松本英語と私 16  英和は捨てろ!事件 | 石渡誠 Language Teaching for a Better World

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Language Teaching Revolutions Inc.
FORWARD代表 石渡誠

30年前に私が始めて「英語で考える」学習法に遭遇した
頃の思い出を綴っています。今回は授業開始早々に
あった1シーンを再現したいと思います。
こちらをクリックするとここまでの話が順番につながります。
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「はい。辞書を机の上に出して!」

斉藤先生の独自のユーモアと話のテンポにつれられて
皆にこやかな雰囲気で、鞄や机の中から辞書を取出した。

私はというと、辞書を持っていなかった。
家にはあったが、そんな重いものを学校に持っていく
習慣はなかった。(勿論のことですが、当時電子辞書など
世の中にはありませんでした)

ふーん。さすがにみんな真面目だな。
やはり、学校には辞書を持ってくるものなんだ。

などと、一番後ろの席に座っていた私は、
皆が辞書を机の上に置くのを感心して見ていた。

斉藤先生は、ニコニコしながら教室を一周。
辞書を集めて教卓の上に積んでいった。

何をしているのだろうと思っていると、
おもむろに教室の窓をあけた。

そして、今となっては信じられないことをされた。

いわく、
「ここに集めたのは、英和辞典です。これからの、
みんなの英語学習には必要ないので、
英和辞典は捨てましょう。そして、これからは、
英々辞典を使うことを決心してください。よって、
捨ててあげしょう。」

そんなことを言った後、本当に集めた英和辞典を
窓から投げ捨てたのだった。

いや、本当に。

時々このことを私の「英語マスターセミナー」でも
話ているので、何度か話している内に、自分でも
本当にあった話なのか信じられなくなる時がある?
のだが、本当の話なのだ。

忘れもしない202号室。
すなわち2階の教室でだった。
当時2階には201号と202号の2教室があり、
201号の窓側にはマヨネーズのキューピー社が、
202号の窓側には空き地があった。

すなわち、上から空き地に生徒の英和辞典を落として
捨てたのだった。バラバラバラと、音をたてて落ちて
いく辞書。エー!と生徒の叫び声と混ざりあって
結構面白いシーンだな。と、一番後ろに辞書も
持たずにいた私は、この光景をちょっと客観的に
見ていた。

斉藤先生独自のエンターテインメント性で、
笑いが耐えないような授業だったから、
問題にならなかったのだろう。

ちなみに、授業後には皆、隣の空き地に入って
捨てられた辞書を拾いに行っていた。

実はこの4年後くらいに私も斉藤先生の真似を
ちょっとしてみた。受験講習に来ていた生徒の
辞書を没収して、まずは外に投げる振りをした。
(その時には隣が駐車場になっていたので、
捨てることは実質的にも出来なかった)。

投げはしなかったが、本当に没収して生徒には
返さなかった。講習が終わったら返してあげる
つもりでいたが、一人だけ本当に私に泣きついて
きた子がいた。

「あれは僕の辞書だから、返して欲しい」

彼の辞書は英英和辞典だった。最近は見かけないが、
わざわざ英語の定義のあとに和訳が載っている
もので、これも結局、英和辞典と同じ弊害があると
当時説明していた。

「英々辞書を早く買いなさい」と私。
「いやあれは英々です。買うお金もありません。
そんなの先生、ひどいじゃありませんか」と
訴えられた私は、「じゃーこれを使いなさい」と、
スペアに持っていた私の英々を彼にあげた。
断固として、私も彼の辞書は返さなかった。

納得いかなかったのだろう。
彼は次の日から来なくなった。
いつか戻ってきたら返してあげようと、しばらく
私の机の上には彼の英英和辞典を置いていたが。

今思えば、本当に熱すぎるくらい熱かった。

そんなことが許されたのは、斉藤先生の場合は
ユーモアと人間的なあったかみがあったから。
そして私はただ若い勢いがあったからだった。

さて話を戻すと、春期講習開始早々、こんなクラスでの
刺激的なデモンストレーションも受けながら、
少しづつ自分なりに英々辞典の必要性と効果について
理解をしていった。

しかし、自分自身で英々辞典の素晴らしさを
実感するのは、まだまだ後のことだった。

春期講習終了直前まで、私は英々辞典を買わず、
英和辞典も捨てられては困る(笑)と辞書は何も
持参せずにいたからだった。

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春期講習での思い出話はまだまだ続きます(笑)。

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