「早速ですが、ネットで申し込まれました、

お掃除代行2時間パック初回お試し

30%オフコースでお間違いございませんか?」







「えっと…はい、確かそうだったと。」






「はい、承知いたしました。

では一度お部屋の確認をさせていただいて

よろしいでしょうか?」






「あ、はい!どうぞ!」








「失礼します。」







その男性は大きな鞄からスリッパを出した。









「お邪魔いたします。」






「あ、はい。」







段ボールで狭くなった廊下を

大きな鞄を抱えて奥へと進んで行った。








リビングやキッチン…洗面所、トイレ、

風呂を確認した男性が俺の方へ近付いてきた。









「お部屋のチェックは済みました。

本日は水回りを重点的にお掃除させて

いただいてよろしいでしょうか?」







「えっと…じゃ…この部屋は…」








「リビングとあちらの寝室までになりますと…

2時間では…」






「え?まじ?」






「はぃ…。」







「じゃ…あといくら追加したら

全部やってもらえますか?」







「えっと……」






男性がタブレットで何かを確認し始めた…








「大変申し訳ありません。

本日は2時間というお約束でしたので

追加のご利用は致しかねます。」






「え!無理!?」







「…はぃ。また改めて

ご予約していただかないと…」







「せっかく来てもらったのに!?

2回にわけるの!?」







「…はぃ。」







「マジかぁ~!」








「あのぉ…」






「え?」







「掃除に取り掛かってよろしいでしょうか?」







「…じゃあ!」






「え?」







「俺も手伝うから!」






「は?」







「掃除のプロなんでしょ?」







「…まぁ。」







「俺も片付けるから!お願いっ!」








「…と言われましても…」








「お願いっ!この通り!

今日はキレイな部屋で眠りたいんだ!」











「……わかりました。

…何とかしてみましょう。」







「本当ですか!?」








「櫻井さん…?」






「はい!」







「やるからには最後まで本気で

お願いしますよ?」







「え?」









「途中で諦めたら…俺、帰るから。」






「っ、!?!?」








「んふふ。じゃ、まずはこの部屋の

洗濯物を集めて!」







「え!?」







「早く!洗濯くらい回せるだろ?」







「っ、…できるけど…」









「それにしても…ホントあり得ねぇ部屋。」






ガラッ!







男性が…ベランダのドアを全開に開けた…







ふわっ…






外からの風でカーテンが大きく靡いた…










「いい天気~!さぁ、やるか!んふふ!」








ドキッ!






男性が…俺に向かって微笑んだ…。