大学病院の小児病棟看護師から保育業界に転職してきて10年目になりました。
保育士不足が叫ばれるようになって久しいですね。でも、潜在保育士は全国に約76万人。
決して少ない数ではないと思います。
保育の仕事は好きだけど、子どもたちの命や安全を守る職種なのに給料が安い。業務量が多い。それも子どもたちの午睡や降園後でないとできない。休憩が取れない、取らない。休憩を取る暇があったら溜まった仕事を片付けたい。結局終わらずに持ち帰ってやる。キツすぎて、割に合わなくて、カラダやココロを壊して辞めていく。
そして、現場に残った人たちにさらに負担がかかる…の悪循環のループ。
保育士配置基準にしても、70年以上前の基準がいまだに引き継がれています。
この基準がそもそも物理的に無理なことは、現場にいる人たちはみんな分かってる。
課題は山積みですし、一朝一夕に片付くものでもありません。
そこで、とりあえず人数を確保しようと、子育て支援員やらみなし保育士制度やら、その場凌ぎの政策を続けているわけです。
そして、そこに来てこれ。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO64434890X10C22A9EA3000/
https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/jirei/doc/jirei30_h30_1-07.pdf
資格を持たない人を保育士としてカウントできるようにすることが、配置基準の規制緩和の主な取り組みです。
看護師は、専門性を活かして対応するように言われながら、保育業務の比重が高まり、ますます看護や保健の仕事をする時間をもらえない。専門性を発揮する場面がない。
保育を専門的に学んできたわけではないのに、保育士と同等の知識やスキル、対応を求められる。そして、雑用業務を押しつけられる。基本的に看護師はひとり配置なので相談できる人もいない。保育園における自分の存在意義を見出せない。
Twi○terなどを見ると「健康や保健に関することでも情報を回してくれない」「補助金獲得のために雇用した」と言われている看護師もいらっしゃるようです…
一方で、保育士は国家資格をもつ専門職のはずなのに、保育の専門知識のない看護師をみなし保育士とする。子育て支援員や地域限定保育士など、正式な保育士資格を持たない人たちまでどんどん入れていくとなると、なるほど、確かに頭数は揃うかもしれません(素敵な子育て支援員さんにもたくさんお会いしているので、彼らを否定しているわけではありません。あしからず。)。
その一方で、「保育の仕事って保育士資格がなくても誰にでもできる仕事なんだ」という風潮が強くなり、ますます保育士の立場、専門性を貶めているということにはなりませんか?
そんなその場凌ぎの方法ではなく、保育士の専門性に焦点を当て、保育士を目指す人のサポート体制を充実させ、給料を上げ、福利厚生を整え、保育士になりたいという人が保育士としてプロ意識を持って働ける、保育士として食べていける、そんな環境を整えることの方が先決だと思います。
子どもの保育料を無償化するお金があるのなら、もっと保育士の処遇改善に充てるべきでした。
8%から10%に増税した分を保育にも回すと言いながら、実際に保育士に回ってきたのはほんの雀の涙ほどでした。
聞こえの良い、票取り法案はもうウンザリです。
現状を打開するためには、その場凌ぎの対策ももちろん必要です。それは間違いありません。
でも、それで終わりではないですよね?
もちろん、その次のプランも長期的視野をもって考えていますよね?
机上のデータの数字を見ただけで議論を進めていないですよね?
みなし保育士の要件緩和についても、きちんと現場の保育士や看護師にヒアリングしていますよね?
データ収集方法や考察の一貫性や妥当性も充分議論されていますよね?
こうした法案や施策に携わる人たちには、できれば3か月、最低1か月は現場での実務研修を義務化してほしい。
「お客さま」でも「視察」でもなくて、「スタッフ」として「実務研修」をね。
現場に入らずして、現場を見ずして、現場のための法案や施策ができるわけありません。
立場や見方によって、いろいろと意見はあると思うので異論は認めます。
現場で働いている職員であり、3人の子どもたちの親でもある僕個人としての見解は以上です。