紡いでは、解かれる。アドルフに告ぐの世界。 | まきおの隠れ宿

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劇団スタジオライフの牧島進一です。
皆様との交流の場をコソッと増やそうとブログを始めてみました(^_^;)
内容は徒然、不定期更新になると思いますが、
宜しくお願い致します!

日々公演を重ねているスタジオライフ版アドルフに告ぐ。

ご覧になったお客様はお気づきでしょうが、この作品は登場人物が実に多く、カウフマン、カミル、ヒトラー、峠草平を除くキャストは全員が複数の役を担当しています。
上の4人もその役で登場しないステージは沢山の役を演じているので、舞台裏は毎日てんやわんやです(^_^;)

そんな環境もあってか、また5チーム編成の交互公演ということもあってか、随分と沢山のステージを踏んだような感覚もあり、また逆にまだ始まったばかり、という感覚もあるという、本当に不思議な状態です。


初日から一週間余りを経過して、
改めて感じることの一つに、

このアドルフに告ぐ、という作品は、本当に一期一会だな、ということ。

登場人物それぞれが、
各々の信念に基づいた目的を持って生き、
それが、何らかの形で、物語の中でしっかり収束します。1930~40年代当時の日常の断片を描いていながら、ほぼ全ての登場人物に、スタートラインと終着点があるのです。

だからこそ、その日、その瞬間に全てをかけて生き抜くことができて。

結果として、その皆の生きようが、アドルフに告ぐの世界を紡いでいく。

そして、ラストシーンの草平の言葉で舞台が闇に溶けると、それと一緒に僕らの心がスーッと解かれる。そんな感覚を覚えます。

そうして僕らは、束の間の休息を得るのです。

それからまた改めて、全く新しいスタートを切る。同じ作品を繰り返しながら、僕らは確実に、毎回そのステージだけのアドルフに告ぐの世界を生きている。三作品交互公演という環境が、そのことをより強く実感させ、新鮮なスタートを切らせてくれる。そんな風にも感じます。


また、今回の公演を通じて僕が感じていることの一つが、若手たちの著しい成長です。

僕がトーマの心臓以来、スタジオライフの舞台から離れていたということもあって、約1年ぶりに一緒に立つ彼らは、本当に逞しく、頼れる存在になりつつあります。

Jr.11の宇佐見はファントム初演やカリオストロ伯爵夫人の頃とは比べられない程の成長。技量云々もそうですが、何より「舞台に立つ感覚」というか、彼自身がちゃんと自分のスタイルを持って、やりたいことを板の上で表現できるようになってきた、という印象を受けます。由季江とカールの演じ分けも見事。由季江さんについて言えば、今となっては彼以外のキャスティングは考えられないと思える程、立派な母親、女性として存在しています。

同じく11の翔音。
クールなようで実は板の上では不器用だった彼。
ビートポップスの時には毎晩のように深夜の稽古場で朝まで稽古していました。
今回はリンドルフ、ユーゲント教官といったナチス党員や、日本の特高その他様々な役でかけ回っています。どの役も翔音ならではのカラーで演じていて、きっと彼の中に舞台上で余裕が生まれてきている印象。板の上で余裕が出てくると、そこからまた新たなステージに進める。これからの成長もまた楽しみです。

そして、今回大活躍の11の澤井&若林。
特別篇ではmy部下としても共演している彼ら。
とにかく三篇どれも超多忙に沢山の役を演じています。究極に近い早着替えもものともせず、それぞれの役をしっかりと演じ分けています。ここ数年培ってきたものがきちんと礎となっている。本当に逞しくなったと思います。
澤井は以前と比べるとかなり心身共に解放されてきて、リラックスして板の上に立てている。それによって今まで見えづらかった彼の魅力が表に現れてきた印象。
若ちんは本当に全ての役に全力投球で、徹底的に追及する姿勢がリアルな役作りに繋がっている。
二人の役者としてのタイプが全く違う故に、コンビとして関わる時はお互いが高め合える。本当にいい関係です。

Jr.12の久保も、他の役も担いながら、エリザとして堂々と板の上に生きています。以前から底力のある奴だと思っていましたが、エリザとしての繊細な想い、揺れを、役者として決して逃すまいとする姿は、絡むシーンのない僕ですら、共演者として触発される心持ちがします。僕がライフの公演をいくつか休んでいる間にも、沢山いい経験を積んだであろうことが伺えて、嬉しいです。

同じく12の藤波。特別篇で草平という大役にありながら、日独でもまた重要となる役所を多々渡り歩く姿は、もはや若手の域ではない模様(笑)。
彼とはドイツ篇ではボルマンとゲッペルス、特別篇では草平と赤羽という関係で対峙しますが、なんの打ち合わせもなくとも呼吸が合う。いい意味で「ほっといて大丈夫」な後輩。さらに今回は草平を通じて爆発力、エネルギーが増した印象もあり、まだまだ彼自身が今の自分に決して満足せず精進している姿が見えます。

そんな彼らを見て、フレッシュの吉野や江口も今まさに成長を重ねている。まだまだ成長過程の彼らだけど、きっとこのアドルフに告ぐで得る経験は、彼らの糧になる。そんな風に感じます。


…とかなんとか、先輩であるのをいいことに偉そうに書いちゃいましたが、僕もまだまだ発展途上。毎ステージ試行錯誤しながら、必死にこのアドルフに告ぐの世界を生きています。

若手たちの活躍や成長は、そんな僕の背中を押してくれる重要な要素の一つ。彼らと共に同じ舞台に立てることを、先輩の背中を追うことと同じ位、大切に、幸せに思います。


今日、7月20日の日本篇も、みんなの力が結集した、熱い舞台になりました。

まだまだ役者としては成長過程の僕ら。でも、舞台にかける熱は、きっとどんな座組にも負けてはいない。そんな風に思います。

そして、それを温かく見守って下さっている皆様に、本当に心から感謝しています。


残りのステージも、全ての公演が一期一会。

明日一日ゆっくり休んで、また明後日から、
一つ一つ、大切に、アドルフの世界を紡いでいきたいと思います!