施設入居のおばあさん

88歳だった

 

もう過去形の話

 

12月30日

嘔吐と腹痛があった

それ以前より

徐々に食事摂取量が低下してきていた

点滴実施するも

症状が軽快しない

右上腹部を中心に痛みがあり

胆石症の可能性を踏まえて

病院受診を推奨したが

もう年末で通常診療は終わっていたため

救急対応となった

 

地域でも

かなり大きな病院へ搬送された

上記のような事情があり

全て記載した上で受け入れて下さった

ここまでは本当にありがたいと思った

 

しかし

 

諸検査の結果

問題ないと

施設に帰ってこられた

 

え?

何もないのに

腹痛と嘔吐があるの?

施設に帰ってきてからも

症状変わってないんだけどな…

 

でも

病院がそう言うなら

何もないんだろう

その時はそう思った

そして

1人の医者として

どのような診療をしたのかは

診療情報提供書で確認しよう

そう思っていた

 

しかし

手紙の持ち帰りはないとのことだった

詳細は不明

なんだ?

何がどうなってるんだ?

 

とりあえず時間も遅かったため

そのまま経過観察とした

 

31日

症状がスッキリしない

この方はご家族がいないため

施設が方針決定するのだが

病院へ行っても何もしてもらえなかったし

このまま様子見るしかないんじゃないか?

そんな空気だった

 

いや

そうだとしても

この状況では

立ち向かっていけない

状態悪化を見てるだけで良いとでも言うのか?

何か腑に落ちないが

クリニック自体も休みに入ったため

詳細な情報は知りたくても知れなかった

 

その後

1日朝と晩の2回だけ来る報告のLINEで

驚きがあった

 

1月1日

部屋で呼吸が止まっているところを発見された

慌てたスタッフが救急車を呼んだ

運ばれた病院は

先日運ばれた病院と同じだった

だが

病院側は死因がわからないとの見解で

死亡診断書は発行できないと

伝えたようだった

 

年末年始

当クリニックは

連携基盤という

バイトのDrとNsが対応するシステムに乗っていたため

担当のDrが病院へ赴き

そこで死亡診断書を発行した

死因は「慢性心不全」としてあった

そもそも死因に「慢性心不全」は書いてはいけないルールに

全国的になっているのに

そう書くDrもどうかとは思ったが

それ以上に

救急対応した病院は

先日の自分たちの検査の事や

手紙を書かない対応を棚に上げ

その患者が急変して受け入れたところで

内容を受け入れようとしないなんて

信じられないクズだと思った

 

落ち度があったんじゃないか?

診断ミスがあったんじゃないか?

誤診したのではないか?

そういう検討があってしかるべきではないのか?

 

人が一人死んでいる

それも急にじゃない

予兆はあった

それを病院で調べた

何もないと言うならどうして死ぬ?

納得できるはずがない

 

だが

家族もいない

施設も特に熱く物事を考えようとしない

担当したDrもバイトだから

そこまで思い入れもない

時系的に考えようともしない

 

お前らそれでいいんか?

良いわけがないだろう?

何考えて医療と向き合ってる?

なぜ人の疾患を糧に次へ進もうとしない?

同じミスが起きたらどうするかとかどうして考えない?

それじゃぁダメなんだってば!

 

だったら

俺が当日の報告を受けた段階で

俺が動けばよかったんじゃない?

そういうご意見だってあるだろう

そう

俺も結局動かなかった役立たずかもしれない…

でも

でも…

急死じゃない

これは殺人だと思う

俺のせいじゃない

私のせいじゃない

その積み重ねがもたらしたれっきとした殺人だろ、これは…

 

ギャーギャー言ったところで

もうおばあさんは帰ってこない

今日の予定訪問で訪れた施設の患者さんだったから

そのおばあさんの部屋を訪れ

まだそのままの生活空間に

頭を下げて合掌した

俺にできることはそれだけだったから

 

ごめんな…