空白(ネタバレ) | 映画でもどうどす?

映画でもどうどす?

映画と読書の感想を気が向いたら書いてます。
どちらも、ホラーとミステリが多め。
ホラーなら悪魔よりゾンビや怨霊。
ミステリならイヤミス。

  ■あらすじ

 

ジャパニーズ映画の底力見せてもらった!

今回長いよ!

 

 

●添田充…粗暴で短気な漁師

●添田花音…孤独なJC、添田の娘

●青柳直人…スーパーアオヤギの店主、万引きを見つけて

●野木…添田の仕事仲間(後輩)

●松本翔子…添田の元妻

●草加部…スーパーアオヤギのパートさん

 

 

中学で周囲から浮いている花音。

孤独な彼女は、家でも孤独。

父親は多感なJCの心なんてわからない

よく言えば豪快、

悪く言えば無神経な男。

母親は父と別れ、新しい家庭を持っている。

 

 

 

 

ある日、帰宅途中にスーパーアオヤギで化粧品を触っていた花音は、

店長の青柳に万引きの疑いをかけられる。

 

 

青柳を振り切って逃げる花音。

追う青柳。

 

 

花音は道路に飛び出し、女性の運転する車に撥ねられる。

道の中央で血を流しながら呆然とする花音は、

走ってきたトラックの車体に巻き込まれた。

 

 

添田は無惨な姿になった娘を見て慟哭する。

会いに来た翔子に「見てはいけない」と怒鳴りながら。

それほどに、遺体の損傷は激しかったのだ。

 

 

添田は娘を失った怒りで暴走。

青柳に対しても、

学校に対しても、

添田は攻撃の手を緩めない。

 

 

青柳にとって不幸だったのは、

マスコミがこのことを面白おかしく取り上げていったこと。

青柳の発言は面白く切り取られ、

ものすごい悪人のように報道される。

 

 

スーパーアオヤギは小さな店舗だ。

地元密着の小さなスーパーにマスコミは押しかけ、客は寄り付かなくなってしまう。

おまけに添田が嫌がらせを続ける。

 

 

客の来ないスーパーは業績が落ち込んでいく。

事件の直後はそれなりにいた従業員も、

どんどん辞めていき(辞めてもらったのか)、

古参のパートさん、草加部が仕切ってはる。

 

 

 

 

そしてこの草加部が、

善意の方向性がちょっとアレな人で。

「直人君は悪くない」と言いながら…叫びながら店の前でビラをまいたりと言う、

青柳にとっては

「もうやめてほしい不安」的なことをしてしまいはるん。

 

 

青柳にとっては、

添田も、

マスコミも、

そして草加部も、

自分を追い詰めるだけの存在なのだ。

 

 

マスコミは添田も餌食にする。

そりゃ面白い素材だろうよ。

 

 

 

 

スーパーアオヤギがとうとう廃業した。

 

 

土下座をしても許してもらえず、

世間の目は冷たい。

マスコミは牙を剥き、

自分の言葉は伝わらない。

草加部の想いも煩わしいだけ。

 

 

生きることに倦み疲れてしまった青柳。

自殺を図るもそれすらも達成できない。

 

 

 

 

花音を撥ねた女性が自殺した。

何度添田に謝りに行っても、

添田に無視され、

心がぼろぼろになってしまったのだ。

 

 

彼女の葬儀に行った添田は、

そこで彼女の母に謝罪される。

自分は青柳に暴言を吐いた。

だが彼女の母は、

「心の弱い子に育ててしまって申し訳なかった」と謝罪する。

 

 

「あんたのせいで娘が死んだ!」

そう怒鳴りつけたっておかしくないのに。

 

 

添田の心が、少し変わった瞬間。

 

 

花音のぬいぐるみの中から、何本ものマニキュアが出てきた。

もしかしたら…。

自分は娘の何も知らなかった、

知ろうともしなかった、

と改めて思い至る添田。

 

 

時間の経過とともに、

人の関心は薄れ、

マスコミは違う標的を狙う。

 

 

添田は花音が描いていたように絵を描き始めた。

まだまだ稚拙ながら、

心は落ち着く。

 

 

