最近、来年4月から施行される同一労働同一賃金への対応は、臨時社員(契約社員)やパート社員だけでなく、派遣社員も影響を受けます。

派遣社員の場合は、派遣会社の選択により、派遣先の待遇と、派遣元の待遇のどちらかの待遇をベースに、派遣先又は派遣元の社員が支給されている内容に応じて、均衡・均等させる必要があります。

 

大半の派遣会社は、派遣元の社員との待遇を選択してくるので、派遣元の社員と、派遣社員の待遇差を比べる形になります。

そこで難しいのは、多くの会社(派遣会社も含む)では、社員はいわゆる年功序列型の長期雇用を前提とした職能給的な働き方を導入している会社が多いのに対し、基本的に派遣社員はパート社員のように職務給的な働き方を求められているということです。

 

しかも、派遣社員は短期的なスポットとしての働き方を求められています。(その根拠に派遣社員は、派遣先で少なくとも同じ職務(人事・経理など)を、3年を超えて派遣社員として働くことはできません。)

 

ご参考までに、職務的というのは、ジョブ型、職能的というのは、メンバーシップ型を言います。

簡単にいうと、仕事があってそこに人を当てているのをジョブ型、人に仕事を当てているのをメンバーシップ型といいます。

 

職務給的な働き方のイメージとしては、ある業務があって、その業務を行うことに〇円という単価が決まっているイメージです。

職能給的な働き方のイメージとしては、人の能力に〇円という価値がついていて、その人を動かして様々な仕事をさせるイメージです。

 

話を戻すと、派遣社員が職務給的な働き方を求められているということは、能力をいくら増やしても評価されない(時給が上がらない)ということになります。

例えば、派遣社員の業務が、英語を使う業務だった場合、ドイツ語をしゃべられるようになっても、時給が上がらないということになります。

逆に、簡単な英語しかしゃべられなかったのを、ビジネス英語までしゃべられることによって、さらに難易度の高い仕事をする場合は時給が上がることになります。

一方、職能的な働き方の場合は、ドイツ語もしゃべられると昇給することになります。

 

今度、派遣元が、自社の社員と同様に、定期昇給のようなイメージで、派遣社員にも評価を行うことになるそうです。

そのために、評価の参考にするために、派遣先にも派遣社員の評価を聞くそうです。

その結果、派遣先・派遣元の評価が上がると、派遣社員の時給が上がり、派遣元は、本人(派遣社員)に昇給した時給を支払う代わりに、派遣先にも昇給分を請求すると聞きました。

 

ただ、よくよく考えると変な話です。

派遣先の評価ってどんなものでしょうか。

あくまでも、派遣社員は職務的な働きを、派遣先を求めているので、仕事を成果を上げている場合でないと時給を上げられません。

 

一方で、派遣元では、派遣社員には、職能的な評価をしないといけないという矛盾が生じている気がします。

 

そもそも、職務的な制度と職能的な制度を、同一労働同一賃金として、均衡・均等させることに無理がある気がしてならない気がします。

見た目が一緒にみえても、乗っているレールが違うために無理があるわけで、レールを、柔軟に切り替える制度を作るように仕向ける方がよっぽど合理的な気がします。

 

考えのもとになった本を以下紹介します。