この3月中旬過ぎ、妻がコロナに感染した。

土曜の夕方、自覚症状があり自ら近くの医者に行って診てもらうと「コロナ」と判定された。

 妻は予防接種を5回受けていたが、その都度特有の後遺症に悩まされていた。またコロナが5類に移行したこともあって最近一年は予防接種を中断していた。それが感染した原因だろう。それに比べ私は毎回接種を怠らないでいた。

 

 妻が発症し2日後の夜、今度は私が全身に違和感を覚えるようになった。

 夜中、何度か体温を測ると、普段は36度になるかならないかの低体温なのに測るたびに38度前後を指しているのだ。

「しまった、----感染してしまったか?」

いつもと違った違和感を感じるのは咽喉の痛みであり、熱であり、倦怠感である。これはコロナに感染したに違いない。

 

翌朝になって、妻が受診した病院に電話すると「夕方検査に来てくれ」と言う。発症したばかりだと検査でウイルスが見つからないことがあるらしい。そのために午後遅く来てほしいというので指定された夕方に検査に行くと意外なことに結果は陰性で

「コロナでもインフルエンザでもなく、ただの風邪ですよ」

とニッコリ笑顔で医者は言う。

 しかしこんな発熱は数年体験したことが無く診断に疑問を抱き帰宅することになった。

 

-----翌朝、簡易検査キットを買ってあるのを思い出し、綿棒を鼻腔の奥に押し当てて調べると検査キットは「陽性」を示していた。 

 

 

検査キット上に「赤線が2本」入ると陽性である。

一体何が本当なのだ?と日頃通っている別の医院に診断を仰ぎ調べてもらうことにした。

「発熱外来」という専用通路から病室に入り調べて貰うとこちらのかかりつけ医は

「コロナになっていますね」

との診断だ。医者によりこんなに診たてが違うのか、と唖然としたのだった。

 

平均して発熱後5日経つとコロナウイルスは消滅するというが、妻は簡易キットで調べてみると6日後に赤線一本の陰性になっていた。私の発症は妻の2日後なので週末か週明けに陰性になるはずで、悶々とした日々を過ごすことになった。

 

何故悶々としていたかと言えば週明けの日曜日に私は四国遍路に出かける予定を立てていたからだった。コロナが治るか、治らないか、ぎりぎりの期間なのだ。

 

実は一か月以上前から、松山市から始まり香川県、大阪市のホテルまで18日分のホテルや民宿の予約をとっていたのだ。日曜出発にギリギリ治るかどうかの境だ。

「治れ、治れ」

と、毎晩眠る前に心の中で祈る日が続いた。

 

金曜、土曜と体調は日ごと回復していた。回復は時間の問題である。

一日ごとに、からだが元に戻る感覚があった。ウイルスは日曜日には消えるに違いない、と妙な確信、自信があった。日曜日になりマスクをして私はリュックを背負い新幹線の人となった。

 泊まったホテルで調べると検査キットの赤線はその夜1本になっていた。陰性である。 

 

 

もう他人様に感染させる恐れはなくなった、明日から安心して遍路旅を続けられる、とほっとしたのだった。

-----ところが、この2日後、私は52番札所「太山寺」で救急車を呼ぶ事になったのだった。