BBA、号泣の助!
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僕の平坦な日常に、君は突然舞い降りた。
僕は少し困り、少し戸惑い、少し温かい気持ちになる。
君は僕のまっさらな土地に、赤いハイヒールで穴を穿っていく。
そんな君に、僕はただ、オロオロするだけだった。
何も知らずに。
僕は高校の国語教師をしている。
この仕事が自分に向いているとも思えず、退職願をいつも持ち歩いているような生活。
ある日、取り壊しになる図書室の整理を頼まれ、図書委員と一緒に本の整理をすることに。
この図書室は、僕が高校生の時、君とよくいた場所だった…。
イケてない男子、ボッチ男子。
それが多分、皆が僕に持っているイメージだと思う。
いや、そんなことも噂にならないほど、僕の存在は空気なのかもしれない。
僕もまた、他人には興味が無いのだけれど。
病院で「共病文庫」を拾ってしまった。書かれていたのは「膵臓、病気、死ぬ」不穏なワード。
それがクラスで一番の人気者の美少女、山内咲良の持ち物だと知ったときから、僕たちの運命の歯車は回りだす。
クラスで地味ポジションだった僕なのに、咲良が接近してきたせいで、僕の淡々とした日常が激変してしまった。
不快ではないけれど、僕には戸惑うことばかりだ。
例えば、咲良の親友・恭子から憎悪に近い感情をぶつけられることなど…。
咲良はとても元気で、本当に死ぬなんて思えない。
「君のほうが先に死ぬかもよ、人間の運命なんてわかんないんだから、ほら、今通り魔事件とかで大騒ぎじゃん」
そうは言われてもなぁ…。
「キミの膵臓を食べたいなー」
「ファッ?」
「昔はね、自分の悪いところの部位を食べたら病気が治るって思われてたんだって」
咲良から突然旅行に誘われ、高級ホテルの同じ部屋に泊まることになってしまった。
戸惑う僕に、咲良は「真実か挑戦か」ゲームをすることを提案してくる。
「ほんとは死ぬのが怖いって言ったらどうする?」
え?僕には気の利いた答は出てこない。
咲良は小悪魔のように僕を翻弄する。
「私が死んだら、恭子をお願い、あのコ男を見る目がないし、結構弱いんだよね」
そんなお願いされても、恭子さんが僕を嫌ってますやん。
咲良の元彼に恨まれたり、恭子から疎まれたり。
咲良が入院した。
検査入院だから心配しないで、明るく言う彼女だが突然夜中に「今から旅行に行こう」なんてメールを送ってくる。
心配して駆けつけた僕。
「退院が伸びちゃった」
僕は君に翻弄されることが、楽しくなってきた。
僕は、君に、生きていて欲しい。
「明日退院する!」咲良からメールが届いた。
僕はたった一人の友人、事あるごとに「ガムいる?」と聞いてくるガムの人(宮田です!宮田!)に、桜がまだ咲いている場所を見つけてもらう。
僕はキミと旅行に行くことに決めたんだ。
僕は君になりたい。人に認められる人間に。人を認められれる人間に。
僕は、君の膵臓が食べたい…。
僕は待ち合わせ場所で君を待つ。
なのに、君はやってこない。
トボトボと帰る途中で。
僕は、
君が、
死んだことを知った。
通り魔に刺されて。
「明日どうなるかなんて誰にもわからない、だからこの一瞬を大事に生きなきゃ!」そう君に教わったのに。
君は、もういない。
もう少し時間があると思っていた。
もう少し生きていると思っていた。
1ヶ月かかった。
君にお別れに行く、心の準備を整えるのに。
僕は君が残してくれた「共病文庫」を読ませてもらう。
そこに書かれていたのは…。
彼に秘密を知られた。
少し気になっていた彼に。
恭子とも、仲良くなってほしいな。
物が食べられない…だるい…。
もう何日も食べていない。
でも、彼と一緒にいられる、そう思うだけで幸せ。
明日退院できる。
彼に会える。
咲良はずっと苦しみを隠していたのだ。
明るい顔で、笑顔を絶やさず、暗く重い秘密を秘めたまま、
懸命に生きていたのだ。
食事も取れないほどの苦痛に身を焼かれながら、君は僕と会うときはいつも笑顔だった。
