脳卒中患者の肩関節の固有感覚 | What a wonderful world and life

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この研究では、脳卒中患者とコントロール群を対象に、肩関節の他動運動の推定の閾値(Threshold to detection of passive motion test: TDPM)、他動的な位置感覚の再生産を検証しています。(どちらも肩関節内旋、外旋の運動に関して)
脳卒中患者では両側の肩関節を評価しています。

(結果)
脳卒中患者の両側肩関節において、TDPMがコントロール群に比べて優位に高い、つまり運動感覚の低下が示されています。

しかしながら、他動的な位置感覚の再生産では差がみられませんでした。

また、この結果はBrunnstrome、MASなどとの相関はみられませんでした。しかし被験者の数がこれを推定するには少なすぎます。しかしながらもしこの結果が妥当であれば、麻痺の程度と固有感覚には関連がないことになります。損傷部位に関しても皮質、皮質下の分類しかないので、この結果はあまり信用できそうにありません。

さらにこの研究の制限として、被験者の群が多様であることが挙げられています。可能であれば、損傷部位を特定して行う必要があるのでしょう。

考察では、筆者らは両側の肩関節で閾値の上昇が見られたことから、脳卒中患者では、筋紡錘からの固有感覚入力の中枢での処理とプロセスの問題が重要な要因だろうと考えています。麻痺の影響でγ運動ニューロンが適切に働かないのであれば、筋紡錘の感受性も低下するだろう。また、麻痺側の金が他動的に伸張されていれば運動の推定の時間も長くなり、TDPMも低下するだろうとも推測していました。

肩関節に痛みのあるケースでは、ない場合に比べて閾値が高かったと示しています。これの理由として、まず痛みのレセプターからの求心性のシグナルが優先され、固有感覚の求心性入力が低下しているのではないか、もしくは、固有感覚入力の低下により肩関節がより不安定になり、痛みが出現しているのではないかという二つの仮説を立てていました。

(感想)
やはり、というか、運動感覚は両側ともに低下していました。片側の損傷であっても、抹消からの感覚入力の問題だけでなく、中枢での感覚入力の情報処理が両側共に障害されることが示唆されます。
また、麻痺の程度と本当に相関がないのであれば、中枢での処理の問題の方が大きいのかもしれません。これに関しても発症してからの期間や左右の半球違い、その間の治療の影響なども考えられるので他にも条件を厳密に設定しないとはっきりとはわかりません。

他の論文でも、最近では非麻痺側へのアプローチが必要であることが示される論文がどんどんでてきています。ただどのようなアプローチが必要なのかについてはまだ出ていないようですが。