【完全版】2017年オスカー大予想スペシャル① | てち

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平手友梨奈ちゃん!
全力で応援します!

前田敦子、ハリー杉山が参戦!
2017年オスカー大予想スペシャル


http://www.elle.co.jp/culture/feature/cfe_elle_cinema_chat17_0225/1

今年は日本時間2月27日(月)に開催される、米アカデミー賞。4日間に渡って動画でお届けしてきた「ELLE CINEMA CHAT オスカー大予想スペシャル2017」の完全版をテキストで公開。芸能界随一の映画通である前田敦子さんとハリー杉山さんが発する映画愛溢れるコメントを、余すことなくノーカット版でお届けします。

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今年のオスカー予想は芸能界きっての映画好きのふたりと!

よしひろまさみち(以下Y) ELLE CINEMA CHATオスカー大予想スペシャル2017! この番組は直前に迫りました、第89回アカデミー賞でオスカーを手にする俳優、監督、作品などを部門別に予想していこうというものです。私、映画ライターのよしひろまさみちと申します。今回、司会を務めさせていただきます。そして、一緒に予想していただくのはこちらのお二人、前田敦子さんとハリー杉山さんです。
 
前田敦子(以下A)よろしくお願いします!
 
ハリー杉山(以下H) よろしくお願いします!
 
Y 前田さんとは実はロンドンでご一緒したことがあるんですよね。なぜかロンドンで初対面。『ホビット』のプレミアだったんです。
 
A そうです。一緒に行ってきたんですよね。楽しかったですね。
 
H ちょっと待ってください。いまジェラシーの塊です。なぜ、ロンドンなのに僕だけそこにいない? やっぱり、イギリス人なので、案内したかったな。
 
Y 凍死しそうなくらい、寒かったんで……。私、外れますので、次回はぜひ、お二人で行ってきてください(笑)。
 
H いろいろ、お伝えしたいんですよ。イギリス料理は実は近年かなり美味しくなったっという事をまず知っていただきたいですし……。
 
Y そんなことなかったです、お食事もちゃんとおいしかったですよぉ~!
 
A 二人で街頭インタビューをしたんですけど、皆さん、優しくて、ノリノリで答えてくださいましたよね。
 
H 無事でしたか。フーリガンとかに会わなかったですか。
 
A、Y ないないない(笑)。
 
Y ハリーさんとは昨年末、ELLE CINEMA大賞でご一緒しましたね。ハリーさんが司会をされて。あの時はお世話になりました。
 
H こちらこそ、楽しかったです。ステージ上ではお話できない裏話をたっぷり、聞かせていただきました。
 
Y えっ、それをいま言うの!?(笑)。
 
H 僕としてはフランクに話した方が面白いかなと思って、そういう姿勢で2017年は挑んでいきたいと思っているんです。これから、たっぷり、そんな話をしていきましょう! で、僕、映画が本当に好きで、年間、できれば200本は観たいと思っているので、プロの方とお話できるなんて、本当にこの機会を楽しみにしてきました。
 
Y 年間200本はなかなか大変ですよ。前田さんもすごく観てますよね?
 
A はい。観ますね。大好きなんですよ。映画館に年100回、行けたらいいですよね。そうはいっても、近頃は古い映画にハマっているので、断然、家で観ることが多くなりました。移動中も地方に行くときもDVDを持っていきます。
 
Y もしやVHSとかも観るタイプ?
 
A さすがにVHSはないですね(笑)。この頃、日本のクラシックな映画がちょうど切り替わって、どんどんブルーレイ化されてきているので、それを買って、観ています。


映画はひとりで観る? 友達と観る?

