不必要な愛 | 週刊まきうさぎ・ブログ版

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日常生活の中で、見たり感じたりしたことが独自の視線でおもしろおかしく書かれています。

好きでもない人から好かれたらどうする? ブログネタ:好きでもない人から好かれたらどうする? 参加中

あるブロガーさんとお会いする前に、もう一度プロフィールを見てみた。
そうしたらそこに、好きな異性のタイプは「僕を好きでいてくれる人」とあった。
なんだかとてもほんわかして、くすっと笑ってしまった。

お会いしてすぐにその話をしてみた。

「面白いですね、好きな異性のタイプが『僕を好きでいてくれる人』なんですか?
「うーん、なんか変ですかはてなマーク
「変じゃあないですけど、ふふふまるちゃん風

無邪気なほんわかしたその雰囲気の中でさえ、私は過去の苦い経験を少し思い出したピンク…


週刊まきうさぎ・ブログ版-銀色夏生
随分昔読んだ銀色夏生の詩集。 「ロマンス」

その中にある一編の詩「愛されたいと」


愛されたいと思っていた時は
だれでもいいから
だれかに強く愛されたいと
思っていたのに

愛された今では
不必要な愛ほど
邪魔なものはなかった

学生時代、実は私はストーカー被害にあった。
日本ではまだ「ストーカー」という言葉も概念もあまりなかった。
日本ではストーカーというと、元彼だったり、何かしら関係のあった人との
別れ話などのもつれからしつこくストーキングされるというイメージが強いが、
本来ストーカーとは、まるで知らない人からストーキングされることなのである。

その人は同級生なので知り合いではあったが、お付き合いなどしたこともなかった。
しかもその人にはちゃんとみんなが公認の可愛い彼女までいたのである。
それなのに私に対して、通算するとなんと10年近くストーカー行為を続けたのだった。

最初はたびたびかかってくる真夜中の無言電話。
ある時、ふとしたことで無言電話の相手が誰なのかに気付いた私に対して、
今度はまるで電話をかける権利を得たかのように、時々、堂々と電話してくるようになった。
「昨夜も遅くまで電気がついていたね」「3階でも夜、小窓を開けてるのは無用心じゃない?」
いったいいつ来て見ているのかわからない恐怖で、ぞっとするようなことを告げる。

「なぜ?あなたにはちゃんと公認の彼女がいるじゃない?」と問うと
「ああ、あの彼女はプロパガンダだよ。僕が手に入れたいのはあなたなんだ。
彼女もそのことをわかって付き合ってるんだよ。だから心配しなくて大丈夫だよ。」
それが彼の答えだった。彼女もわかっているって…異常なカップルだとしか思えなかった。

大学の親しい同級生たちにさえ、私はこのことを誰にも言えなかった。
彼は一見とても爽やかな好青年なのである。言ったところで誰も信じてくれないだろう。
今みたいにストーカー禁止法などというものがなく、警察もなにもしてくれないのだから、
下手に相手が逆上しない程度に、電話で話相手になるほかなかった。

卒業するまでの我慢だと思ったからだが、甘かった。
卒業して携帯電話を持ち始めた頃、突然携帯に電話がかかってきた。
「なぜこの番号を知っているの?」私はわなわなと携帯を持つ手が震えた。
彼は人懐こい笑顔で私の友人にさりげなく私の番号を聞きだしていたのだ。

番号を変えても同じことの繰り返しだった。同級生の誰かから必ず聞きつけてくる。
どこから見ているのか、「髪を切ったんだね、せっかく腰まで伸びていたのに」
「少しやせたんじゃない?」などとかかってくる電話は恐怖でしかなかった。
引っ越しても同様だった。何をしても無駄なのだ。警察も直接被害がないため何もしてくれない。
もう仕事も始まり忙しいはずなのに、いったいいつどこから彼は私をみているのだろう?
私の留守中に、また以前のように郵便ポストを見ているのだろうか?

ある夜中、電話が鳴り、渋々出た私に、彼はどうしても会いたいと言い出した。
「そんなことできないし、会うつもりもない」と答えても、彼は譲らなかった。
「君は僕の女神なんだ。一度だけでも会ってほしい」
私は恐怖と嫌悪感のあまり、めまいさえ覚え、背筋が寒くなり叫びそうになった。

彼の愛と称するものは、愛ではなく単なる狂気ではないのかはてなマーク

しかも私のその頃のパートナーのことまで調べていて、私の拒絶に対して、
「どうして僕じゃだめなんですか?」と聞いてきた。限界だと思った。

「どうしてですってはてなマーク
だって私はあなたのことなんてこれっぽっちも好きじゃないDASH!
愛ってそういうものじゃないでしょう。あなたのは愛じゃないムカッ
もう私の生活に勝手に踏み込まないで!パートナーに何かしたら許さないから…むかっ

もう我慢の限界だったのだ。恐怖よりも怒りがこみ上げてきた。
警察は何もしてくれない。だけど怖いからと相手にしていると
ますます図にのるのだと思った私は、すぐさま着信拒否にした。

そうすると今度は時々葉書が来るようになった。
見るたびに破り捨てた。そんなことが3年ほど続いた。
そのうち葉書も次第に来なくり、今では全く音信不通。

好きでもない人にここまでやられたらどうしますかはてな
こんな経験をすれば、好きでもない人と付き合うなんてありえない。

私はブロガーさんに銀色夏生の詩の話を少しだけした。
だけど楽しい時間を壊したくないので、ストーカーの詳しい話まではしかなった。
ブロガーさんは「好きでもない相手から好かれる」ことについて少し考えていたようだ。
けれど自然と会話は別の方向に流れていき、楽しい会話がまた続いた。

もしも異常な経験をしていなければ、人から愛されるのは嬉しいことだろう。
だけどそれが「愛という思い込みの狂気」であったらはてなマーク

だから私は思うのだ。

不必要な愛ほど邪魔なものはない・・・ 顔


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