11月21日。
稽古はお休み。
羊共演者から貰った銀座のカフェの招待券があったので、行ってみることに。ランチのペアチケット。一人で行くのも勿体ないので相棒に連絡をして銀座一丁目で待ち合わせる。
「こ、ここか…?」
「そうだね、アンリなんとかって書いてあるね」
「そ、そうか、アンリってHから始まるんだな…」
カフェというともう少しフランクなイメージがあったので、その佇まいに少し怖じ気付きながら中へ。ちなみに二人ともアンリのスペルがHから始まることに気付かず一度通り過ぎて戻っている。
中へ入るとロビーになっていて、カウンターで販売も行っている。益々カフェっぽくなかったので招待券を持って聞きに行こうとカウンターにいた店員さんに向かって一歩踏み出すと、
「カフェのご利用ですね、地下になります。そちらの階段からお降り下さい」
と、質問する前に応えが返ってきて、またドギマギする。
その階段。吹き抜けに天井まで続く本棚のオブジェ。
「なんかトーマの心臓思い出すね」
相棒が呟く。
そして、中に入り、席に案内され、ランチを注文。
そして相棒と食事。男二人でってどうなのかなぁと思ったけれど、後ろの叔父さんは一人で来ていたり、特に畏まらなくてもいい雰囲気だった。
ジャガイモのスープを食べ終え、メインがこれ。パイ生地のようなものに、ナス、ズッキーニ、パプリカなどの温野菜が乗せられ、さらにレタスや生ハムで覆われている。
もはやこれがなんという料理なのかわからないまくしも。確認しようにもメニューもないし。
「よ、よし、食べるか…」
食べ方も解らない。相棒の食べている姿を見つつ真似するが、なぜかまくしもだけパイがバラバラになる。
やはり育ち方が違うのか…
食後のコーヒーを飲み、店を出る少し前に、トイレに行きたくなる。
「トイレどこ?」
何故か相棒に聞くまくしも。
「いや、知らんし」
そうね。
店員さんに尋ねると、
「ご案内致します」
と僕の前を歩き始める。
教えてくれるだけでいいのだけど、丁寧だなぁ、と思っていると、案内されたのは例の本棚。おや?
「秘密の扉でございます」
店員さんが本棚を押すと中に化粧室が!
普通にびっくする。というか、凄い。
よく見ると確かに表示もあるのだが、案内されなければ知らない人には全くわからないだろうなぁ。
そんなこんなで男二人のランチタイムは終了。本当に貴重な体験だった。
その後は相棒の舞台で使う小道具の買い出しをしたりして、解散。
お互い別々のカンパニーで12月に本番。お互いにもう休みもない。
「じゃあ、また年末にでも」
「そうだな、また」
サクっと別れる。
劇団を去った相棒と、
残った僕。
それでも、当たり前のように会えて、当たり前のように別れることができるのが、堪らなく嬉しい。