ハリー杉山(以下H) お二人はどれほど、映画に感情移入しますか。

前田敦子(以下A) 私は結構、入り込むタイプ。普通に楽しみたいので。客観的に観たくないんです。

H 映画館に行くときはひとりですか。友だちと一緒ですか。何人くらいですか。

A 私はできれば、二人以上で行きたいんです。

H 僕は完全に一人派になりました。というのも、あまりにも感情移入しすぎて、家ならまだしも映画館でも、ラブストーリーや戦争もの関係なく、大号泣してしまうんです。ただ、これがめちゃめちゃ気持ちいいんですよね。泣くことだけでなく、すべての感情を抑えない。よくいるじゃないですか。映画館で、腕を組んで、ふむふむって感じで冷静に観ている人。人間かなって思っちゃう(笑)。僕はわかりやすく感情を表す方なので、引かないでくださいね。

よしひろまさみち(以下) 全然、引かないですよ。私も飛行機とかで、観たことのある映画のはずなのに、ついうっかり、見入って、大号泣してしまうなんてことがありますから。通路を通りがかった外国の方が涙まみれのアジア人を不審そうに眺めてましたよ(笑)。

A 私もすごく感動するし、すごく笑うし、声を出すタイプです。だから、一人じゃなくて、誰かにいてほしいんです。

H なるほど。一人で声を出してたら、やばい人になっちゃいますからね(笑)。

A たまに一人で観ることももちろん、ありますけど、楽しい映画ならまだ、いいんですが、すごく暗い映画だと、感情移入してしまうだけにつらくなりすぎてしまうことがあるんです。抱えきれない。誰かいてくれると「一緒にいてくれて、ありがとう」っていう気持ちになります。だから、二人以上で観たいんです。

Y 今年の候補作も暗いものが多いんですよね。つらい思いさせちゃったんじゃないでしょうか。

H オスカーの審査員たちが好きそうな映画がたっぷり、ありましたね。

Y それを言うなら、好きそうなの、ばっかり(笑)。これだけ映画の好きなお二人なので、予想もものすごく楽しくなるんじゃないかと勝手に思ってます。

H 僕のなかにテーマがあって、正直、今日は「女子会」ぐらいのテンションでいきたいなと思ってるんですよね。

A えっ! 今日私女子ひとりですけど、大丈夫でしょうか。

H 僕はどちらかというと、感性は女子に近いんですよ。服や美容、映画に関して全部、そう。もともと、僕の父親が7人兄弟のなかで、唯一の男子。僕には6人、叔母さんがいるんです。だから、女子会になじみやすいんです。

Y まあ、私はただのババアですからね(笑)。前田さんも女子同士で映画、観ることが多いんですか。

A 女優の友だちと観ることも多いですね。客観的な意見も聞けるので、楽しいです。

Y そういう時は自分の映画も観るんですか。

A 自分の映画は一緒には観ないですね。それぞれ観て、互いに「観たよ」って報告し合うくらい。

H 自分の映画、ほかの人と観るのは気恥ずかしくないですか。

A でも、なくもないです。「一緒に観たい」って言ってくれたら、公開中の映画に一緒に行くこともありますよ。観てくれるのはうれしいことなので。

Y 最近、前田さんは攻めの姿勢の作品が続いていて、さまざまな監督とお仕事されてますよね。河瀬直美監督だったり(短編映画『サポステ』)、熊切和嘉監督だったり(『武曲 MUKOKU』6月公開予定)。なかなかハードな方向に向かっていますね(笑)。

A あはははは。自分ではそんなつもりないんですけど(笑)。映画はなんでもやりたいです!

Y 俳優さんに課題を出す監督の方がやっていて、楽しいですか?

A 映画監督は、自分に何かを与えてくれる感覚があるんです。勉強になります。

Y 映画だけじゃなくて、前クールのドラマ「毒島ゆり子のせきらら日記」なんかも前田さんすっごくよかったですよね。こんなこともできるんだと驚きました。どんどん突き進んでください。

A うれしい。ありがとうございます。



波乱の予感! 黒人3人がノミネートされた助演女優賞

よしひろ(以下Y) そんな芸能界きっての映画通のお二人なので、アカデミー賞にはすでに注目、さらに予想もしてくださっていたのではないかと思います。ということで、予想、いってみましょう! 最初は助演女優賞、助演男優賞です。まずは助演女優賞です。まず注目したいのは5人中3人が黒人の女優さんというところです。ハリーさんはご存知だと思いますが、昨年、「白すぎるオスカー」とハッシュタグができるほど、問題になったんですよね。
 
