まだまだアドルフ! | まきおの隠れ宿

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劇団スタジオライフの牧島進一です。
皆様との交流の場をコソッと増やそうとブログを始めてみました(^_^;)
内容は徒然、不定期更新になると思いますが、
宜しくお願い致します!

折り返して数日。

僕らのアドルフに告ぐに対する熱情は、沢山のステージを重ねて尚、弛緩することなく、むしろ日毎にもっと、もっといける!と想いを募らせています。

Mチームのカウフマンを演じるまつしん。
稽古の頃から

「とにかく真摯に、カウフマンとして生きたい」

と話していたのを思い出します。

言葉通り、まつしんはただカウフマンの想いを己の身体に浸透させ、彼の人生を全身と魂を使い体現している。そんな風に見えます。
それは決して、簡単にできることではなく、稽古の中で、また台本と向かい合う中で、ひたすらカウフマンという人物を模索し、自分の中で迷いなく生きられるところまで昇華しなければならない。
時には役者本人と役との思想の違いに戸惑ったり、迷ったりすることもあるはずです。
それらを試行錯誤の上に乗り越え、やっと辿り着ける。
そして、そこに辿り着いたまつしんは、迷うことなくさらにその先へと進もうとしています。
日々の彼のカウフマンを観ていて、毎ステージ着実に、カウフマンとしての感情の振り幅が増していることを感じます。時には「おい、大丈夫か?」と思ってしまうほど、気持ちが振り切ってエネルギーとして溢れることもあり、

「ただ真摯にその役を生きる」

そのことが、まつしんにとっては究極的な武器になる。そしてそれは、まつしんの芝居に対する、己の役に対する並ならぬ探究心があったればこそ。
まだまだ底は見えない。
残りのステージも本当に楽しみです。


そして、カミルを演じるのはおがっちこと緒方和也。
器用な役者でオールラウンダーでもある彼。それが彼の持ち前なのだと、数年前まで僕は思っていました。
でも、違った。違ったのか、違ってきたのかは解りませんが、僕の気付いたところでは、ビートポップスのレイコちゃんあたりから、

「こいつにはとんでもない底力がある」

と感じるようになりました。日頃接している飄々として爽やかなおがっちからは全く想像もつかない、役を生きた時に生まれる桁違いの感情力。
それこそがおがっちの本当の武器なのだと、カミルを演じる姿を観て確信しました。
常に冷静に、場やその瞬間の空気を見極めながらも、かつここぞという時にリミッターを外してとんでもないパワーを全身に漲らせて解放する。
今後が楽しみな…というより、むしろ毎回圧倒されまくりです。


さて、ここから昨日セミファイナルを終えた特別篇へ。

特別篇でカウフマンを演じる仲原。
とにかく芝居に関しては究極にストイック。
どこまでも追求するその姿勢は、若手のみならず僕含め先輩も触発されるところ。
学校公演からの流れもあり、特別篇は稽古場初期から一体感では群を抜いていました。
でも仲原はそこに留まることなく、カウフマンという人物像を改めて見つめ直し、もう一度ゼロから構築するという挑戦を試みた。僕にはそう見えました。そしてそれは幕が開けても尚、「追求し続ける」という態度に表れている気がします。
彼が持つその探究心は、実は芳樹さんの持つライブ感覚とも少し似ていて、

「今日の舞台にきっと転がっている何かを、逃がさないで生きる」

そういう感覚だと思います。
元よりエネルギーはある仲原。
でも、それはともすれば自らが生み出した「勢い」に飲まれ、「瞬間」を見落とす、という懸念にも繋がります。

「一瞬一瞬を大事に」

口癖のように呟く彼が、きっとその怖さを一番解っている。そして、毎ステージ、一瞬一瞬に全神経を賭して臨んでいる。

そして、その彼の熱は、カウフマンとカミルの友情にスポットを当てた特別篇に於いて、先に書いたおがっちの熱と見事に溶け合い、作品全体をグッと熱いモノにしてくれる。
そんな風にも思うのです。


そして、特別篇と言えば藤波の草平。
藤波は普段とても静か。でも、芝居への熱はとんでもなく熱い男です。きっと彼は草平という役を、すごく広い目で捉えています。
「狂言回し」というポジショニングが、特別篇では殊に強く、物語中盤まで客観的に作品世界を俯瞰できる位置にいるのです。
それ故、元々社会情勢や、時事に造詣の深い藤波は、アドルフに告ぐの世界で起きている様々な出来事を、時代背景に則りつつも、現代の社会時事と重ねて捉えているようにも見えます。そしてそれが、藤波ならではの草平という役に繋がっているような気がするのです。
勿論役者としての感受性も人一倍強いので、仲原、おがっちの二人のアドルフに接することで、彼自身の熱量もドンドン増していく。
そしてそれがまた、二人のアドルフの温度を上げることにも繋がっていくのです。

この三者の相互作用が特別篇の核となり、
その核を覆うように他の出演者が彼らに追随する。特別篇はそんな作品なのではないかと、僕は思います。

勿論上の三者だけではなく、
うさぴょんの由季江や久保のエリザ、翔音のナチス教官を始め、若い力に満ち満ちた特別篇。

直接の絡みが少ないキャストも、彼らの熱をしっかり受け取って、板の上に立っているのです。

僕の赤羽にしたって、カウフマンに、カミルに、草平に、直接絡むシーンだけでなく、そこに至るまでの物語の中で沢山のエネルギーを受け取って、「よっしゃ、俺も返したる!」と、貰いっ放しじゃ男が廃るという想いで戦地に赴くのです。

そしてこの先、いずれは今の若手達が中核を担うようになっていくであろうスタジオライフという劇団に於いて、この特別篇が、若い力が沢山の先輩を巻き込んで成立していることに、僕は、前途の希望を感じます。

このアドルフに告ぐの公演を終え、また次一緒に舞台に立つ時には、きっとまた一つ成長した彼らに出会える。

それもまた、楽しみで仕方ありません。




今日はMチームの日本、ドイツのダブルヘッダー。今日のアドルフ達はどんな表情を見せてくれるのか。

そして、僕も彼らに負けないくらいの熱情を持って、全てを出し尽くせるよう全力で臨みたいと思います!

僕らのアドルフは、まだまだ続くのです!