伊藤 祐靖さんの写真をシェアしました。
阿部 輝忠さんが伊藤 祐靖さんの写真をシェアしました。
いいお話、それも実話。後半は考えさせられました。
カリブの夢・・・2
「『トラトラトラ』だ」
それは、日本映画じゃなくてハリウッド映画だろと思ったが細かいことでおっさんの盛り上がりを邪魔しても悪いと思い黙っていた。
「何で世界最高の映画なんだ??」
「世界最高なんだよ。アメリカ海軍の軍艦が全部沈められるんだぞ。アメリカ軍がやられっぱなしの映画見たことあるか?? 無いんだよ、そんな映画は、絶対にない。あれだけなんだよ。トラトラトラや~」
「何だよ。トラトラトラや~、や~って何だ。それ日本語だぞ」
「俺は、日本語のせりふだって覚えてる。あんた知らないのか、髭をはやした隊長が飛行機の中で言うんだよ、そういうシーンがあるだろ「トラトラトラや~」どんな意味なんだ「や~」って??
「や~の意味か?? ん~、方言かな、意味なんかないね」
「俺は100回以上見てるんだ(さっきまで、週1回と言っていた)どんなシーンだって知ってるぞ。覚えてるんだ。爆弾を落とすシーン知ってるか「ヨーソロー、ヨーソロー、ドーン、やった~」ヨーソローってどんな意味だ。やった~って喜んでるんだろ?」
「ヨロシク、ソウラエを省略してんだ。まあ、ステディーオンだな」
「トラトラトラの意味も知ってるぞ、タイガータイガータイガーだろ」
「そうそう」
カウンターを叩いてモールス信号を教えた。“・・-・・” “・・・”
「これで“ト”“ラ”日本語のモールス信号だ。これを3回繰り返すとトラトラトラ、我奇襲に成功セリ。俺は新兵の時は、電信兵だからな、間違いない」
日本式モールスの“ト”と“ラ”を覚え終えたおっさんは、一気に攻めてきた。映画のシーンを全部話す勢いになり、私はそこに出てくる日本語の解説を延々とさせられるはめになった。だんだん面倒くさくなり、話題を変えるためにアメリカの悪口をふった。
「何でそんなにアメリカ海軍がやられるのが好きなんだ?? アメリカ嫌いか??」
「日本海軍は、アメリカ海軍をちゃんと攻撃したんだ。アメリカにあるアメリカの海軍基地に入っていってアメリカの軍艦を滅茶苦茶に沈めたんだ。ベトナムがアメリカまで攻めに行ったか?? アルカイダは、アメリカの民間機にコソコソ乗り込んだだけだ。アフガンだって、イラクだってアメリカをアメリカにまで攻めに行ってないだろ。でも、日本海軍だけは、日本からその旗をちゃんと揚げた大艦隊がハワイ沖まで攻めに行ったんだ。それで空母から飛び立った攻撃機がアメリカをアメリカの中で潰すんだ。凄いだろ。トラトラトラは、アメリカを攻めに行った、たった一つの実話なんだぞ、世界最高の映画なんだよ」映画というよりも、真珠湾攻撃そのものをこのおっさんは讃えていた。海外で海外の人から日本の自慢話をされたことが前にもあったような気がする。それも一回じゃない。今回もキューバのハバナ、波止場近くのバー、そういう意味不明な場所で、なんのゆかりもないおっさんから、直の先輩たる日本海軍の自慢話を聞いている。おっさんは、大声でカウンターを叩きながら延々と日本海軍の自慢話を続けた。そして、なぜおっさんの夢が日本艦隊がハバナ港に入港することなのかが徐々に判ってきた。「俺の国キューバがしてるのは、アメリカへのただの抵抗なんだよ。それだって凄いだろ。世界中がアメリカにヘラヘラしてるのに、はっきりアメリカに対して抵抗してる国は少ないぞ。でもな抵抗だけなんだよ。日本海軍は違うぞ攻撃した。ちゃんと正規の軍隊がアメリカ軍を攻めに行ったんだ。みんな、アメリカ人が嫌いだよ、友好国のふりして嫌いなんだ。イギリス、フランス、スペイン、イタリア、カナダ、メキシコたくさんの観光客がここに来るけど何でここに来るか知ってるか?? アメリカ人がいないからだよ。ここは国交がないからアメリカ人は来ない。アメリカ人の居ないところに行きたいんだよ。それくらい嫌いなんだ。しかも、来る人はアメリカに抵抗してる俺たちを応援してるんだ。だから、お金をここで使うために来るんだよ」応援するために来ているという話は、かなり怪しい話だがアメリカ人がいないからキューバに来たというのは、キューバで会ったカナダ人もイギリス人もイタリアも言っていた。
