「苦労と不安に耳を傾けたい」と意気込む前原誠司国土交通相。「何を今さら」と反発する地元住民。23日に八ツ場(やんば)ダム予定地(群馬県長野原町)を視察した国交相を待っていたのは、住民らの強硬な反発だった。地元首長らとは会えたが、結局、住民の生の声は聞けずじまい。圧倒的支持を受けて発足した民主党政権だが、政権公約(マニフェスト)の現場では厳しい現実にさらされた。
◇
■「彼岸に不謹慎」
視察中の取材は一部を除いて、一切規制される異例の厳戒態勢の中で行われた今回の訪問。建設予定地や代替地視察は10分間程度、工事担当者の話を聞いただけだった。水没する川原湯温泉の訪問はせず、予定していた意見交換会も住民側から拒絶。戸別訪問など地元住民との接触は一切試みられなかった。
「10分の視察で半世紀以上の苦悩が分かるはずがない」。すでに水没予定地から代替地に転居した会社員の篠原健さん(33)は不満だ。
代替地には、完成を見届けずに亡くなった住民らの墓地もある。「彼岸に中止を言いにくるなんて不謹慎」と漏らす人もいた。
大型連休とあって川原湯温泉はかき入れ時。旅館「柏屋」の専務、豊田幹雄さん(43)は「話し合いに応じる余裕なんてない」。水没関係5地区連合対策委の篠原憲一事務局長は「下手したらまた10年かかる」とため息をついた。
前原国交相は現地での記者会見で「最後まで努力したが実現しなかった」とだけ説明。川原湯温泉など水没地区が視察予定地になかった点を聞かれると、「また来る」とだけ語った。
長年の反対運動の末に、公共の利益を説く国に応じる形で建設を認めた経緯があるだけに、住民らの思いは複雑だ。国交相を前にした地元首長との会合では、やりきれない思いが次々と言葉になった。
「関東の洪水対策や水瓶(みずがめ)策として苦渋の決断で受け入れたのに、無駄と言うのか」と、茂木伸一・東吾妻(あがつま)町長。
地元のダム推進団体の萩原昭朗会長は「2代、3代にわたり翻弄(ほんろう)され続けた思いを察してほしい。大臣と話がしたくないわけではない。心の叫びを聞いてもらいたいのだ」と訴えた。
■「耐えられない」
建設計画発表から57年。長い闘争の過程で、疲れ果てた住民は別の地域へバラバラと転居。代替地へ集団移転予定だった約340世帯も結局は約90世帯に。すでに地元は大きな犠牲を払っている。
建設中止が降ってわいたことで、住民同士が再び反目し合う事態も危惧(きぐ)される。この日も、建設反対派が国交相一行に賛同の意見書を渡す光景があった。
半世紀以上にわたるダム構想の推移を見続けてきた、温泉街で唯一の土産物屋、樋田ふさ子さん(80)は「大臣が来るなら再建の代替案を提示するべき。これ以上、問題が長期化するのはもう耐えられない」と、胸の内を言葉にした。
地方の声を大事にしないから、こうなるよね
。
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■「彼岸に不謹慎」
視察中の取材は一部を除いて、一切規制される異例の厳戒態勢の中で行われた今回の訪問。建設予定地や代替地視察は10分間程度、工事担当者の話を聞いただけだった。水没する川原湯温泉の訪問はせず、予定していた意見交換会も住民側から拒絶。戸別訪問など地元住民との接触は一切試みられなかった。
「10分の視察で半世紀以上の苦悩が分かるはずがない」。すでに水没予定地から代替地に転居した会社員の篠原健さん(33)は不満だ。
代替地には、完成を見届けずに亡くなった住民らの墓地もある。「彼岸に中止を言いにくるなんて不謹慎」と漏らす人もいた。
大型連休とあって川原湯温泉はかき入れ時。旅館「柏屋」の専務、豊田幹雄さん(43)は「話し合いに応じる余裕なんてない」。水没関係5地区連合対策委の篠原憲一事務局長は「下手したらまた10年かかる」とため息をついた。
前原国交相は現地での記者会見で「最後まで努力したが実現しなかった」とだけ説明。川原湯温泉など水没地区が視察予定地になかった点を聞かれると、「また来る」とだけ語った。
長年の反対運動の末に、公共の利益を説く国に応じる形で建設を認めた経緯があるだけに、住民らの思いは複雑だ。国交相を前にした地元首長との会合では、やりきれない思いが次々と言葉になった。
「関東の洪水対策や水瓶(みずがめ)策として苦渋の決断で受け入れたのに、無駄と言うのか」と、茂木伸一・東吾妻(あがつま)町長。
地元のダム推進団体の萩原昭朗会長は「2代、3代にわたり翻弄(ほんろう)され続けた思いを察してほしい。大臣と話がしたくないわけではない。心の叫びを聞いてもらいたいのだ」と訴えた。
■「耐えられない」
建設計画発表から57年。長い闘争の過程で、疲れ果てた住民は別の地域へバラバラと転居。代替地へ集団移転予定だった約340世帯も結局は約90世帯に。すでに地元は大きな犠牲を払っている。
建設中止が降ってわいたことで、住民同士が再び反目し合う事態も危惧(きぐ)される。この日も、建設反対派が国交相一行に賛同の意見書を渡す光景があった。
半世紀以上にわたるダム構想の推移を見続けてきた、温泉街で唯一の土産物屋、樋田ふさ子さん(80)は「大臣が来るなら再建の代替案を提示するべき。これ以上、問題が長期化するのはもう耐えられない」と、胸の内を言葉にした。
地方の声を大事にしないから、こうなるよね