ハリー杉山(以下H) 僕はこのラインナップ、そんなに驚かなかったです。新しい時代が訪れて、今回はどうなるのか、みんな注目していますよね。先日のゴールデングローブ賞のメリル・ストリープではないですが、政治的なメッセージを俳優たちもどんどん発信していますし、それを期待している方も多い。ハリウッドでは、アンチ・トランプがひとつの正義のようにもなっています。それがこのノミネーションにも影響したのかもしれないですよね。
 
Y 「白すぎるオスカー」に関しては、アカデミー賞の協会もさんざん叩かれたんです。その結果、多様性を大事にするために、いきなりアジア人の監督などに招待状をバンバン出したんです。日本だと北野武さんなどが去年の夏、招待され、きっと入られたんじゃないでしょうか。アカデミーの会員って、比率でいうと約8割以上が白人と言われていたのですが、それを変えていこうという試みなんですね。その結果が今回のノミネーションの結果につながったのかもしれません。
 
H 素人みたいな質問なんですけど、審査は会員しかできないんですか。
 
Y 会員のみです。それ以外の人は投票できません。俳優なら全米俳優協会や監督なら全米監督協会など、組合に入っていて、さらにそのなかでも、アカデミーから招待を受けた人だけが投票できます。いまは6500人以上いるそうです。
 
前田敦子(以下A) そんなにいるんですね。そのなかで選ばれたのなら、すごく名誉なことですね。
 
H そう思うじゃないですか。でも、ちょっとブラックかもしれないですけど、映画を観もしないで、「ああ、あの人の映画ね! きっと、いいはず」なんて入れてる人もきっと、なかにはいますよね?
 
Y それはそうなんです。最近は改善されたはずなんですが、投票前に、各映画配給会社が候補作を観れるよう、スクリーナーを会員全員に配るんです。それが違法コピーに流れたりなど、問題になっていました。だから、最近はテロップに全部、届主の名前が入っているようです。さすがにこれでは横流しはできないですからね(苦笑)。それだけ、観てない人が多いってことです。劇場で観ていないうえ、古くからの会員の人は映画の世界にいるとはいえ、そんなに活動はしていないですからね。
 
A なるほど。
 
Y というわけで、話は助演女優賞に戻りますが、いまのところ、前評判では、ゴールデングローブ賞を受賞したヴィオラ・デイヴィスとオスカー4度目のノミネートでまだ無冠のミシェル・ウィリアムズのどちらかではないかと言われています。ではさっそく、予想していただきましょう。
 
A どうなんだろう……。難しいですね。じゃあ、ミシェル・ウィリアムズで! 今回はいけるんじゃないでしょうか。でもなあ、『ムーンライト』のナオミ・ハリスもよかったんですよね。子どもが大人になってからが素晴らしいです。メイクの力もあるんでしょうけど、しっかりおばあちゃんになってた。最初の登場では薬物に溺れて、お母さんとは言えないような鬼母だったのに、後のシーンでは過去を乗り越え、別人のような顔つきになっている。しっかり反省して、いい表情になっているんです。それでも、『マンチェスター~』かな。だんなさんが友達を家にいっぱい呼んで、奥さん役のミシェルが悪態をつくんですけど、実にリアルなんですよ。素敵な肝っ玉お母さんというか。だから、その後のギャップがまた、効いてくる。
 
Y 出番としてはそんなでもないんですよね。
 
H なのに、存在感がありますよね。僕個人としては、『マンチェスター~』の役どころは彼女のプライベートを思い起こさずにはいられないです。『ブロークバック・マウンテン』の共演で結ばれたヒース・レジャーと結ばれて、家庭を築きながら、結果的に残念なことになってしまって……。何かのインタビューで「リアリティのあふれる役だった」と語っていたのを読んだことがあります。だから、役に説得力があるんですよね。だんなさんと再会するシーンの生々しさなんて、心に突き刺さりまくりでした。というわけで、僕もミシェルに票を入れたいのはやまやまなんですが、ここはヴィオラ・デイヴィスで。いまの時代を反映させ、さらに演技力やキャリアの面を見てもそう。彼女もこれが3回目のノミネートで、まだ一度も取ってないんですよね。
 