「アメリカを攻撃した日本海軍の艦隊が来てくれたら最高の応援なんだよ。誰が応援に来るより、うれしいよ。日本海軍は来てくれないのか??」
「日本の艦隊がハバナに来るのは簡単さ。俺もパナマ運河を越えて、この辺りは何度かうろうろしたことがある。でもな、いろいろあるんだ・・・・・・」
「こんな小さい貧しいキューバが頑張って抵抗してるんだ、アメリカを攻撃した日本の艦隊が来てくれたら、みんな褒められてる気になるよ。キューバは、元気になるよ」
さっきまで、日本を褒めてくれて、日本海軍の大ファンのおっさんを知って私の気分は高揚していたが、言い方をちょっと間違えるとこのおっさんは、日本バッシングの最先鋒になってしまう気がしてきた。そして、言い方を間違えると言うより、現状をそのまま見てしまったら180度変わってしまうだろうと思えてきた。それは、誤解を与えたらではなくて、実態を知られたらということだ。とても、ハバナに来るのは簡単だけど、アメリカに気を遣ってて入港することは許されないんだろうなんて言えなかった。
キューバのハバナで日本海軍の大ファンのおっさんから日本の現実、私自身の現実を突きつけられた。今、日本が向かっているのは、そこに国として目指しているものがあるからではなく。そうせざるをえないからという気がして、引け目を感じた。国が向かっている方向に信念が感じられないから、日本の艦隊がハバナに入港できない理由を胸を張って言えなかった。ハバナのおっさんは、「俺の国は小さいし貧しいけど間違っていると思うアメリカに抵抗をしている」と言っていた。自分の国は、間違っていると思うことに「それは、間違っている」と言い、正しいと思うことを実行しているだろうか? 気を遣うのは大切なことだが、風見鶏、八方美人とは別だろう。戦うことは、望ましいことではないし最後の手段だが、戦わなければならない時だってあるだろう。正しいと思うことをどんなにリスクが大きくとも実行した象徴がトラトラトラだとすれば、今の日本にその姿勢は感じられない。
「戦うも亡国~最後の一兵まで戦い抜けば、我らの子孫はこの精神を受け継いで、必ずや再起する」
再起とは、経済的な話だけではないだろう。本当の再起を遂げなければ、子孫たる我々を信じて、正しいと思うことを実行した先輩に顔向けはできない。
(終わり)
http://stat.ameba.jp/user_images/20131127/23/makopy02012000/8e/36/j/t02200165_0800060012763274185.jpg
阿部 輝忠さんが伊藤 祐靖さんの写真をシェアしました。
いいお話、それも実話。後半は考えさせられました。
カリブの夢・・・2
「『トラトラトラ』だ」
それは、日本映画じゃなくてハリウッド映画だろと思ったが細かいことでおっさんの盛り上がりを邪魔しても悪いと思い黙っていた。
「何で世界最高の映画なんだ??」
「世界最高なんだよ。アメリカ海軍の軍艦が全部沈められるんだぞ。アメリカ軍がやられっぱなしの映画見たことあるか?? 無いんだよ、そんな映画は、絶対にない。あれだけなんだよ。トラトラトラや~」
「何だよ。トラトラトラや~、や~って何だ。それ日本語だぞ」
「俺は、日本語のせりふだって覚えてる。あんた知らないのか、髭をはやした隊長が飛行機の中で言うんだよ、そういうシーンがあるだろ「トラトラトラや~」どんな意味なんだ「や~」って??
