飢餓海峡(ネタバレ)~戦後すぐの悲劇~ | 映画でもどうどす?

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映画と読書の感想を気が向いたら書いてます。
どちらも、ホラーとミステリが多め。
ホラーなら悪魔よりゾンビや怨霊。
ミステリならイヤミス。

  ■あらすじ

 

●犬飼…殺人事件に関与しているらしい

●八重…犬飼と一夜限りの情を交わした娼婦

●弓坂…殺人事件を追う刑事

●味村…心中事件を追う若い刑事

 

昭和22年。

台風が直撃した北海道で質屋の家族が殺害、金品を奪われた挙句放火される事件が起きる。

犯人たちは現場を逃走。

 

 

台風の影響で青函連絡船転覆事故が発生。

大勢の犠牲者が出る。

だが、引き取り人の現れないご遺体が2体あった。

 

 

遺体は質屋強殺事件の犯人だと判明。

刑事の弓坂は犯人は3人おり、そのうちひとりが強奪した金の分配で仲間割れを起こしふたりをKILL。

真の犯人はすでに北海道から東北に逃げているのではと推察していた。

 

 

「背がとても高いひげ面の男」を追って大湊に行く弓坂。

 

 

犯行に加担していた犬飼は、大湊に向かう森林鉄道の中で娼婦の八重に出会う。

おにぎりをめぐんでくれた八重についていくような格好で八重と一夜を共にする犬飼。

八重は犬飼の爪を切り、彼の指が事故で歪になっていることに愛しさを覚えるのだった。

 

 

犬飼は八重に大金を残し去っていく。

八重はこの大金を元手に借金を返し、病気の父に治療を受けさせ、自身は東京に向かおうとした。

 

 

東京に行く直前、八重は弓坂に犬飼について話を聞かれるが八重は口を割らない。

結局犬飼の行方は杳として知れなくなってしまった。

 

 

東京でも八重は結局身を売る仕事についている。

それでも懸命に働き金を貯め、犬飼の残した爪を大切にしまい心の支えにしながら生きていた。

 

 

そして10年。

 

 

ある日新聞に篤志家の樽見が大金を寄付したというニュースが載る。

写真を見た八重は「犬飼さんだニコニコ飛び出すハート」と大喜び。

樽見の家にお礼を言いに行く。

 

 

再会した樽見は「人違いでしょう」と取り合ってはくれない。

だが、ふとしたことで樽見の指が歪なことを見てしまった八重。

「犬飼さん、犬飼さんじゃないですか」純愛と感謝ゆえに詰め寄る八重を樽見はKILLしてしまうのだ。

それを目撃していた書生もまたKILLされてしまい…。

 

 

八重と書生の遺体が発見される。

心中と言われていたが刑事の味村は疑念を持つ。

 

 

八重の懐から樽見のことについて書かれた記事を見つけた味村。

樽見に詳細を聞くが、犯行拒否どころか八重のことすらも知らぬ存ぜぬ。

 

 

八重の父から、「10年前に函館の刑事さんが、体のでっかい男のことを知らないかどうか聞きに来た」という情報を得た味村は、その時の刑事である弓坂にも捜査に参加してもらえるよう頼みこむ。

 

 

弓坂と味村。

二人の刑事が樽見こと犬飼を落としにかかる。

証拠をあげられ万事休すな樽見。

しかし樽見は、質屋一家強殺事件については実行犯ではないと言い張り、仲間割れからの死亡についても「あいつらが勝手にやっただけ、自分は何ら関与してない」と言い続ける。

 

 

弓坂は犬飼が極貧の暮らしをしていたことを皆に告げ、彼の心の中は同じような貧しさのものにしかわからないのではないかと問いかける。

だが、いくら貧しさ故の情状酌量はあろうとも、強殺の後放火をしたこと。

放火で起きた火が台風の強風にあおられ他所に飛び移り、結果岩幌町のほとんど全てが焼き尽くされる大火を生み出す結果となってしまったこと。

また、たったひとり「犬飼」を想い続け信じてくれていた八重を殺害したことは許しがたい行為だと樽見を諫める。

 

