政府の規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)が6月5日にまとめる答申の原案が30日、明らかになった。一定の勤務地や職種で働く「限定正社員」に関する雇用ルールについて2013年度中に検討を開始し、14年度に結論を出すよう要請。労働者派遣制度に関し、業務により派遣期間が異なる現行の仕組みを抜本的に見直し、すべての業務で会社が3年を超えて派遣を受け入れることができないか、今秋から検討するよう求めた。
答申に盛り込むのは「健康・医療」「エネルギー・環境」「保育」「雇用」「創業等」に関する約130項目。全ての項目で見直し期限を設定し、関係省庁に対応を迫る。答申の内容は政府が6月14日に閣議決定する成長戦略に反映させる。
限定正社員に関する雇用ルールの検討は、非正規社員の正社員化を促すのが狙い。一方で、工場や店舗閉鎖などの際、限定正社員を通常の正社員より解雇しやすいことも明確にするよう求めた。正社員の限定正社員化が進むと、逆に雇用が不安定になる恐れもあり、規制改革会議は本人同意などの歯止め策も示している。
労働者派遣制度の現行ルールは、派遣労働者の受け入れ期間を最長3年に制限している。秘書や通訳など「専門26業務」は例外として期限がないが、昨年10月施行の改正労働者派遣法は付帯決議で「分かりやすい制度」への見直しを提起。答申案は専門26業務の区分を撤廃し、全ての職種で派遣期間を拡大するのが狙いだ。
このほか、化石燃料を使わない燃料電池自動車など次世代自動車の普及に向けては、関連する規制を15年までに「一挙に見直す」と明記した。燃料となる水素スタンドを市街地にも設置可能にすることや、水素貯蔵設備の部材をより広く認めることなどが対象だ。
◇規制改革会議答申案の主な項目
・医療機器の認証基準見直し=13年度検討・結論
・社会福祉法人の経営情報公開=14年度当初から実施
・次世代自動車に関する規制見直し=15年までに実施
・限定正社員の雇用ルール整備=14年度結論
・労働者派遣制度の見直し=13年度秋までに検討・結論
・先進自動車の公道走行試験手続き簡素化=13年度実施
【ことば】限定正社員
勤務地や仕事内容、労働時間が限定された形で働く正社員。スーパーなど流通業で導入され、店舗や地域を限定して働いている。これに対し、全国の店舗や支店への異動があるのが一般的な正社員。限定正社員は、企業が雇用しやすい半面、待遇が低く抑えられたり解雇も容易になったりする可能性も指摘されている。