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俺は昔から【桜】に

勝手に親近感を抱いていた…。









桜の木も春も…もちろん大好きだった。






でも…どうしても俺の記憶が……









「…翔くん…?」







いつの間にか俺は智くんの背中に

しがみついていた…。











「…卒業式が終わって……

俺は教室の窓から智くんの姿を

ずっと見ていたんだ…」






「えっ…」






花壇の所で…二宮くんと座ってた…






相変わらず仲良しで…

二宮くんや相葉くんにしか見せない笑顔を

盗み見してた…







でも…それも今日で

最後なんだって思ったら…






胸が締め付けられた…。











「…友だちにすら…なれないままだったから…」







「…翔くん…」






…ぎゅぅう。








智くんを抱きしめると…







「今は…俺たち…大親友だろ?んふふ。」






「っ、…!」








「あの頃があったから…今がある…。」






「…っ、…智くん…」







「んふふ…今日の翔くん…ちょっと変だぞ?

センチメンタルになってるのか?」






「…だって…」







「ん?」







「……あの頃を思い出す

キッカケがあったから…」






「それって桜…?」










「…ううん。……引き出しの…中に…」





「引き出し?」








「……制服の…第2ボタン…」





「制服の第2ボタン?」









「…大切に取ってくれてあったんでしょ?」






ドキドキ…








「…引き出しって…そこの?」






智くんがテレビの方を指差した。





「うん。」









「…第2ボタンって……あれ見たんだ。」






ドキドキ…







俺はそっと智くんの横顔を見た……






え?







「…そっか…あそこにしまってあったんだな。」







「…智くん?」








「…あれ……別に深い意味はないから。」







「え?」







「だから…捨てるに捨てらんなくて…」






「え!?」






す、捨てるって!!!








「…他に使い道もないし…なんとなく…」







「…なんとなく?」







「うん…なんとなく…あそこに…」








智くんの顔がテレとは違う

何とも気まずい表情…









「…ちなみに…あれって……誰の…」






「っ、……ニノ…。」







「え!?」









「っ、俺たち全然貰い手がなくて…

それでお互い…」








「…それって…本当?」






「え?」







智くんが体ごと振り返った…。








「…どういう意味?」






「あれ…俺のだよ。」






「…は?」








「だから…」








俺はあの引き出しから

第2ボタンを取ってきた…。