■1位インテル、売上高最高/2位サムスン、大規模投資/3位東芝、工場新棟を建設

 供給過剰で価格下落を招く恐れもある中、世界の半導体トップメーカーが増産に走り出した。世界シェア3位の東芝が14日、四日市工場(三重県四日市市)の新棟建設に着手したほか、2位の韓国サムスン電子も半導体の設備投資や研究開発に今年1年間で11兆ウォン(約8千億円)を投じる。新興国を中心とする電子機器の販売拡大や先進国で好調なスマートフォン(多機能携帯電話)の売れ行きを背景に、拡大する需要を取り込む構えだ。

 ◆悪夢再現ない

 東芝は四日市工場の新棟で、携帯電話や携帯音楽プレーヤーなどの記憶装置に使われる「フラッシュメモリー」を生産する。来夏にも稼働を始め、平成23年度末の生産能力は21年度末比で3割程度高まる見通しだ。

 当初は昨春の着工を計画していたが、市況悪化を受けて延期。ところが昨年半ば前後から需給が逼迫(ひっぱく)状態となり、今年の正月や5月の大型連休中はフル稼働で対応に追われた。今後3年間で新棟建設を含めて4千億~5千億円を投じ、半導体全体の生産能力を拡充する。

 半導体市場は好況時には需要増で価格が上がり、各社が増産に乗り出すと供給過剰で市況が悪化する好不況を繰り返してきた。

 だが、ここ数年で相次いだメーカーの再編・淘汰(とうた)により、市場の寡占化が進行。フラッシュメモリーはサムスンと東芝の2強で世界シェアの計8割近くを占め、「暴落する状況にはない」(東芝)と悪夢の再現を否定する。新たな需要が半導体全体の活況をもたらしていることもあり、「大きな値崩れは考えにくい」(エルピーダメモリの坂本幸雄社長)という見方も強い。

 ◆急回復に沸く

 米国半導体工業会(SIA)によると、5月の世界半導体売上高は前年同月比48%増の246億5千万ドル(約2兆1600億円)となり、2カ月連続で単月の過去最高を更新。世界トップの米インテルが13日発表した4~6月期決算も売上高が前年同期比34%増で過去最高の107億6500万ドルとなるなど、平成20年秋の世界金融危機後に落ち込んだ需要の急回復に業界は沸いている。

 需要をリードするのは欧米などで好調なパソコンやスマートフォン。「中国をはじめとする新興国で需要が伸びている」(シャープの片山幹雄社長)という薄型テレビなど電子機器の存在も大きい。

 もっとも、米系調査会社アイサプライ・ジャパンの南川明副社長は「欧州で景気が後退して世界的に波及すれば、電子機器の買い控えにつながり、10月ごろに調整局面に入る可能性もある」と指摘する。

 東芝は四日市工場の新棟建設を計画の1期分にとどめており、「生産のスピードアップと設備投資は状況をみながら行う」(小林清志執行役上席常務)など、需給の変化に柔軟に対応する構えもみせている。