「…俺の口からは…」







先に口にしたのは……サトシだった…。









「えっ…なに……」





ズキッ…






翔ちゃんのことを…

傷付けたいわけじゃなかった。







ただ…今この人が

何をしているのか気になった。







不穏な空気が続いた……








「ごめん。翔ちゃん。」






「え?」






「…この人のことが見えて…

わざとここに入ってきた。」






「ニノ…?」








「…俺もこの人に会うの…

めちゃくちゃ久しぶりで…つい…」







「…ニノ…」










「…元気…だった?」






俺は…サトシを見て…聞いた。











「…ぅん。…元気だったよ。」







「…そっか。…なら良かった。」







…もう二度と…

会うことがないって思っていた…







いや…本当は…どこかで再会を願ってた……










「…もしかして………」






ギクッ…







鈍感な翔ちゃんが何を言うのかと思った…









「…翔……」





ドキッ…







サトシが…テーブルの上の

翔ちゃんの手を掴んだ…








「…後で話すから。」






「えっ…」









「…いいかな?」





ドキッ!







サトシが…俺に言った……






ズキッ…








「…ククッ。」







思わず…笑ってしまった…






そして、残っていたビールを飲み干した。









「ごめんねぇ~お邪魔して。

俺としたことが空気読み損ねた。」







「…ニノ…?」







「これ、ご馳走になっていい?」






「…いいけど…」







「じゃ…」






足元のカバンを取る時に…

二人の足が見えた……







手だけじゃなかった…







翔ちゃんの靴と…あの人のサンダルが…

引っ付いてたなんて…









「…ニノ!」






「…ご馳走さん!」







俺は…必死に笑顔を作った。














店の外へ出て…振り返った。








店内の二人が…顔を近付けて話していた…








どうして気付かなかったんだろう…







昔の俺なら…すぐに気付いてだろう…







そっか………








まさか…あの翔ちゃんが……









「…まぁ…元々

性癖はヤバかったしな…ククッ。」







俺は…歩きながら昔のこと思い返していた…。







「…っ、でも…ヤバかった…」






久しぶりに見たあの人…






昔より…凄く落ち着いてた…








昔はもっと……危なっかしい感じだった…








それだけ…若かったってことだよな…








ずっと昔のことなのに…








たくさんいた人の中の…

一人だったはずなのに…







不思議だけど…あの人のことは…覚えてた…









ブブッ。





ビクッ!







【帰りに牛乳買ってきて】







…妻からのLINEだった。







俺は直ぐ様返信を送った。









【生乳?低脂肪?】






ブブッ。






【低脂肪牛乳!】







「…じゃ…最初からそう言えよ…」








俺はボソッと口にしていた…。