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寒い冬がようやく終わった…。








「ヘッブシ!ヘッブシ!」






そして、俺にはツラい季節がやってきた。







鼻をかみに事務所に入ると…







「こんにちは!」





「あ、こんにちは。」







スーツを着た男性と親父が話をしていた。









「長男の雅紀です。」






「あ!こちらが。」







改めて頭を下げる男性…






俺も鼻水を堪えて頭を下げると…








「雅紀、こちらは田邊さん。

裕介とお付き合いしている有槻子さんの

お父さんだ。」






「…えっ…!?」







あまりの驚きで俺の鼻水もどこかへ…








「…裕介…彼女…いたの…?」






「え!?雅紀…知らなかったのか!?」






「っ、聞いてないよー!」










俺の弟の裕介は…大学に入ったはいいが

全く勉強もしないで毎日遊び呆けていた。







何とか4年で卒業できはいいけど、

就職も決まらずずっとフリーターだった。







見かねた親父が店を手伝うように言って、

今は男3人でやっていた。







そんなまだまだ半人前の裕介が…









「こ、子どもができた!?」






夜、家でその事実を聞かされ俺は

一人衝撃を受けていた。






幸い、彼女の両親は寛大で

二人の結婚を望んでいるとか。






安定期?とかいう期間に入ったら、

結婚式を挙げさせたいと

相手側は言ってるらしい。










「その前にお前…生活していけるのか!?

住むところは!?結婚式の費用は!?」






「それが、有槻子のお父さんが

全部出してくれるって言うからさ~」






「はぁ!?」









「雅紀、落ち着け。でも、事実なんだ。」






「っ、!!!」







そうは言っても男側が

一円も出さないわけには…






すると…







「兄ちゃん!俺、婿養子ね!」






「え!?」






「しかも有槻子のお父さんの会社に

就職するんだ~!」






「えー!?」






「俺、次期社長~!」






「っ、!!!」












そして、そのあと親父と二人で

酒を飲みながら話すことに…








「それで…雅紀に相談なんだが…」






「相談?」







「…裕介を婿養子に出すからには…

金が必要なんだ。」






「…向こうは必要ないって言ってるんだろ?」






「そうは言っても…な。」







「…まぁ…そうだよね。」







「…それで……お母さんとも相談したんだが…」






「なに?」






「…家と店を売ろうと思うんだ。」






「えっ…」