「エマ」 ジェーン・オースティン
[あらすじ]イギリスのハイベリーに住むエマ・ウッドハウスは若く美しく頭もいい自信家な独身女性。裕福な名家に生まれ、心配性で病弱な父親と今は2人暮らし。エマは長く共に暮らした家庭教師のミス・テイラーとハイベリーの資産家であるミスター・ウッドハウスが結婚したことで、自分に縁結びの才能があると思い込んでしまう。そして新しく出会った美しく純真だけれど聡明さに欠けるミス・スミスに相応しい作法を身につけさせ、誰かれっきとした紳士を紹介しようとお節介を焼く。昔から親交の深い紳士ミスター・ナイトリーからは、二人の交友は双方にとっていいとこじゃないと言われてしまう。しかしエマはハイベリーの牧師でハンサムなミスター・エルトンとミス・スミスを結婚させようとし、ミス・スミスが好意を持っていた農夫のミスター・マーティンからプロポーズされると、彼が粗野で無教養だというので断るように仕向ける。それを知ったミスター・ナイトリーはミスター・マーティンを高く買っていたため激怒する。それでもエマはミス・スミスはミスター・エルトンと結婚するんだからとお構いなし。果してエマのお節介の結末は…[感想]ジェーン・オースティンの書く登場人物は人物描写が巧みすぎて、読んでいて本当に腹が立ちますいるいるこういう人!という人物がたくさん出てきます。軽薄で人に迷惑をかける人、虚栄心が強く自慢ばかりする人、いい人なんだけど話が冗長でつまらない人など現代でも周りに一人はいるような人達が出てきて結構他人事じゃないですだからオースティンの小説は本当に面白いんですが、続けて読もうとは思わないです。疲れるので当分いいやと思ってしまう。でもそんな普遍性を感じさせる小説を書いたオースティンは偉大ですね。オースティンの作品で一番有名なのが「自負と偏見」(1813)だと思いますが、「エマ」はそのあとの1815年に出版されています。「自負と偏見」に並ぶ傑作とか、こちらが最高傑作だとか言われていますが,私は「自負と偏見」の方が好きです「エマ」の方が喜劇的というか、登場人物も展開も「自負と偏見」より滑稽さが目立ち、ロマンティック度が薄いので。でも「自負と偏見」の方がいい小説だからというだけではなく、単に「自負と偏見」のエリザベス&ダーシーの方が「エマ」のエマ&ナイトリーより好きだからという理由かもしれませんオースティンはエマのことを「私以外は誰も好きにならないような女」と言っていたそう。確かにお節介で自分の賢さに自信があって、鼻持ちならない女性かもしれません。でも嫌いではないかな。エマって父親を大切にしていて家族思いだし、自分の間違いも認めて反省するんですよ。いいところもある。エマはまだ21歳なのでそりゃ間違いや欠点もあると思う。そして物語が進むにつれミセス・エルトンなどもっと嫌な人が出てくるのでエマがいい子に見えてきますそれからミスター・ウェストンの息子ミスター・チャーチルも自分勝手で嫌いですエマはミスター・チャーチルにされたことをあっさり許すけど、私だったらもっと怒ってるただエマにお節介を焼かれるミス・スミスは本当かわいそうでした。ミス・スミスは純粋で優しい子なので。終盤ミス・スミスがある人物に好かれていると勘違いするんですが、エマは私のせいでそんなに自惚れが強くなるなんて!と思うんですが、おいおいそりゃあないでしょってなりましたミス・スミスは優しくて人に愛されるところがあって私より優れているとか前に言ってたのに、結局自分の方が勝ってると思ってるんだからあとイギリス…というか欧米では純粋さや優しさよりも教養があってウィットに富んでいることの方が重要視されますよね。日本ではどちらかというと純粋や優しさ、真面目さの方が評価が高いと思うんですが。文化の違いなんでしょうね。成熟していることが一番大事という。勿論日本でもお人よしは馬鹿にされるし、年齢にもよるので一概には言えませんけど。海外小説、とりわけイギリス文学にそれを感じます。そしてイギリスって階級社会なので、自分より下の階級に対する偏見が強く、現代日本人の感覚からするとどうしてそこまで見下すんだと読んでいて思うことが多い。勿論昔はそうなんだから仕方ない。でも現代のイギリス社会も階級社会で、基本的に階級の違う人々とは交流がなく、労働者階級から中流階級に上がるなんていうこともないんだとか聞いた話で、私自身の経験ではないのでどこまで事実かはわかりませんが、それはちょっと嫌ですねと何だかイギリスに文句を言ってるみたいですが、そうではありません。文化が違って面白いなーと思って読んでますアメリカやフランスなどの小説よりイギリス文学をよく読みますし。とりわけオースティンは普段イギリス文学を読まない方にもおすすめです。なぜならオースティンは1775年に生まれ、フランス革命の勃発やその後のヨーロッパの動乱を経験しているはずなんですが、小説では全くそれに触れられておらず、専らイギリスの田舎の三つか四つの家庭が舞台という狭さ。そこが批評家から非難されるところでもあるんですが、だからこそ現代の読者にも読みやすいんだと思います。家庭とか男女とか人間の普遍的な問題を書いていて、そしてそれを描写する力が並はずれているから。基本的にハッピーエンドが多いですし。悲劇が好きな方だったら嵐が丘とかの方がいいかもしれませんが。「自負と偏見」の解説で訳者の中野好夫さんがジェーン・オースティンの小説は娯楽小説と言っています。だから今日でも人気なんでしょう。「自負と偏見」も「エマ」も結婚していくまでのお話なので、特に女性にはこの面白さがわかると思います。二つとも映画化されていますしストーリーをご存知の方が多いと思いますが、まだなら是非小説で読んでみて下さい。おすすめです私が読んだのは岩波文庫。この訳少し分かりにくかったです。エマ〈上〉 (岩波文庫)/岩波書店¥972Amazon.co.jpレビューを読むとこちらの方が読みやすそう。エマ (上) (ちくま文庫)/筑摩書房¥1,080Amazon.co.jp「自負と偏見」は中野好夫さん訳のもので読みました。こちらの方が岩波の「エマ」より解説も面白かったです。おすすめ。自負と偏見 (新潮文庫)/新潮社¥843Amazon.co.jp