父をロールスロイスに乗せたが父は乗せられたことを知らない
このブログに何度も何度も登場した「じんちゃん」ことまこまこ父。
12月のとある土日、まこまこは放送大学の面接授業に久々に参加していた。
その翌日の月曜日、早朝に義兄から電話があり、父が倒れたとのこと。
着衣の後、洗顔もそこそこに、実家に向けて車で出発した。
運転中に、救急車の中の妹から着信、心肺停止状態であること、搬送先(主治医のいる病院)の連絡があり、こちらもすでに向かっていることを伝えた。
まだ救急処置室にいる父と対面したが、それから死後のCT撮影(自宅死亡になるらしく死因の特定のため。驚くほどの心肥大があった)、死亡診断書の作成、エンゼルケアがあるらしい。
ふと顔を見ると、入れ歯を入れていないことに気づいた。
「家に帰ってから、入れ歯よう入れる?」と訊くと、「え? 入れたことない」と妹が答え、そんな会話を聞いていた看護師が、「入れ歯をお持ちいただいたら入れます」と言ってくれたので、甥っ子に自宅から持ってきてもらった。
外来診療が開始する時刻になり、父の主治医が救急室前にやってきてくれた。
出勤したら死亡の連絡が入っていて、驚いて駆けつけてくれたらしい。
病院からの寝台搬送、通夜、告別式の手配と、なんやかんやと慌ただしい中、必要最小限のことは発言した。
例えば、LINEを既読無視する妹長男への連絡について。
たいていはアップルウォッチで確認しているらしい。
「至急連絡」から始まる妹の文章を見て、「祖父死亡」とだけ送るように助言し、すぐに連絡がきた。
檀那寺さんでは、10月にお寺法要デビューをした若さんの檀家での通夜、葬儀場での告別式デビューも提案したが、サラリーマンとの兼業のため平日はお仕事をしているとのこと。
ご住職一人での葬儀となった。
悲嘆や慟哭という言葉は似つかわしくない葬儀だった。
男性の平均寿命を超え、父の意思を尊重しながら治療を行い、妹夫婦が日々の世話や十分な看護や介護をして、見当識障害を心配をし始め、明日からは明るい日向で日中を過ごそうと話していた翌日に、突然逝った。
穏やかにことが進み、皆が静かに悼み、在りし良き日々の話をし、見送った。
何事にも「一番」や「大きいこと」が好きな父だったが、霊柩車がロールスロイスだったことや、火葬場の棺を乗せる台が1番だったことなど、「父らしい」とみんなが思うような、そんな話があとあとできるような、お式だった。