バンッ!






「はぁっ…!」







車に乗って…ようやく息ができた…







ドキドキ…







心臓が…まだ…ドキドキしっぱなしだった…








さっきのは…夢でもなく…現実…







櫻井さん…じゃなくて……翔…と……

あんなことを…









部屋での出来事を思い出して顔が熱くなった…








ドキドキ…







ポケットから取り出して…

その手をソッと開いた……






チリンッ…







お守りと……合鍵…







ドキドキ……








俺と翔の関係って……







ドキドキ……








これって…付き合ってるってことなのか…?










特別契約…なんて言ってたけど…







結局…そういうことだよな…?








俺が…特定の人と…付き合う…なんて…







ドキドキ…







チリンッ…









そのお守りに…翔の家の合鍵を付けた…








…ぎゅっ。








「…今さら…恋人とか…」








そこまで言って…口を閉ざした。
























俺が…ゲイの道に入ったのは…

二十歳になってすぐだった…。








それまでは普通に女の子と関係を持っていた。








それが当たり前だって思っていたし…

これ以外の選択肢があるなんて知らなかった。








でも………








やりたかった仕事が全然うまくいかなくて

自暴自棄になっていた時…








たまたま入った店で

ベロベロに酔っ払った俺は…







生まれて初めて…男を抱いた…。









酔っていた勢いもあったはず…








それに…相手が……

ホンモノだったのもある…








世の中に…

こんな世界があるんだって知って…







俺はそれから…ゲイに目覚めた…。











…と言っても……







俺の相手は…いつもその日だけの関係…








そういう店に行って…

相手を見つけて…それで。









そもそも…男相手に恋愛なんて

したいなんて考えたこともなかったから…








その前に……








恋愛が……なんなのか…今の俺は…

よくわかっていないのかもしれない…







本当に…翔と……特別契約なんて結んで……








付き合う…とか…できるのかなって……








でも………








頭の中で…ずっと……

翔の顔が浮かんでは消え…

また浮かんでは消えを繰り返してる…







それに……翔の…あの表情……








翔と…セックスしたら……って…!!!








さっきから何を考えてるんだ!!!








次の仕事っ!!!







俺は…あたまを切り替えて

次の仕事に向かった…。