目を通してくださった読者のあなたに心から感謝します。あなたの前途に幸あれと祈ります。大切なことは「思い描くこと」そこから全てがはじまると思います。

 

この野球部はかつて甲子園に出場したことのあるものの数年来地区予選で敗退という低迷を続けていたようです。確かにその通りで市内のR高校と練習試合に行っても大差で敗退しました。それも完封負けです。やる前から選手たちは怖気づいていて負けることがわかってしまうような有り様でした。そんな状態の中、いよいよ夏の大会の数週間前に野球部の中心選手が喫煙でつかまり停学指導になってしまいました。最後の大会を直前にひかえた大切な時にがっかりさせられました。それだけでなく、そんな事故が起こっているにもかかわらず、他の選手たちは何もなかったようにグランドへきて練習を始めようとしているではありませんか!この時低迷し続ける野球部の原因の一端を見た思いがしました。それはチームとしてのつながりが薄く、薄情者が多い事です。

私は考え抜いた結果、チーム全員に連帯停学を命じました。さすがにその指導には彼らもショックだったようで、暗い顔をして沈み切った表情で帰って行きました。私はあらためてこの停学を通じてチームが1つになるように心から願いました。私は停学期間、この悔しさをバネにして最後はみんなの心が1つになるように、また飛躍的に技術が向上するように願い、誰もいないグランドをただひたすら走り続けました。誰がどう評価しようとも子供たちの心は純粋です。少しずつですが、こちらの思惑通りに選手たちの心が1つになって行ったと思います。

いよいよ停学があけて戻ってきた張本人は、涙ながらに深々と他の選手たちに謝罪しました。他の選手たちも一緒に停学を乗り切った一風変わった連帯感が生まれ、チームは見事に1つにまとまったのです。「災いを転じて幸となす」とはこの事でしょうか。いよいよ最後の1週間前の練習にいつになく気合の入った練習で試合に突入して行きました。折しも私は教員採用試験直前で、夜遅くまで練習をし、帰ってきてからは深夜まで必死に勉強を繰り返し、知力・体力の限りを尽くしての戦いの真っ最中でした。

夏の甲子園をかけた最後の大会がはじまりました。何と1回戦はコールド勝ちで突破。2回戦は自分の教員採用試験と重なり、はらはらと試合経過を注視していると何と見事にコールドゲームで突破し、何年ぶりかの地区大会の決勝に駒を進めたのです。高校のはからいで急きょ全校応援です。野球部の決勝進出もさることながら授業カットになることで全校生徒の喜びは最高潮に達していました。選手たちの意気も最高潮の盛り上がりを見せての決勝戦となりました。そして、その相手も練習試合で完封大敗を喫した市内の強豪R高校です。