○○高校での思い出

担任は平成16年4月にここへ赴任(ふにん)してきた。ガヤガヤと騒がしい全校集会の中で紹介され、簡単に自己紹介をしたが騒がしい状態は変わらなかった。そんな時は長々としゃべっても意味がないので簡潔(かんけつ)話を終えた。前任校もやんちゃな学校だったとは言え、ここも一筋(ひとすじ)(なわ)では行かないだろうと覚悟を決めた瞬間でもあった。すぐに担任を持つことになったが何と言っても一番の印象は教室が汚かったということだ。これはとても失礼なことだと感じた。

新しい生徒を迎えようという気持ちが感じられない。新しく赴任してきた人に対する配慮(はいりょ)が感じられない。こんな状況だった。だんだんとなぜそうなってしまうのかは、日がたつにつれてわかってきた。つまり、そんな事をしている余裕がない事が最大の理由だった。入学早々大きな事件を起こし、学校を()めてしまった生徒がいた。その中の1人はHR議長に立候補してくれた生徒だった。その後も毎日のように様々な問題が起こり、まるで戦場にいるかのような錯覚(さっかく)にとらわれたのだ。

そんなヤンチャな生徒たちも2年、3年となるにつれて落ち着いていった。大人になって行った。特に進路を真剣に決めていく中で明らかに何かが変わって行った。担任の言うことには素直に従うかわいい生徒たちばかりになった。もちろん狂犬のようだった生徒もいた。その子も自分の思い通りの進路を勝ちとった。そして、卒業式ではその生徒がネクタイピンをプレゼントしてくれたのだ。担任の宝物だ。

 

若いうちの苦労は成功のもとだ

長く(きび)しい冬が到来した。日に日に朝の寒さが厳しさを増している。北海道の冬は朝が勝負となる。目が()めても寒くて布団(ふとん)から出たくない。通勤(登校)の際も道路が(すべ)って車ものろのろ運転だ。日によっては夏場の倍の時間がかかってしまう。こんな寒い時期に、植物は次の春に向けての準備がはじまっている。日本を代表する桜の花も休眠期(きゅうみんき)と言われている冬に栄養をいっぱい補給(ほきゅう)して、春の開花の時期に備えているのである。冬の寒さがないときれいな花を咲かせられないのだ。

担任の亡き父に「若いうちは買ってでも苦労をしろ」とよく言われたものだ。若いうちは自分から進んで苦労をするべきなのだ。その苦労の深さがその後の人生を決定づける。今になって確かにその通りだと実感できる。若き日の苦労が今の土台となっている事は間違いない。もちろん今も苦労がなくなった訳ではないが、若い頃のような無茶(むちゃ)がきかなくなっているので、若い時に経験したような激しい苦労は絶えられないかもしれない。そういう意味でも、今、思いっきり苦労してほしい。

さて、高校の卒業が日に日に近づいている。みんなにとって高校を卒業することは大きな出来事だと思うが、きっと、その後の人生の方がもっと大きな変化の連続だと思う。進んで苦労をしてほしい。それがみんなにとって成長の()やしとなるからだ。可愛(かわい)い子には旅をさせよというのも同様の言葉だと思う。思いっきり苦労をしてくれ。そして立派な人間に成長してほしい。それが担任の願いである。