貧困層ビジネスとC.K.プラハラード
日曜日は、バージニア大学のU-Hallで開催されたノーベル平和賞受賞者のグラミン銀行総裁のムハマド・ユヌス氏の講演を聞きにいきました。マイクロファイナンスを初めた社会起業家です。講演を聞いて知ったのですが、彼は元々経済学者でアメリカでも教えていたとのこと。ノーベル平和賞受賞者の話を聞くせっかくの機会であったので、良かったです。
マイクロファイナンスについては、インドのICICI銀行の事例をミシガン大学ビジネススクールのC.K.プラハラード教授の「The Fortune at The Bottom of the Pyramid」(日本語訳のタイトルは「ネクスト・マーケット」)で読んで知っていたので、興味はありました。なお、この本は、貧困層が市場のターゲットにならないという従来の発想を根本的に覆した画期的な本です。また、個人的には、企業が貧困層ビジネスをすることにより、貧困層を救い出すことができることを知り、大きな衝撃を受けました。
ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略 (ウォートン経営戦略シリーズ)/C.K.プラハラード
¥2,940
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Amazonの書評では次の通りに書かれています。
世界には、1日2ドル未満で生活する貧困層が40億人いる。本書は、経済ピラミッドの底辺に位置するこの貧困層(Bottom of the Pyramid=BOP)こそ、今後急速に成長する魅力的な市場だと指摘。企業は彼らを、慈善や援助の相手としてはなく、ビジネスの対象として重視すべきと主張する。
貧困層を「顧客」や「消費者」に変えるには、先進国向けの製品・サービスに少し手を加えるといった対応では不十分。技術、製品・サービス、ビジネスモデルそのもののイノベーションが欠かせない。
BOP市場の基本となるのは、「パッケージ単位が小さく、1単位当たりの利潤も低い。市場規模は大きいが、少ない運転資本でも利益を出せる」ビジネス。例えば、米P&Gは低収入で現金不足のBOPに消費力を作り出すため、「使い切りパック」のシャンプーを販売した。ブラジルの家電チェーンは無理のない利子とカウンセリングで、BOPにも高品質な家電が買えるようにした。その他、医療、金融サービス、農業関連ビジネスなど様々な分野の成功事例も詳しく解説する。
BOP市場に参入することで得たノウハウ、実現したイノベーションは、先進国市場でも活用でき、企業の成長、発展に大いにつながると説いている。
大前さんは、C.K.プラハラードのこの本を大絶賛し、ムハマド・ユヌス氏とともにC.K.プラハラードにノーベル平和賞ではなく、ノーベル経済学賞を与えるべきであったと主張したほどです。かなりオススメです。
今、C.K.プラハラードはこの本を出したことの影響もあると思いますが、マイケル・ポーターなどを抜いて、2007年にNo.1のBusiness Thinkerに選ばれています(その記事はこちら )。日本では、ポーターに比べてC.K.プラハラードの名前は知られていませんが、経営戦略論の超重鎮です。「コア・コンピタンス」という用語を世界的に広めたのは、彼がLBSのゲーリー・ハメルと一緒に書いた「Competing for the future」(日本語版は「コア・コンピタンス経営」(一條和生訳))という戦略論の本がきっかけです。なお、クラスの課題で、今月のHarvard Business ReviewのC.K.プラハラードのSustainabilityに関する論文を読みましたが、かなり素晴らしい内容です。戦略論はポーターと頭から思い込んでいる人には、是非、C.K.プラハラードの本を読んで欲しいと思います。
C.K.プラハラードが描いた貧困層(BOP=Bottom of the Pyramid)向けのビジネスの模様は、NHKスペシャルの「インドの衝撃 第1回 “貧困層”を狙え」 という番組で映像化されています。以下のリンクから見ることができます。ご関心のある方は、是非、見て下さい。BOPを知らずして、インドビジネスはもう語れません。
NHKスペシャルの「インドの衝撃 第1回 “貧困層”を狙え」の無料映像:
コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)/ゲイリー ハメル
¥840
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