2021年5月、ヤマハ・ボルト950ccからスズキ・Vストローム250ccに乗り換え、1年以上経過して改めて判ったことを書いてみます。

 

 私はそれまで乗っていた950ccのバイクを250ccに買い替える時、3車種を候補として選んでいた。

 ホンダのレブル250とカワサキのベルシス250、そしてスズキのVストローム250を候補に選んでいた。250ccにこだわったのは維持費が安くなること、高速が利用でき、積載能力がある事だった。

 

 カワサキベルシス250は店頭で試しにシートに跨った段階で足付きの悪さから真っ先に候補から外した。

 たまたま店に展示してあったベルシスはローダウンシートの特別誂えだったが店主に勧められるままシートに跨ると靴先が地面にかろうじて触れる状態だった。片足で支え切れない、と乗った瞬間に感じた。これじゃ間違いなく交差点で立ちゴケする、と。

 

 ホンダレブルはその点、足付きが抜群だったが当時は注文しても納期が見えない状況が続いていた。いつまで待ったらいいのかメーカーから納期返答が返ってこない状況だと店主がこぼす始末で、未練はあったが諦めることにした。


 残ったのがスズキVストロームだった。単に跨ってみるのと、実際に走ってみるのとの違いを体験したくてレンタルバイクを4時間借りることにした。走り終えて、納得いかないところが何点かあった。100%納得して購入を決めた訳ではなかった。

 

〇 信号待ちで、ニュートラルから1速に入らない、または逆のケースが何度かあり、このバイクを選んでいいのだろうか、ためらいがあった。

〇 左右のペダルが膝の真下にあり、シートにまたがったまま車体を移動させるとき邪魔になり、ペダルの幅も安っぽく狭く感じていた。

〇 それまで乗っていたシート高690mmのボルトとVストロームでは+110mmの差があり足付きに不安が残った。

-----この3点を不満に思いながら結局は消去法から購入した訳だったが、1年経って当時の第一印象が今では変わりつつある。

 

 〇 「停車している時ギヤがニュートラルから1速に入らなかった」

は、あの時借りたレンタバイクだけがそうだったのか、と思うぐらいに購入してみると何ら問題なくスムーズに操作できている。

 -----これはきっとレンタルバイクが私にとって初体験だったので

「バイクを時間内に返さねば」

と時間を焦っている部分があったからではないかと思う。ギヤが微妙にかみ合っていないのに力で押しこもうとしギヤが入らなくなっていた気がする。

 購入後も、確かにニュートラルからギヤが1速に入らない時が何回かあったが、車体を揺すりタイヤをわずかに動かしてクラッチレバーを握り直すとギヤはすんなり入った。この基本対処法をレンタルの時は焦ってしていなかったのだ。問題はバイクに対する心の余裕だったと今では思っている。

 

〇ペダルと足付きについて。

 -----それまで乗っていたヤマハ「ボルト」はクルーザータイプと呼ばれるバイクで、アメリカンに近いスタイルだった。シート高は690mmと低くそれに比べVストロームは110mmもシート位置が高く、カワサキベルシスほどではないが跨るとつま先立ちになり不安だった。

 しかし、何回か乗るうちに

「オートバイには、そのバイクに合った乗車位置、姿勢がある」

と判って来た。

 

 ------オートバイに乗る姿勢は大きく分けて3パターンがあると思う。

ひとつは前傾。もう一つは後傾で3つ目は前傾でも後傾でもない中間姿勢だ。Vストロームはまさに中間スタイルで乗るバイクだった。

 

 前傾はスポーツバイクにみられる重心を前に風を切る姿勢。風に対する抵抗力を極力抑える姿勢で前かがみ姿勢をつくるためペダルは後方になる。

 

      

 

 後傾は、例えていうと革張りのソファーに深々と座る座り方で、特にハーレーのようなアメリカンタイプのバイクに多い運転姿勢だ。ボルトもこのタイプに近かった。タンクとシート位置が離れ、前方ペダルに足を投げ出す形だ。ゆったり構える運転スタイルだ。

          

        

 

 その中間にあるのが背筋を伸ばし学習椅子に行儀よく座る座り方で、Vストロームがこのタイプに当たる。ブーツと腰と頭の位置がほぼ一直線になる運転姿勢だ。

 

           

(写真はすべてインターネット上からお借りしました)

 

 最初に買ったバイクがヤマハのボルトで、以来ステップの位置や姿勢が体に浸み込み、その感覚でVストロームに乗っていたので違和感だらけになったのだ、と思う。

 

