貞彦473話  『空をえらぶ』

 

 

1月。
ぷう助と完全な母子家庭で
迎えた初めての新年は、
去年となにも変わりなかった
けど気持ちだけは軽かった。

休み明け、パート先では
年末に大雪が降った影響で、
雪の重さから建物の一部が

破損して水漏れが起きたり、

オフィスの窓ガラスにひびが

入っていたりして忙しい

1週間をすごした後、
不動産へ賃貸物件を探しに
いった。

不動産で条件を伝えると
すぐに3ヶ所の物件を紹介
してもらい、そのうちの
2ヶ所はよく知っている
建物で、もう1ヶ所は
築年数も古くなくて、
間取りも広く6階で
風通し、日当たりも良い。

ただ、エレベーターが無い
という。

家賃が安い理由は6階まで
階段で行かなくては
いけないという事だったけど、
いまいち想像がつかなくて
案内してもらう事にした。

不動産から10分程度の
物件で、エレベーターが
ないという事の不便さを
考えてみる。

ぷう助は身軽だから、
6階までなんて余裕で
上り下りできる体力が
あるし、持病もなく毎日
元気に保育園へ通って
いることを思うと問題は
なさそう。

そうなると、私次第だった。
買い出しなどで重い荷物を
持って6階までいけるのか?
朝、1階まで降りてしまった
直後に忘れ物に気が付いたら
もう1度往復できるのか?
もし、ぷう助が病気をした
時にぷう助をかかえて1階
まで降りられるか?

思いつく限りのことを
頭にうかべ物件の前に

着いた時、階段で休憩を

しないで6階までいける

のかを試してみるため、

先に階段をのぼらせて

もらう。

普通にのぼっていると
2階まではなにも感じず、
4階までいったところで
はっきりと疲れを感じた。

そこからさらに6階へ
ついた時には、コートを

着ている身体が温まり

3分程度の運動をした

ような疲れになる。

でも、そこから室内へ
入ると角部屋で窓から

見る景色は空一色、キッチンや
トイレも全て新し物に
取り換えたばかりという
ことで、エレベーターが無い
以外はすごくいい物件。

逆にエレベーターがあったら、
家賃はもっと高くなり
私が住める所にはならない。

不動産には1日だけ考えさせて
欲しいと伝え、お返事を明日に
させてもらう。

だけど私は室内から窓を
見た時の空に惚れてしまい、
気持ちはほぼ決まっている。

ただ、恋は盲目という
言葉もあるから、一晩
頭を冷やし、ぷう助にも
階段でいいか聞いてからに
しようと思う。


そして翌日、エレベーターが
無いということよりも、窓から
見える空を選んだ。

 

 

 

 

☆この時の賃貸が、今まで住んできた

 賃貸の中で1番好きな物件でした。

 

☆まだスマホがなく携帯電話が

主流の時のお話です。

 

☆個人の特定につながらないよう

一部の表現をかえています。

 

☆メッセージをたくさんいただき

ありがとうございます。

お返事がとてもおそくなって

しまいすみません。

あたたかいお言葉に感謝で

いっぱいです。

本当にありがとうございます。

 

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【お気に入りの紹介です】

ブログでご紹介している

『ねこはるすばん』を描いている

町田尚子さんの絵本です。

 

ずっとネコヅメのよるをご紹介

したかったのですが、楽天で

確認すると、いつ入荷されるか

わからず、ご紹介できる日を

待っていました。

 

道を歩いていると、たまに

今日はよく猫を見かけるな…

という日があるのですが、

この絵本を読んだ時、

道を歩く猫たちのひみつを

知ったような気持ちになり

ました。

ねこたちが大好きな、ある夜の

お話です。

 

最後の最後までお読み

頂きありがとうございます。

逃げることのできない

苦しみの中にいる人が、

自分自身を責めてしまう

ことのない明日を迎えられ

ますように。