知的財産管理技能検定1級(特許専門業務)に合格し、一級知的財産管理技能士になりました。 | MBAによるキャリアチェンジへの挑戦

知的財産管理技能検定1級(特許専門業務)に合格し、一級知的財産管理技能士になりました。

 国家試験「知的財産管理技能検定 1級(特許専門業務)」に合格し、「一級知的財産管理技能士(特許専門業務)」になりました。

 

 知的財産管理技能検定1級(特許専門業務)は、日本企業における特許実務の管理(マネジメント)能力を測る試験です。学科試験と実技試験に分かれており、年に1回しか学科・実技試験が行われていません。学科試験は2017年以降、試験問題が難化して難易度が高くなり、私が合格した2020年11月の第37回の学科試験の合格率は5%でした。1級の試験の対策本や対策講座は存在しないのに等しく、法律(主に特許法、民法、民訴法)および日々のメーカーでの特許実務に関する問題が問われます。

 

 本試験を受験しようとしたきっかけは、2017年に日本に帰国後、日本のグローバルメーカーにて知的財産業務を管理職として行っているが、①知的財産法や民法などの法律知識を習得したいこと、②本試験は外国特許出願実務など自分の強みの分野が出題されること、③MBAホルダーとして、経営管理に追加して知的財産(特許)のマネジメントの資格を保有することが魅力的に思えたから、などです。

 

 2018年に試験勉強をし、1回目と2回目はわずか1-2問足りないボーダーで落ち、3回目の挑戦で学科に無事、学科に合格をしました(3回目は合格基準の80%に自己採点では1問足りておりませんでしたが、2問底上げされて、82%で合格。)。実技試験は20分で15問を解かなければならないという時間的制約以外は、特に大きな問題はありませんでした。

 

 1級学科試験については、過去問を完全に潰したとしても、未知の実務問題が出てくるため、法律の基礎知識を身につけておき、法律問題で点数を落とさないことが合格にとても大事だと思います。

 

 以下では、最難関である学科試験に対して、法律知識がほとんどない状況からどのように勉強をして合格をしたのかを、記録に残しておきたいと思います。

 

①    特許法・条約(パリ条約、PCT)

 1年目は、LECの宮口聡講師の弁理士試験の「入門講座」と「短答基礎力完成講座」の特許・条約のパートをDVD受講し、特許法と条約の基礎知識を習得しました。また、宮口聡講師の「最判道場2018」をライブ受講し、判例についての知識も習得しました。

 2年目は、高林龍先生の「標準 特許法」を精読しました。同書は、司法試験で知的財産法を選択科目とする受験生の特許法の必読の基本書です。

 

 

 3年目の学科試験の直前の際には、過去問はやり尽くした感があり、他の教材に手を出したいと思い、LECの「ゴールドweb 宮口聡の司法試験知財過去問解説講座」を受講するとともに、法学セミナーの「司法試験の問題と解説」の新司法試験の特許の全部の過去問題とその解説を国会図書館でコピーをして、解いてみることにしました。また、司法試験向けの演習本である「知的財産法 演習ノート」の特許の問題を解いてみました。伊藤塾の司法試験講座の民法の論文マスターの受講後であったので、ある程度、司法試験での民事系の論文問題で問われていることが分かるようになっていたので、これらの司法試験の過去問や演習は面白かったし、司法試験の特許の問題で問われている論点は深いと思いました。なお、弁理士試験の講師である宮口先生の解説を聞きながら、司法試験で問われている論文の書き方(法的三段論法を徹底する)と、弁理士試験の講師が教えている論文の書き方は全く異なることに気づきました。また、特許の「判例百選」にて、1級に出題されたことがある判例について、読んでみることにしました。

 

 

 

 

②    民法、民事訴訟法

 1年目は、伊藤塾の「伊藤真の民法入門」と「伊藤真の民事訴訟法入門」を読み、その後、伊藤塾の「ファーストトラック 民法」と「ファーストトラック 民事訴訟法」を教科書とした山本有司講師と横山えみこ講師のオンライン講座をそれぞれ1万円以下の費用にて受講しました(今は、そのコストパフォーマンスが良い伊藤塾の講座がなくなりました)。

 

 

 

 

 

 2年目は、伊藤塾の「司法試験 入門講座」のライブクラスにて、伊藤真先生から150時間くらいに及ぶ「民法」と本田真吾先生から「民事訴訟法」(50時間以上)を学びました。

 

 3年目は、1級知的財産管理技能検定1級の過去問で問われた民法の試験範囲(民法総則、共有、債務不履行による損害賠償、契約総論、委任、請負)につき、伊藤塾の呉明植先生の基礎本を利用した「民法 基礎マスター」の講座をWeb視聴しました。また、該当箇所の司法試験の民法の短答の問題を解きました。呉先生の民法のクラスは、民法の改正法に完全対応しており、2年目に伊藤先生のクラスで民法の基本的な考え方がある程度習得できていたこともあり、とても勉強になりました。

 

 

 

 

 

 

 

③    契約実務・独占禁止法

 「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」につき、過去問を解きながら、試験に問われている該当箇所を理解するように努めました。

 

④    米国特許法

 米国特許法については実務経験が深いため、特に本試験のために、書籍を購入して読むということはしませんでした。

 

⑤    関税法・弁理士法

 関税法は、過去問の問題を解きながら、出題された条文をPATECHの「知的財産権法文集」にマーキングしていきました。弁理士法は気になったところがあれば、Web上で条文をチェックしました。

 

 

 

⑥    過去問

 アップロード社が出している2012年~2019年までの「1級【特許専門業務】 過去問と問題解説」を解きました。アップロード社の過去問は、解説がしっかりしています。

 間違えた全ての問題の解説をノートに書き込み、試験直前にそのノートを読み込めば、過去問で理解が不十分だった知識を総復習できるようにしました。1年目に作成したそのノートを、2年目と3年目の受験においても、試験直前に読み返すことで1年目に学習した内容を短時間で思い出すことができるになったので、とても良かったです。

 過去問を解きながら、2017年以降、学科試験の問題が難化していることが良く分かりました。

 

 

<合格後の感想>

 1級の過去問を解きながら、企業にて知的財産の実務をする上での新たな気付きや学びがたくさんありました。また、本試験勉強を通じて、企業の知財業務をする上で、特許法だけではなく、民法や民事訴訟法の基礎知識が必要だと痛感し、伊藤塾で法律をゼロから学びたいと思い、伊藤塾の司法試験コースの本科生として「法律」を学ぶことにつながったのは、とても良かったです。おかげで、伊藤真先生の熱い憲法の講義を受講したりして人生や社会観が大きく変わるとともに、法的思考力を高めることができ、知財実務をする上でも大いに役立っています。

 1級の学科試験は、過去問を潰したからといって必ず合格できる試験ではないが、試験勉強を通じて、特許実務において新たな気付きや学び、民法や民訴法の重要性が分かる試験だと思いますので、特許実務従事者にとっては、挑戦する価値のある試験だと思います。