Y 実はいちばん、手堅いんですよ。ヴィオラは前哨戦、勝ち抜いてますから。『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』でもノミネートされながら、共演したオクタヴィア・スペンサーに賞を持っていかれてしまったので、「ここであげてもいいんじゃない?」というムードがあります。では私は、みんな一緒では面白くないので、ナオミに。さっき、前田さんもおっしゃってましたが、老けメイクの時の彼女の感情の作り方が素晴らしい。こんなことができる人だったんだって、驚きましたね。いままでのところ、彼女って、007シリーズ(『スカイフォール』『スペクター』)の秘書役のイメージが強かったですよね。
 
H ボンドガールというのは、男性が自分の身を削ってでも、いつかはデートしてみたい存在。女優というより、ちょっと違う資質が求められる。でも、この作品では素晴らしかったですね。驚きました。驚きついでに我々、ニコール・キッドマンに関して何も言及していませんが、大丈夫でしょうか(笑)。
 
Y じゃあ、言っときますか(笑)。ちなみに『LION~』という作品は、インドで迷子になり、故郷を遠く離れた男の子が施設に送られ、そこでオーストラリアに養子に出されてしまう。その後、成長して、25年経ち、Googleアースを見ながら、自分のルーツをたどろうとするんですが、名前も住んでた場所も知らず、自分の記憶の片隅にあった給水塔だけが頼り……というお話です。ニコールは彼を引き取ったオーストラリア人のお母さん役。この作品は実話なんですが、ニコールがノミネートされた理由というのが、モデルになった女性の心境をちゃんと理解して、表現できているというものです。日本ではあまりなじみがないですが、欧米やオーストラリアでは自分たちと肌の色の違う、よその国で生まれた子供たちも積極的に養子にし、自分たちの人生の一部として、迎え入れます。その多様性も今回の評価につながったと思いますね。そして、本作のニコールはすっぴん。最近、ちょっと見てない間に皺も増えましたね~。
 
H その味もまた、いいですよ。



誰が獲ってもおかしくない? いちばん予想が難しい助演男優賞

よしひろまさみち(以下Y) 次は助演男優賞です。実は助演男優賞がいちばん難しく、誰が獲ってもおかしくないと言われています。
 
前田敦子(以下A) みんな、いい役でした。なるほどってメンツです。
 
Y みんな存在感もありますし、改めて誰が飛びぬけてよかったかと言われると悩ましいんです。さあ、前田さん予想をどうぞ。
 
A ああ、でも、私、キャラクターのなかでいちばん好きだったから、マハーシャラ・アリ。すっごい素敵だった♡ 
 
Y 彼もまた出番、少ないんですよね(笑)。
 
A でも、すごく大事な役ですよね。主人公の人生に関わり、その後、大きな影響を与えていく。ドラッグディーラーなのにめちゃめちゃいい人。さっきのお母さんとの絡みも切ない。つい情にほだされて男の子に手を差し伸べてしまったばかりに、彼の人生が大きく変わり始めるじゃないですか。それでも、すごい好きですね。
 
Y 私も『ムーンライト』推しなので、その意見、とってもうれしいです。ハリーさんはどうですか。
 
ハリー杉山(以下H) 悩むなぁ。う~ん。ルーカス・ヘッジズかデヴ・パテルで、すごい悩んでます。もっというなら、『LION~』の主演の男の子。インドで何万人もオーディションしたのに、5歳のド素人の男の子があまりにうまくて、キャスティングされちゃったという。あの子がよかったんですよね。とはいえ、僕はルーカス・ヘッジズでいかせていただきます。
 
A 若いですよね。20歳? すごく、よかったです。
 
Y もしも、取ったら、助演男優賞の最年少記録タイ(『普通の人々』ティモシー・ハットン)です。入っているだけでもすごい。助演ってすごく難しいポジションなんですよね。主演が新人の場合でも、たいてい助演はベテランで主演を支えていく立場にある。今回、『マンチェスター~』の主演はベテランですが、彼が支えられる側かというと全然、そんなことはなくて、後半なんて、彼が話を引っ張っていってましたからね。
 