 -----購入後のある日、信号待ちの時にタンクに股を押し付けるように一番前に座ると腰の位置が安定し背筋がシャンとした。視線も高くなり、停車するとき足付きも前よりよくなった。それまでボルトに乗っていた癖でシートの後方に座っていたのだ、と気が付いた。

「なーんだ、Vストロームはここに座るといいのか」

目からウロコが落ちた瞬間で、それ以来運転しやすいバイクになった。----若い時からいろいろバイク遍歴を重ねていればこのバイクにはこの座り方、このバイクはこの姿勢でと経験がものをいうが、私のように62歳になって初めバイクの免許を取った遅咲きライダーは経験も経歴も浅く、オートバイの違いに気付くのに時間がかかるのだ。

 

-----よくレビューで

「Vストロームは運転しやすい」

「疲れにくいバイク」

という評判を聞くが、これは一口で言うと背筋を伸ばした運転姿勢の賜物だ。姿勢がいいともたれかかる部分がなくなり腕や腰に疲れが来ないのだ。-----以前乗っていたボルトはハンドル径が太く、クラッチレバーもかなり重く、半日走ると左手、腕から首筋にかけて疲労が蓄積した。

「オートバイってこんなに疲れる乗り物なのか」

と感じさせるバイクだった。四国お遍路をバイクで2週間走った時には後半に腱鞘炎になりかけていた。しかしVストロームに乗ると腕も腰も以前と比べ驚くほどに疲労が軽減している。姿勢の違いは疲労の違いとなってあらわれるのだ。

 

〇 ヤマハボルトでは4回立ちゴケを経験しているがVストロームになってから一度も倒してない。-----250Kgのボルトと189KgのVストローム、61Kgの差は踏ん張りでも違いが出る。61Kgといえば大人一人分の体重だ。-----立ちゴケに備えエンジンガードを装着したがこの調子だと無駄になりそうな予感がする。いや、無駄になったほうがいいのだが。  

 

〇 ほかに1年前の試乗の時に詳しく触れなかった点に燃費がある。 

燃費はこれまで何度か給油の都度計ってみたがリッター30Kmは走っている計算になる。高速はまだ走っていないが、高速ならもう少し伸びるかもしれない。タンクの容量も17リッターなので計算上500Kmは走行が可能で長距離ツーリングには頼もしい相棒である。

 

 〇 Vストロームの欠点らしい欠点は、敢えて言うとスタート時の加速の弱さ、一気の伸びに欠けるところだと思う。

 個人的に、スピード狂ではないのでその点はあまり気にならない。一般道で70~80Kmのスピードを出せればオートバイとして合格点だと思っている。スピード志向のライダーかどうかによって評価は大きく分かれるところだ。

 

〇 Vストロームは時速80km以上の加速感がじれったくなる。エンジンも絞り出すような呻りになる。

 これはVストロームが低速中速重視に作られているので宿命だろうと思っている。ギヤが6速迄あるが7速目が欲しいと感じたものだ。しかしその反面、山道でかなり粘りのあるエンジンでこれまで購入して以来一度もエンストしていないのはその粘りに助けられている部分が大きい。クラッチのつなぎ方がうまくなったと思うくらいだ。

 

〇 車格というか、大きさの面でVストロームは250cc排気量クラスでは図体が大きいバイクで時々「このオートバイ何ccです?」と聞かれ、250ccと答えると大概の人が「へぇ、250の割に大きいね」

と驚きの表情を浮かべる。

 250ccながら横風に強いのはこの重さと大きさが関係している。小さかったら橋の上で横風に煽られるのは目に見えているし大きさは積載量にも関係してくる。ガタイが大きければ荷物もそれなりに背負うことができる。

 

 1年間乗って感じることは、最初短所だと思っていたことが長所に見えてきたことだ。スタートの加速の鈍さという最初に感じた短所は、今では粘り強さという長所に置き換わっている。

 シート位置も、Vストロームの本来の位置に座ると疲労の少ない運転しやすいバイクに変わった。足つきもシート位置を変えるとそれほど気にならなくなった。第一印象の短所は長所になりつつある。つまり、一言で言えば人は順応し慣れるのだ。

     

             

 

 -----バイクに関係ない個人的な話だが、今年3月に私は70歳の誕生日を迎え、ふと考えるに平均的な日本人男性の健康寿命が75歳前後として (73歳が日本人男性の平均的健康寿命らしい) 好き勝手に動きまわることができるのはあと数年と考えている。

 そのうちに序章として老いが、間奏曲として病が続き、やがてクライマックスのフィナーレとなる。 

 残り健康寿命はあと5年 !! と考えて生きていこう。バイクに乗っていられるのもそれ迄、そう思って生きている。

 皆さんも事故の無いよう気を付けてください。