の対象としたことなどで、政府や軍部に睨まれ三木は、刑務所に入れられます。そして、1945年9月、終戦後、一月が過ぎているのに、刑務所 内で病死しました。このことはGHQに衝撃を与え占領政策に変更を加えさせたのだと言われています。

 私は、新潮文庫で出ている『人生論ノート』で三木清の作品に半世紀ほど前に初めて触れたの ですが、以来、繰り返し、この本から勇気を  受け取っているように思います。

 それから三木清の作品のうち、もっとも心に残っているのは、「真実の秋の日てれは専念に  こころをこめて歩まざらめや」と唄った短歌です。若者が一途に生きることの大切さを説いたこの歌が、私はとりわけ好きです。