 

北海道に帰るという弓坂に自分も北海道に連れて行ってほしい、しゃべりますさかい!と訴える樽見。

 

 

弓坂、味村をはじめとする刑事たちとともに実況見分も兼ねて連絡船に乗った樽見は、手向けの花を渡され海に投げると見せかけ船から身を投げる。

 

 

刑事たちは樽見の消えた海を見つめる。

茫然として。

樽見の真実も思いもなにもかも、海に呑み込まれ波に洗われてゆくのだった。

 

 

■おしまい 

 

 

  ■感想

 

 

出典:https://www.amazon.co.jp/dp/B005FCX79Y

 

 

1965年の映画。

完全版は183分もあるのに、時間の長さを感じさせない傑作でした。

WOWOWさんのは完全版

 

 

弓坂刑事役の伴淳がすげー!

味村が高倉健!若っポーン!!

三國廉太郎の異才っプリ。

左幸子の明るさ。

(でも左幸子の八重はちょっと鬱陶しいかもしれない)

 

 

ラスト、ちょーーーー!

始末書モノや。

エライコッテス。

みんな責任とらされるでぇ!

 

 

今現在、この作品を映像化しようとしても絶対作れないでしょう。

何せ当時と気風が違うし、ものの考え方も違うし。

咳込んでる人がいるのに、同じ部屋でタバコ吸うとかありえへん。

後、樽見の奥さん…今の人がこの女性を見たらどう思うんやろう。

まだ弓坂の奥さんの方が現実味あるのかも。

 

 

社会派でもありミステリでもあるこの映画。

昭和の「戦後という時代」を知るにはとても良いと思います。

とにかく貧困の質が違う。

「兄ちゃんが芋粥の芋盗んだ」言うてマジ兄弟喧嘩ですよ。

芋ごときで?

芋ごときでなんです。

と言うかこの時代、貧乏が普通やった。

この映画に関わった方たちも皆貧困経験者であり貧困ing。

 

 

「み、見たな~~」であっさりKILLされる書生さんの悲しみよえーん

スプラッタァ映画のKILL要員より不憫な扱い。

 

 

冒頭の台風の映像を撮るためだけに何日も旅館に缶詰めにされてたという逸話もあり、すごいなーって。

貧乏なのにね。

今のCGなら台風の中にサメ紛れ込ませるくらいのことも容易くやっちゃうのに。

比較対象物…絶望タラー

 

 

長い長い映画なんですが、ほんと引き込まれます。

女の純情、重さ。

男の身勝手。

でもその勝手さは許せる勝手やなーって思えちゃうのは、マダムが昭和の女だからかもしれません。

 

 

今、八重はともかく弓坂刑事の奥さんがSNSで「刑事の旦那に困ってますショボーン」、樽見の奥様が「傍若無人な夫をなんとかしたいプンプン」みたいなのをアップしたら、バズって「そうですよねびっくりマーク」「勝手ですよねびっくりマーク」「許せないびっくりマーク」と応援コメが山のように来ると見た。

 

 

もし機会がありますれば。

一度ご覧になってください。

異世界ですわ。

こんな異世界に転生しても、あんま利益がないかも。

異世界に転生したら貧乏過ぎて涙が出たしチート能力もない←このタイトルでどや?

 

 

味村さんたちの事件会議室が、ご家庭の応接間みたいにこじんまりしてて。

「必ず、ホシを、挙げる!」の大会議室すげぇあんぐりでした。

 

 

この映画のテーマは。

いろいろすげぇ!

上矢印

これ!

 

 

樽見はひっそり生きてれば見つからなかったのに、なんでまた新聞の記事にされることを了承したんだろう。

成功した自分を多くの人に見てほしかったから?

ちな、この時期三國廉太郎さんは大地喜和子さんと駆け落ち失踪しでかしてはります。

今ならネットで炎上からの叩かれまくり。

ネットコワイ。

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