楊令伝 10 坡陀の章 (集英社文庫)/北方 謙三
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地悪の光
地勇の光
地鎮の光
天慧の夢
地囚の光

の5節構成。それぞれが5~6項で構成される。梁山泊、金、青蓮寺、岳飛、張俊とがめまぐるしく場面が変わる上、梁山泊はさらに細かく分かれるので話を追うのに苦労するかもしれない。

開封府陥落による華北失陥、宗皇帝の北への連行と南宋の樹立という流れは史実どおり。その中で、軍閥化した張俊と岳飛、南宋樹立の裏で暗躍する李富と李師師の青蓮寺、日本から西域までの交易路を構築しようとする梁山泊が動いていく。

秦容と郤妁(ゲキシャク)、岳飛と崔如という、今後の展開が気になる関係が登場した。本作では悲しい結末となる男女が目に付くので、どうなることか。侯真と徐絢はその悲しい結末になってしまったがゆえに。

作中では若い登場人物が新たに加わる一方で、老いに触れる場面も出てきた。酒に酔い、若い秦容に絡んだ挙句、公孫勝に当ておとされた戴宗が哀愁を誘う。

童貫戦までは戦につぐ戦だったため、ややもすると停滞気味に感じる展開だが、時間は確実に流れ、それぞれが目指す所へ向けて確実に動いている。