ある日、添田と青柳が遭遇する。

青柳は道路交通整理の仕事をしていた。

添田は「もしかしたら娘は万引きをしてたのかもしれない」と告げ、

きちんと謝りたいと申し出る。

添田は娘の死を受け止めていた。

 

 

青柳は休憩中に一人の男から声をかけられる。

「スーパーアオヤギの店長さんっすよね」

ああ、まだ、人は自分を覚えていて許されないのだと、少し絶望する青柳に男は意外なことを打ち明ける。

 

 

「俺、アオヤギの弁当好きだったんっすよ。

もし弁当屋とか開いたら、買いに行きますんで…照れ

青柳は「は…はぁ」としか返せないが、

固く閉じていた心に、

ほんの少し陽の光がさしていく。

 

 

花音の描いていた絵を学校の先生が持ってきてくれた。

その中の一枚に、今自分が描いている絵と同じモチーフのものがあることに気付いた添田は、

ただただ涙を流し続けるのだった。

 

 

■おしまい 

 

 

 

 

  ■感想

 

 

 

無茶苦茶良い映画!!

ぜひ観てほしい。

『ヒメアノ~ル』の監督さんやん!!

 

 

これ蒲郡でロケされてるんですよね。

見たことあるところやと思ったら、やっぱり。

 

 

『ゾッキ』に比較して、あまり宣伝されてなかったのは、一般市民の方々の小さな棘が垣間見えるから?

それともマスコミのいやらしさが「これでもか」と描かれてるから?

 

 

 

 

松坂桃李くんの、追い詰められっぷり演技がたまらぬ!

そりゃ自殺もしたくなろうよ。

お弁当屋さんにぶち切れてそのあと謝罪するシーンでもらい泣き泣くうさぎ

 

 

古田新太さんも狂気に駆られて暴走する父親像をうまく演じてた。

だって、青柳に当たり散らして怒りをぶつけなきゃ、

自分の悲しみとやるせなさを昇華できないんだもん。

 

 

花音を撥ねてしまった女性。

そんなん悪くないって真顔泣

駐停車してる車の陰から人が出て来てもわからんて。

しかも花音に致命傷与えたのはトラックやし。

トラックの運ちゃん、「わし知らんがな」言うてはったやんネガティブガーン

 

 

お母さんの言葉にまたもらい泣き泣くうさぎ

 

 

善人ほど、心が折れていく。

 

 

万引きをした花音も、

娘を置いて家を出た翔子も、

花音を追いかけた青柳も、

青柳を追い詰めていった添田も、

みんな少しずつ悪い部分があって、

でもそれは、悪と言うほどの悪でもなくて。

 

 

市井の民が普通に生活してたらやってしまう程度の悪。

添田はちょっと怖いおっちゃんやねんけど、

悪人って程ではない。

 

 

この映画の中で一番悪人なのは、

マスコミ。

これはもうまちがいなくマスコミ。

そしてマスコミの尻馬に乗る人たち。

 

 

もう一人、

草加部。

この人がもうね…。

なんだろう、

善意の悪?

悪意の善?

やってることは正しいけれど、

その無自覚の正しさが人を傷つける、みたいな。

 

 

ワシガワシガー!も、

大概にせな。

 

 

 

 

その反面、

最初はチャラ助ポジションだった野木の善性がきらりと光ってて胸を打たれたほんわか

 

 

皆さん演技が巧くて、

のめりこんで観る。

 

 

あの時あんなことをしなければ。

あの時もっとわかりあえれば。

あの時もっと…。

 

 

あの時はもう二度と戻らない。

 

 

添田は、

花音を失った苦しみをこれから抱えていく。

ひとりで。

今まで怒りを暴走させて抑え込んでいたものを、

見つめていかねばならない。

その時、野木が少しでも助けになってくれれば。

 

 

青柳にも、

落ち着いた生活が戻ってきますように。

ほんと、

青柳は悪くないんだから。

 

 

 

 

この映画のテーマは。

善ってなんやろ?

悪ってなんやろ?

残された人は、

どう生きていけばいいんやろ。

上矢印

これ!

 

 

地上波ではなかなか放送されないかもですが、

機会があれば観ていただきたい。

『異端の鳥』と並んで、

今年のベストに入るね。

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