H ひとりのティーンエイジャーの思春期に立ち向かわなければならない葛藤。心の動きがありありと手に取るようにわかりました。「わかるわかる」ってところも多かったし、お父さんが亡くなって、さて後見人は誰になるのかとなった時の叔父さんとのやりとりもいい。お父さんでも、友だちでもない、微妙な距離感が実に見事でした。一人の男として、経験してきたことを脳裏に蘇らせてくれるようなリアルさがありました。好きですね。
 
Y 全米俳優組合賞という前哨戦ではノミネートすらされていなかったんです。ちょっと意外ですが、オスカーではちゃんと評価されて、よかったです、とはいえ、私もマハーシャラ・アリ。彼なくしては主人公のキャラクター形成はなし得なかった。彼、「ハウス・オブ・カード」などにも出ていまして、キャリアも長く、評価の高い方なので、「そろそろ?」という雰囲気もあると思いますね。出番は少ないにしても、とても重要な役ですから。



思い入れたっぷり! 主演女優賞は誰の手に?

よしひろまさみち(以下Y) 続きましては主演女優賞と主演男優賞。まずは主演女優賞です。
先に私から言っちゃいますと、イザベル・ユペールとエマ・ストーンのほぼほぼ一騎打ちです。二人ともゴールデングローブ賞を受賞しています。コメディ・ミュージカル部門でエマ・ストーン、ドラマ部門でイザベル・ユペール、しかも前哨戦はみんなこの二人の一騎打ち状態ですので、たぶん、この二人のどっちかでしょうと言われています。が、ここにきて、現地の評判を聞いてみると、じわじわ上がってきているのがナタリー・ポートマンなんです。
 
前田敦子(以下A) そうなんですか。『ジャッキー~』は、ストーリーがというより、役者のお芝居のレベルが相当高くないとできない役柄だと思いました。
 
Y 『ブラックスワン』と比べてみると、わかりやすいですが、顔つきも話し方も完全に別人ですからね。
 
A 泣いているときの顔が印象的で、圧倒される迫力でした。
 
Y ジャッキーことジャクリーン・ケネディは、実在の人物で、映像資料もたくさん、残っているので、それを見て、完コピしたようです。そして、アカデミーの会員は当たり前ですが、アメリカ人がほとんどなので、みんなジャッキー大好きですからね。
 
ハリー杉山(以下H) 僕がひとつ聞いてみたいのは、アカデミーの前にゴールデングローブなど、前哨戦がいろいろ、ありますよね。そういう流れというか勢いというものは、どれくらい影響してくるものなんですか。
 
Y 投票の時期でいうと、ゴールデングローブの後から始まる賞はかなり重要です。例えば俳優の賞なら全米俳優組合賞、いわゆるSAGで取った人がオスカーとかぶることが割合、多いです。
 
A 同業者たちから評価されるのはまた格別でしょうね。
 
Y 製作者組合の賞はプロデューサーの賞なので、作品賞に関わってきます。監督賞もあり、前哨戦がそれぞれの部門で違うのですが、そこで取ったものがオスカーに勢いよく雪崩れ込むということが多いんですね。というわけで、それを踏まえて、前田さん、どうぞ。
 
A ああ、難しい! でも、普通に考えたらエマ・ストーンなんだろうなって思うんです。
 
Y ちなみにメリル・ストリープはオスカー候補入り20回目です。
 
A あの役もまた、よかったですね。
 
Y 日本では12月に公開されたんですが。ド下手のオペラ歌手役でしたね。
 
A 最後に演じた本人の曲が流れましたが、完コピでしたね。
 
Y そういう意味では、ナタポーとメリルは完コピ対決でもあります。
 
A そうはいっても、イザベル・ユペールもすごかったしな。でも、エマ・ストーンで。
 
Y ですよね~。私もそう思います。理由は?
 
A 『ラ・ラ・ランド』自体、とても魅力的でした。みんなが目を奪われ、心が奪われるのもよくわかる。あと、エマ・ストーンが大好きなんです。『アメイジング・スパイダーマン』シリーズは全部、見て、DVDも持ってますし、『ヘルプ~』も最高。もちろん、持ってます。
 
Y 私はちょっと前の学園コメディですが、Easy A、邦題は『小悪魔はなぜモテる?! 』ってタイトルがついちゃったんですが、あれとか、いいですよね。
 
A 私も好きです。面白いですよね。もちろん、DVD、持ってます! 私、彼女の作品、全部、DVDで持ってるんです。だから、前回、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で助演女優賞にノミネートされた時もとてもうれしくて。しかも今回は主演。勝手に感極まってます。今回はいけるんじゃないかな。取ったら、本当にうれしいです。
 
Y ハリーさんは?
 
