カチッ。






ドアノブを掴んでゆっくり引くと…






ふわっ…






中から美味しそうな匂いがしてきた…






まさか…ご飯作ってくれてる!?









「ただいま~!」






思わず大きな声を上げていた…。








靴を脱ぐと…朝置いておいた

智くん専用のスリッパがなくなっていた。







「ふふっ。」






ガチャ。






ドキッ!






リビングのドアが開いた…








「お帰り。お邪魔してる。」






普段着の…智くんが…






ふわっと笑ってそう言った…










「智くんっ!」





ガッ!




「痛っ!」







「バカ!なにやってんだよ!」






「邪魔!」







段ボールを避けながら進むと…








「智く…」






「この荷物!!!」






「え?」






「またネットで買い物したんだな!」







「あっ…ぅん。」







「ったく…。」









呆れ顔の智くんが…俺を見た…







でも…そんな顔でも俺は嬉しい…










「…なにニヤニヤしてんだよ…」







「だって…家に明かりが灯ってて

いい香りがして…

智くんに迎えてもらえるとか……」








「っ、なに言ってんだ…!」







智くんがプイッと背を向けた……






智くん?











リビングに入ると…






「わぁ~!」






小さなダイニングテーブルに料理が…!








「これ…智くんが!?」






「…おぉ。」







「めちゃくちゃ嬉しい!!!

美味しそう!!!」







「…オーバーだな…」







「そんなことないよ!俺腹ペコ!」








「…じゃ…着替えて…手洗って…」







「はーい♡」






俺は急いで寝室へ向かってスーツを脱いだ。










「…部屋着…部屋着…」






あ、ソファの上だ…










「っ、おい!」






「ん?」






「なんでパンツ…!」







「部屋着をね。ふふっ。」








ソファの上に綺麗に畳まれた部屋着…







「ありがとー!」






「え?」







「これ、畳んでくれたんだよね!」







「…そうだけど…別に…」








「今朝急いでてそのまま出ちゃったからさ!」







「…それなのに…」






「え?」







「…いや…」







「手洗ってくるね!」







「…おぉ。」







急いで洗面所へ向かうと…









「っ、綺麗になってる…」







そんなに汚してるつもりはなかったけど

見たらすぐにわかった。














ガチャ。







「…ビール…いい?」






「もちろん!うちには酒しかなくてごめん!

こんなに準備してくれてホントありがとう!

いくらした?」






「え?」






「だから買い物してくれた代金!」








「…別にいいよ…」







「そんなのダメだよ!」






「…いいって…」







「…智くん?」






「…えっ…」









「…なんかあった?」






「っ、!」







「…元気ないから…」







「っ、別になにも!」








「…そう?」







「それより…温め直したから食べないと。」







「あ、そうだよね!頂こう!」