ムハマド・ユヌス氏に学ぶ 2
誰にでも、人生を大きく変える出来事に出会うことがある。彼にとって大きなきっかけとなったこと。ソフィアさんという女性との出会いだった。彼女は、雨漏りのする葺き屋根の朽ちかけた泥の小屋に住んでいた。夫は日雇い労働として働き、一日数セントのお金を稼いでいた。夫の稼ぎだけではやっていけない彼女は、一日中、家の土間で竹の椅子を編んでいた。素晴らしい技術力だったそうだ。美しくて使いやすい工芸品だった。しかし、彼女がどんなに一生懸命に働いても、家族を貧困のそこから引き上げることはできなかった。それには理由があった。
椅子を作るためには現金が必要で、それを地元の金貸しに頼っていたのだった。しかしその金貸しは彼女の作る製品の価格を決め、その価格で売ることを同意したときだけ金を貸してくれた。この不公平な取り決めと高い利息のために、彼女には1日わずか2セント(3円程度)の儲けしか残らなかった。このように、バングラディッシュの多くの女性たちが、貧困から抜け出すことができないでいたのだ!これは奴隷と同じではないかと怒りに満ちた。
彼女が住んでいたジョブラ村に住む女性たちでこの金貸しによる犠牲者を調べてみると、42世帯の人々が、合計で856タカ(バングラディッシュの貨幣)借りていることがわかった。これはアメリカドルに換算すると27ドルにも満たない。日本円にしてみれば、約3,000円。まず、彼は彼女たちを救うために自分のポケットマネーで27ドルを差し出した。この小さな行為によって彼女たちは救われた。
ムハマド・ユヌス氏に学ぶ 3
たったの27ドルで、42世帯に住む人々が救われたという事実。日本円にしてたったの3,000円で42世帯に住む人々を幸福にできるのだとしたら、もっと、やらないわけにはいかないと思うのも当然ではないか!ずるい奴ら(金貸し)によって、けなげな貧しい女性が犠牲になっていることを目の当たりにして、それをわずかなお金で解決できる現実を知れば、彼がそう思うのは当然だと思う。
まず最初に彼がやったことは、銀行に行って、貧しい人々に対してお金を貸すように説得することだった。しかし銀行は、貧しい人々は信用に値しない、と言った。貧しい人々には顧客としての信用履歴がなく、担保もない。しかも彼らには読み書きができないので、必要な文書に書き込むことすらできない、というのがその理由だった。それは簡単に言えば「お金をもっている」人々にしか銀行はお金を貸さないということを意味する。
次に彼がやったことは、貧しい人々に対するローンの保証人になることを申し出ること、つまり、彼が銀行からお金を借りて、彼が貧しい村人にお金を貸し与えることだった。その時、彼はその結果に驚いたそうだ。貧しい人々は毎回、きちんと決まった日時に彼らのローンを返済したのだ。この結果を見れば、銀行は考え方を変えて、貧しい人々にもお金を貸し出すだろうと思ったが、これっぽっちも変化を示さなかった。そこで彼はついに自分で銀行を作ることを決意した。貧しい人たちに少額のお金を貸すマイクロクレジット※「グラミン銀行」である。※村の銀行の意味