脳卒中後の過重分配の対称性のトレーニング | What a wonderful world and life

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タイトルを無理に訳すと変なことになりましたが、座位の対称性の治療効果を検証した研究です。

座位での左右対称性を改善するために、

急性期脳卒中患者に対して、

3つの治療法(task-specific reaching,ボバース (hands on ) Balance Performance Monitor feedback(BPM) training(視覚フィードバックを使用) と、non-specific treatmentのコントロール群を短期間(2週間)、長期間(12週間)で比較した研究です。

(詳細記載しませんが、ベースラインの時点で、立位の過重分配で差があります。また、パイロットスタディのためか、サンプルサイズも40名と少なめですので、妥当性には若干不安が残ります。)

評価にはBPMで過重の分配(座位、立位)、Barthel Index motor scores (以前の研究で座位バランスと相関があることがわかっている)を使用。

結果、
座位の対称性において
①短期ではBobath群で最も大きな変化が生じた。
②しかし、長期ではBPMが最も変化が続いた
③task-specificでは改善が見られなかった。

立位では
①ボバース群:効果は小さい
②BPMで大きく変化


(感想)
BobathとBPMの間での大きな違いはおそらく、
ハンズオンによる固有感覚入力 vs 視覚によるフィードバック
といった感じでしょうか。

長期、また立位ではBPMの方が効果が出ています。身体の空間的な位置関係を改善するには視覚によるフィードバックが有効なのかもしれません。ただ、私としてはその時点の身体のアライメントの状況が気になります。代償的な姿勢をとっているのであれば、それは単純に改善とは言い切れないかなと感じます。

ボバース群では短期での変化が最も大きかったようすが、どうしてそれが長期にわたって続かないのか?もしかすると、ハンドリング自体が条件刺激のようになっており、ハンドリングなしの状況では自ら対称性を作り出していけないのかもしれません。この辺はセラピストが徐々にハンズオフしつつ本人がコントロールできるように促していくことが大事かもしれません。

またtask-specificで変化が出なかったというのも面白いなと。単にリーチのゴールに対して注意が向けられただけでは、身体図式の変化というのは起こりにくいのかもしれません。
細かな状況がわからないだけになんとも言えませんが。

さらに、BPMの器具ではbobath, task reaching群の本当の効果を推定できないかもしれないと書いてあるので、どこまで信用できるデータかわかりません。

こういう論文を読むと一体どんな人(一応、教育を受けている人が治療していると書かれている)が治療しているのか気になってしょうがないんですよね。

どの治療技術や概念にもいえることだと思いますが
正直なところ、ずっと院内で特化した教育を受けている人と、2、3日、または1~3週間のコースに出ただけの人では、治療技術の差が非常に大きいです(主観ですが)。明らかに練習量が違うと思うのでそれも仕方がないのですが。

そういった専門的に、集中して教育を受けた人達が、それを論文化、少なくとも症例報告くらいは数多く出していく必要性があるだろうなと思う今日このごろです。


治療者の能力にバイアスがかかったとしても、それは仕方がないのではないかと。


本当にある疾患、症状に対して、ある治療が効果を示すのあれば、どの協会がやってる云々関係なく、セラピストはそれを治療に取り入れるべきだと思いますし、それを適切に行うためには練習も必要でしょう。


なんだか論文に関係ない感想がほとんどになりましたが、今回はこのへんで。

参考文献

Mudie, M.H., Radwan, S. & Lee, L., 2002. Training symmetry of weight distribution after stroke: a randomized controlled pilot study comparing task-related reach, Bobath and feedback training approaches. clinical Rehabilitation, 16, pp.582-592.