「や~の意味か?? ん~、方言かな、意味なんかないね」
「俺は100回以上見てるんだ(さっきまで、週1回と言っていた)どんなシーンだって知ってるぞ。覚えてるんだ。爆弾を落とすシーン知ってるか「ヨーソロー、ヨーソロー、ドーン、やった~」ヨーソローってどんな意味だ。やった~って喜んでるんだろ?」
「ヨロシク、ソウラエを省略してんだ。まあ、ステディーオンだな」
「トラトラトラの意味も知ってるぞ、タイガータイガータイガーだろ」
「そうそう」
カウンターを叩いてモールス信号を教えた。“・・-・・” “・・・”
「これで“ト”“ラ”日本語のモールス信号だ。これを3回繰り返すとトラトラトラ、我奇襲に成功セリ。俺は新兵の時は、電信兵だからな、間違いない」
日本式モールスの“ト”と“ラ”を覚え終えたおっさんは、一気に攻めてきた。映画のシーンを全部話す勢いになり、私はそこに出てくる日本語の解説を延々とさせられるはめになった。だんだん面倒くさくなり、話題を変えるためにアメリカの悪口をふった。
「何でそんなにアメリカ海軍がやられるのが好きなんだ?? アメリカ嫌いか??」
「日本海軍は、アメリカ海軍をちゃんと攻撃したんだ。アメリカにあるアメリカの海軍基地に入っていってアメリカの軍艦を滅茶苦茶に沈めたんだ。ベトナムがアメリカまで攻めに行ったか?? アルカイダは、アメリカの民間機にコソコソ乗り込んだだけだ。アフガンだって、イラクだってアメリカをアメリカにまで攻めに行ってないだろ。でも、日本海軍だけは、日本からその旗をちゃんと揚げた大艦隊がハワイ沖まで攻めに行ったんだ。それで空母から飛び立った攻撃機がアメリカをアメリカの中で潰すんだ。凄いだろ。トラトラトラは、アメリカを攻めに行った、たった一つの実話なんだぞ、世界最高の映画なんだよ」映画というよりも、真珠湾攻撃そのものをこのおっさんは讃えていた。海外で海外の人から日本の自慢話をされたことが前にもあったような気がする。それも一回じゃない。今回もキューバのハバナ、波止場近くのバー、そういう意味不明な場所で、なんのゆかりもないおっさんから、直の先輩たる日本海軍の自慢話を聞いている。おっさんは、大声でカウンターを叩きながら延々と日本海軍の自慢話を続けた。そして、なぜおっさんの夢が日本艦隊がハバナ港に入港することなのかが徐々に判ってきた。「俺の国キューバがしてるのは、アメリカへのただの抵抗なんだよ。それだって凄いだろ。世界中がアメリカにヘラヘラしてるのに、はっきりアメリカに対して抵抗してる国は少ないぞ。でもな抵抗だけなんだよ。日本海軍は違うぞ攻撃した。ちゃんと正規の軍隊がアメリカ軍を攻めに行ったんだ。みんな、アメリカ人が嫌いだよ、友好国のふりして嫌いなんだ。イギリス、フランス、スペイン、イタリア、カナダ、メキシコたくさんの観光客がここに来るけど何でここに来るか知ってるか?? アメリカ人がいないからだよ。ここは国交がないからアメリカ人は来ない。アメリカ人の居ないところに行きたいんだよ。それくらい嫌いなんだ。しかも、来る人はアメリカに抵抗してる俺たちを応援してるんだ。だから、お金をここで使うために来るんだよ」応援するために来ているという話は、かなり怪しい話だがアメリカ人がいないからキューバに来たというのは、キューバで会ったカナダ人もイギリス人もイタリアも言っていた。
「アメリカを攻撃した日本海軍の艦隊が来てくれたら最高の応援なんだよ。誰が応援に来るより、うれしいよ。日本海軍は来てくれないのか??」
「日本の艦隊がハバナに来るのは簡単さ。俺もパナマ運河を越えて、この辺りは何度かうろうろしたことがある。でもな、いろいろあるんだ・・・・・・」
「こんな小さい貧しいキューバが頑張って抵抗してるんだ、アメリカを攻撃した日本の艦隊が来てくれたら、みんな褒められてる気になるよ。キューバは、元気になるよ」
さっきまで、日本を褒めてくれて、日本海軍の大ファンのおっさんを知って私の気分は高揚していたが、言い方をちょっと間違えるとこのおっさんは、日本バッシングの最先鋒になってしまう気がしてきた。そして、言い方を間違えると言うより、現状をそのまま見てしまったら180度変わってしまうだろうと思えてきた。それは、誤解を与えたらではなくて、実態を知られたらということだ。とても、ハバナに来るのは簡単だけど、アメリカに気を遣ってて入港することは許されないんだろうなんて言えなかった。
キューバのハバナで日本海軍の大ファンのおっさんから日本の現実、私自身の現実を突きつけられた。今、日本が向かっているのは、そこに国として目指しているものがあるからではなく。そうせざるをえないからという気がして、引け目を感じた。国が向かっている方向に信念が感じられないから、日本の艦隊がハバナに入港できない理由を胸を張って言えなかった。ハバナのおっさんは、「俺の国は小さいし貧しいけど間違っていると思うアメリカに抵抗をしている」と言っていた。自分の国は、間違っていると思うことに「それは、間違っている」と言い、正しいと思うことを実行しているだろうか? 気を遣うのは大切なことだが、風見鶏、八方美人とは別だろう。戦うことは、望ましいことではないし最後の手段だが、戦わなければならない時だってあるだろう。正しいと思うことをどんなにリスクが大きくとも実行した象徴がトラトラトラだとすれば、今の日本にその姿勢は感じられない。
「戦うも亡国~最後の一兵まで戦い抜けば、我らの子孫はこの精神を受け継いで、必ずや再起する」
再起とは、経済的な話だけではないだろう。本当の再起を遂げなければ、子孫たる我々を信じて、正しいと思うことを実行した先輩に顔向けはできない。
(終わり)
http://stat.ameba.jp/user_images/20131127/23/makopy02012000/8e/36/j/t02200165_0800060012763274185.jpg