ハリー杉山(以下H) 流れで言うと、ほかの方に入れる方がいいとはわかってるんですが、ちょっとガチで当てに行きます! 前田さんと同じ、エマ・ストーンで。個人的に僕の青春の1ページである「ドーソンズ・クリーク」出身の彼女は避けて通れません。作品も彼女だからこそ、成り立っている。ライアン・ゴズリングもそうですがエマ・ストーンがいなかったら、恐らく、成立していなかったと思うんですよ。めちゃくちゃ歌がうまいわけでも、踊れるわけでもない。でも、いい感じ。一番ちょうどいい感じの穏やかな風をふっと心に吹き込んでくれるようなパフォーマンスを見せてくれていたので、ここはエマ・ストーンでいきたいです。
 
Y 困りましたね。どうしましょう。ルース・ネッガの話が出てきませんでしたけど、どうですか。
 
A 好きでしたよ。彼女がいてこその実話のラブストーリー。寡黙なだんなさんをひっぱっている感じが好きでした。
 
Y いいお話なんですよね。とはいえ、私もここは仕事上、別の人にした方がよいと思い、イザベル・ユペールにします。取ってほしいですね。60過ぎて、体当たりの演技。あの美乳、見ました?
 
A きれいでしたね。すごい! 60歳、過ぎてるなんて。えっ、63歳なんですか。美魔女すぎます。
 
H 頭から衝撃の展開ですよね。
 
Y 全部、さらして、あんなにハードなことをさせられるなんて。若手の社員から無言のいじめに耐える社長役なんですけどね。まあ、常連組の人たちは取っても取らなくても、体制に変化はないと思うんです。でも、彼女が取ってくれることで、ほかの国の人の勇気にもなると思うんですよね。これまでのアカデミー賞を振り返ってみると、主演女優賞あたりが外国語映画、いわゆるハリウッド映画でなくても取りやすくなってきたなと思います。マリオン・コティヤールはフランス映画『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』で賞を取っています。それを考えると、イザベルの可能性はまだ、ありますね。
 
H 被害者に見えて、人の心を見事に操っていく。異常な魔性っぷりでした。あの女性が日本にいたら、銀座の頂点に立っているでしょうね。すごい映画だったなぁ。
 
Y ちなみにELLEの公式ツイッターで、読者投票をしたんですが、エマ・ストーンが8割近く、占めています。『ラ・ラ・ランド』旋風、観てない人にも吹き荒れてます。
 
H 『ラ・ラ・ランド』の力っていうのもありますよね。



ケイシーかデンゼルか。粒ぞろいの主演男優賞

よしひろまさみち(以下Y) では主演男優賞になります。
 
ハリー杉山(以下H) 『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのヴィゴ、入りましたね!
 
前田敦子(以下A) いいお父さん役ですごく素敵でした。
 
Y もともと、ヴィゴ自体、変わり者で知られていますからね。あのアウトサイダーなパパ役はすっごくしっくりきてましたね(笑)。そして超ダークホース候補。前哨戦でノーマークだったので、ゴールデングローブに入っていたのもびっくりしたくらい。でも、みごと、アカデミー賞にもノミネートされました。
 
A 作品自体、インディペンデント映画感があふれてますよね。衣装もポップで良かった。
 
Y かなりユニークなお話でしたね。このなかでまだ日本公開が決まっていないのがデンゼル・ワシントンの『Fences』。これ、デンゼルの監督作でもあるんです。もともと舞台で、デンゼルが演じて、トニー賞も取っています。前哨戦の結果でいうと、デンゼルかケイシーの一騎打ちとこの部門では言われています。さあ、お二人の予想は?
 
A じゃん、ケイシーで!
 