「ありがとう、あの子はしっかり生きることが出来た…」咲良の母が言う。
僕はもう…僕は…もう…。
「もう…泣いてもいいですか?」
こらえていた涙が、嗚咽が止まらない。
他人に無関心な仮面が流れていく、剥がれていく。
僕は、君のいない人生を歩いていかなくてはならないのだ。
年月が流れた。
僕は教師になり、恭子が結婚する。
でも、恭子の結婚式に出る踏ん切りもつかないまま、成長していない僕。
図書整理をしていたらメモを見つけた。
メモを類っていくと、恭子への手紙が…。
僕は結婚式を挙げる恭子のもとへ急ぐ。
ウエディングドレスの恭子と、恭子の旦那さんになる宮田に不義理を詫びながら手紙を渡す。
「これは私の遺書です」
そこに綴られていた恭子への想いに、恭子は泣きじゃくる。綺麗に施されたメイクが落ちることも厭わず。
そして僕も、咲良が残した手紙を受け取っていた。
志賀春樹くん、ようやく見つけたのね。
いつまでたっても私の名前呼んでくれないんだから、私も「君」っていい続けてやる。
でもここでは春樹。
春樹はすごいよ。
自分自身をちゃんと確立してる。
その勇気を、多くの人に分けてあげてください。
春樹は、人と心を通わせて、私の分まで生きて。
私は、春樹になりたい。
私は、
君の膵臓を食べたい…。
君は僕のまっさらな土地に、赤いハイヒールで穴を穿っていく。
だけどその穴には、
小さな種が植えられていた。
僕の平坦な大地が、
芽吹く。
おしまい
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正直、侮ってました。
「病気モノや~~~ん?」
だってセカチュウで、ぽろりとも泣けなかったんだもん!
じゃなんでこれでは泣いたのか。
それは、
前半の「何じゃこの小娘はっ!」という咲良の小悪魔的な態度や表情や全てにイラつきながら観ていたものが、全部くるっとひっくり返って。
真実が見えたらそこにいたのは、傍若無人で可愛いことを鼻にかけた明るい少女じゃなく、病でくずおれそうな少女だったっていうところ。
病で食事も取れず衰弱しているのに、あえて自分を鼓舞して明るく振る舞う。
マダムの琴線にヒットやん。
もちろん、なんぼ演技が完璧でも、やつれていく姿や衰えていく体力をごまかすのは、無理やん!って言うのも分かるねん。
健康そのものに見せるには無理があるのも分かるねん。
この子、どう見ても健康そのものやん!
ゲンキハツラツやん!
角膜が剥がれただけで、何もできなくなってしまうくらい人間の身体ってデリケェトなんよ?
それが死に至る病だったら、げっそりするんちゃうん?
気持ちだけでごまかせる程度の不治の病って、何やねんそれ?
普段のマダムなら、こう突っ込みまくるわ。
でも、これは「してやられた!」感が、良い方向に舵を取ったんさ。
ぼろぼろになる前に通り魔にKILLされるってのも、病の現実を直視させないための伏線?って思えてくる不思議。
ほんまな。
前半の咲良は、女子が見たらキィィィィィってなる子やねん。
僕のこと、舐めまくっとんちゃうんけ?ってなるくらい、あざといねん。
こういうオンナノコにころっと騙される男はアホじゃ!
どこが可愛いんじゃ、雌猫やんけ!
プンスコプンスコ!
それがあーた。
全部が号泣の導火線。
恭子がガムの人と結婚することも、号泣ポイント。
男を見る目がないと咲良に言われてた恭子の旦那になる人が、春樹に、
「ガム食べる?」
ここでまたもやBBA、ダーーーー(涙)
君の膵臓をたべたい (双葉文庫) 720円 Amazon |
原作未読なので、何の先入観もなく観たんですが、それが良かったのかも。
鼻チーンするくらい泣きました。
マダムまだ、
純情だったのね。
うふ。
ポンカス映画とかアホラーとかばっか観てるわけちゃうねん!
ちゃうねんから!
泣きながら走っていくマダムにポチ!
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