NO.84 発達障害の子どもたち 杉山登志郎 | マルティン・ルターのぶろぐ

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はじめまして、マルティン・ルターです。今年の目標として読了30冊を掲げました。
今まで読んだ本も備忘録として残していきます。
主にビジネス書、リベラルアーツ、などです。+で中日ドラゴンズとごはん屋さんも発信していきます。

発達障害の子どもたち 

 

杉山登志郎

 

講談社現代新書



 

ケーキの切れない非行少年たちを読んでこの本にたどり着きました。正しい知識を得て理解を進めたいと思います。

 

 

第1章 発達障害は治るのか

 

 

世間に広がる誤解

 

以下に挙げたのは、発達障害に関して特に学校進学をひかえた子どもを抱えるご家族から聞くことが多い意見である。読者のみなさんは、おのおのについての是非をどのように思われるだろうか。

 

・発達障害は一生治らないし、治療方法はない

 

・発達障害児も普通の教育を受けるほうが幸福であり、また発達にも良い影響がある 通常学級から特殊学級 (特別支援教室) に変わることはできるが、その逆はできない

 

・養護学校(特別支援学校)に一度入れば、通常学校には戻れない

 

・通常学級の中で周りの子どもたちから助けられながら生活をすることは、本人にも良い 影響がある

 

・発達障害児が不登校になったときは一般の不登校と同じに扱い登校刺激はしないほうが 良い

 

・養護学校卒業というキャリアは、就労に際しては著しく不利に働く

・通常の高校や大学に進学ができれば成人後の社会生活はより良好になる

 

・通常の高校や大学に進学ができれば成人後の社会生活

 

次は、幼児期の発達障害のお子さんのご両親からしばしば伺う意見である。

 

・発達障害は病気だから、医療機関に行かないと治療はできない文章

 

・病院に行き、言語療法、作業療法などを受けることは発達を非常に促進する

 

・なるべく早く集団に入れて普通の子どもに接するほうがよく発達する

 

・偏食で死ぬ人はいないから偏食は特に矯正をしなくて良い

 

・幼児期から子どもの自主性を重んじることが子どもの発達をより促進する

 

これらはすべて、私から見たときに誤った見解か、あるいは条件付きでのみ正しい見解 この中 であって一般的にはとても正しいとはいえない。

 

 

 

 

第2章 「生まれつき」か「環境」か

 

 

人間の子どもは「生理学的早産」

 

さて、やがて母親は臨月を経て出産を迎える。この後の成長の節目に関しては、それぞれについて少しずつ述べていくので、ここでは細かく取り上げない。しかし発達の開始の 部分と、発達のゴールの部分については、本書の主旨の上で重要と思えることを取り上げておきたい。

 

偏見は、誤った知識から生じる。この本は、発達障害に対する誤った知識を減らし、どのようにすれば発達障害を抱える子どもたちがより幸福に過ごすことができるようになるのか、正しい知識の紹介をする目的で書かれている。

 

 

自立とはなんだろう

 

 

心理的に一人で生活ができる 筆者としてはここは単純に、次の三つを自立の目標としたい。

1、自分で生活できる。

2、人に迷惑をかけない。

3、人の役に立つ。こうして単純化をさせてみると、仕事を得てタックスペイヤーになり、さらに社会的なルールを守ることができていれば、自立という課題は達成できたということになる。

 

このように、人として生まれた子どもが、受精した瞬間から社会の中で生き、自立するまでの過程全体が「発達」である。

 

 

発達障害とは英語ではdisorderディスオーダーという。

要は、「発達の道筋の乱れ」「発達の凸凹」

 

 

第3章 精神遅滞と境界知能

 

全世界で知的障害は人口の2.1%前後であると知られている。

その上で、上記の定義に従った精神遅滞は1.1%から1.2%前後となることが報告されている。

 

境界知能

 

知的なハンディキャップのもう一つの形が境界知能である。具体的にはIQ70~IQ 84前後の知的能力を示す児童となる。

 

境界知能の重要性の一つは、その多さである。計算上は一四パーセントの子どもがこの 境界知能の範疇に入る。このレベルの児童は、実は小学校教師の力量がもっとも反映され る児童でもある。これまでの状況をあえて単純化すれば、小学校中学年のいわゆる九歳の壁の前後に、良い教師に当たった境界知能児はこの壁を突破し、知能自体も小学校高学年 には正常知能になることが多かった。それに対し、そのような教師に恵まれなかった児童 は、ここでハードルに捕まり、知能自体も小学校高学年には知的障害のレベルに下がって いたのである。

 

 

第4章 自閉症という文化

 

自閉症への治療教育

 

さて、発達障害の治療教育については、後にまとめて述べるが、自閉症への対応のコツ について、ここで触れておきたい。先に自閉症の認知特徴を三つに絞って述べた。

第一 に、情報の中の雑音の除去ができないこと。

第二に、一般化や概念化という作業ができな いこと。

第三に、認知対象との間に、事物、表象を問わず、認知における心理的距離が持てないことである。このそれぞれに対して工夫をすることが治療教育のコツとなる。

 

 

第5章 アスペルガー問題

 

 

アスペルガー症候群の再発見

 

わが国において、児童をめぐるさまざまな領域で、高機能広汎性発達障害、つまり知的 な障害を持たない自閉症グループをめぐる問題は、今日大きな論議をもたらしている。あえて分けて一章を振るゆえんである。われわれはこれをアスペルガー問題と呼んでいる。 この章では「アスペルガー問題」をできるだけ簡略にまとめ、筆者なりの分析と処方箋を 示してみたい。

 

アスペルガー症候群は、自閉症の三章上である、社会性の障害と、コミュニケーションの障害と、想像力の障害およびそれに基づく行動野障害のうち、コミニュケーションの障害が軽微なグループである。

 

自閉症とアスペルガー症候群との間に差があるのか否かについてさまざまな検討を行ってきたが、結論的には両者に決定的な差は認められなかった。

 

 

 

第6章 ADHDと学習障害

 

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは

 

注意欠陥多動性障害は、多動、不注意、衝動性を三大症状とする。この三つ以外には、不器用な者が多いこと、知的な能力に比べて学力の遅れが生じる者が多いことなどが主な 症状として知られている。また成長するとしばしば一緒に認められるのは情緒的なこじれ であり、その主なものは反抗挑戦性障害という診断名で呼ばれる。これは名前だけ聞くと ぎょっとするが何のことはない、大人の言うことを聞かない、挑発を繰り返し周りの人間に対して故意に苛立たせる行動を繰り返すなど、どの中学校にもそして最近は小学校にもいる、反抗的で生意気な子どもたちのことである。

 

第7章 子ども虐待という発達障害

 

 

第8章 発達障害の早期療育

 

わが国は世界に冠たる優れた乳幼児健診システムを構築してきた。特に一歳六ヶ月児鑑 診は障害児療育に革命をもたらしたと言っても過言ではない。世界レベルでみても、一歳半からいう早期から障害児への療育が可能であるシステムはわが国の他に見あたらない。 近年のわが国における障害児の軽症化には、一九七〇年代以来の一歳半健診とそれに基づく早期療育の成果も大きく影響をしているのに違いない。しかし先にも述べたように、知 的な遅れのないタイプに関しては、従来の乳幼児健診で十分なチェックをすることは、現在 でも大きな困難がある。軽度の問題を視野に入れたシステム作りが必要な時代になっているのであろう。

 

 

 

第9章 どのクラスで学ぶか―特別支援教育を考える

第10章 薬は必要か