Y 今回は悩みませんでしたね。
 
A だってもう、すごいんですもの。あれだけのことをよく、感情がこと切れず、やり切れたなと思って。感動的です。
 
Y 劇中、時間軸が移動して、過去と現在がいったりきたりするのですが、その間、ずっと暗いという。
 
A でも、過去の回想シーンなんて同じ人に見えないくらいですよね。
 
H 同性からも慕われる男性だった彼が、そうでなくなってしまった現在。その変化がみごとでしたね。特に絶妙な声のボリュームの使い方! ぼそぼそ言ってるのに、ぎりぎり聞こえるあの大きさ。心ここにあらずというのがびしびし伝わってくるんですよ。
 
Y じゃあ、ハリーさんもケイシー推し?
 
H さっきつい、前田さんと同じにしてしまったので、ここは個人的な思い入れでデンゼル・ワシントンに。昔から大好きなんです。特に『ハリケーン』が好き。過去、2回、オスカーを取っていて、演技派としても知られていますし、いまの時代の流れ、空気を考えて、票を入れたいと思います。実は映画は観てないんですけど。
 
Y この映画は日本の公開はまだ決まっていないので、観てない人の方が圧倒的多数だから大丈夫。デンゼルはアカデミー会員から好かれていますからね。彼のことを嫌いという人に会ったことがないです。人格者だし、前哨戦でもある全米俳優組合賞は彼が取っています。それまでの賞ではケイシーが全部、取って来ていたので、アカデミーもケイシーだろうと言われていたものがここにきて、違う風が吹いてきました。なので、一騎打ちと言われてるんです。
 
H デンゼルはこれまでの作品を見ても、アメリカを背負う役が多いですよね。そういう意味でも、審査員が支持するんじゃないかなと思います。
 
Y あと、実はデンゼルにいくだろうという理由がもうひとつ、あるんです。ケイシーがハリウッド映画人から嫌われているんですよね。
 
A ああ、なんかかわいそう……。
 
H いったい、なぜなんですか。
 
Y 理由がちゃんとあって、ホアキン・フェニックス主演でフェイク・ドキュメンタリーを撮ったんですが(『容疑者ホアキン・フェニックス』)、実はこの映画、ドッキリじゃないですけど、いろんなところに嘘をついて撮影をしていたので、出来上がったときにだまされた人たちから、大批判を受けたんです。しかも、さらに発覚したのが、その時期、彼がセクハラをしていたという話。オスカーの人たちはセクハラ系のネタを嫌悪しているので、出た瞬間、「ありえない」ってなったんですよね。
 
A そうはいっても、そこは演技で判断してもらいたいものですよね。
 
Y ただし、そこはアフレック家ですから。お兄ちゃんのベン・アフレックと彼らの親友で本作のプロデューサーでもあるマット・デイモンがキャンペーンで、ロビー活動をしてくれています。もしかしたら、ケイシー個人より、全体で見てもらえるかもしれないですね。そうすれば彼にも分がいいのではないでしょうか。
 
H マット・デイモンはアフレック兄弟と本当に仲がいいですね。
 
Y もともと、この作品はマットが演じる予定でしたが、彼が下りたので、ケイシーがやることになったんですって。では最後になりましたが、私はライアン・ゴズリングに。本気で思ってはいませんが、ここは読者を代表して。ELLE公式ツイッターで募集した読者投票の結果、これまたライアン・ゴズリングが頭ひとつリード。次がなぜかアンドリュー・ガーフィールド。皆さん、顔で選んでませんか(笑)。ライアン、これでは取れないと思いますがまあ、応援はしたいですね。
 
A ゴールデングローブも取りましたからね。
 
Y まあ、それで十分でしょう。あとは私の票をあげるくらいで(笑)。アンドリューは『ハクソー・リッジ』でノミネートされていますが、日本ではいまちょうど『沈黙-サイレンス-』が公開されていますので、その演技に注目した人が票を入れてくれたのかもしれないですね。また、この『ハクソー~』でも、『沈黙』同様、アンドリューがひどい目に遭うんです。沖縄戦の衛生兵なんですが、信じられないほど、泥まみれになって、誰も真似できない大仕事をやってのけます。アンドリュー、ここのところ、苦役な役が続きますね。ここであげなくても、彼はまだまだ先があるから、ノミネートだけで十分でしょう。