GSM(genitourinary syndrome of menopause) 閉経関連泌尿器生殖器症候群

 

閉経後は特に

女性ホルモン(エストロゲン)の低下に伴い

デリケートゾーンの不具合を生じやすくなります。

この不具合をGSMと呼びます。

 

  1)   デリケートゾーンの違和感(ちくちく、痛痒い)

  2)   乾燥感(性交痛)

  3)   おりもの(黄色く粘っこい、におい)

  4)   性器出血

  5)   下部尿路症状(頻尿、尿路感染症のくりかえし)

 

エストロゲンが減少すると、

コラーゲンの減少→柔軟性が低下→粘膜が萎縮します。

乾燥も伴うので

傷つきやすい状態となります。

 

さらにエストロゲン減少すると

腟の自浄作用*が弱くなり、

大腸菌などの細菌が繁殖しやすい環境になります。

 

  *腟の自浄作用とは

    腟の乳酸菌(デーデルライン桿菌)が

    腟内を酸性(pH4.0くらい)にキープして腟内環境を保つ

 

 

エストロゲン低下がGSMの要因ですが、

その他の原因として下記があげられます。

 

 1)汚れや異物

    腟内に入り込んだ毛髪やパルプの塊

    外陰部に付着した垢や紙くず

 2)加齢

 3)肥満(左右の陰唇の接触)

 

 

GSMを悪化させないために

炎症をおさえ粘膜の劣化を遅らせる努力も大切ですね。

 

 1)排尿について

  ・排尿は腟内に尿・ゴミが入るのを防ぎます

  ・排尿後はしっかり尿を吸い取ります

 2)清拭について(紙クズや垢が原因となる)

  ・トイレットペーパーを付着させない

  ・外陰部をきれいに洗います

 3)粘膜保護について

  ・帯下や尿漏れがある場合はよく吸収するパッドを使用します

     くしゃみによる尿漏れ時には、

     脚を閉じるので腟内に尿が入ります。

     この状態が続とGSMは悪化します

  ・温水洗浄便座を強く当てると腟壁劣化に繋がります

   控えめに使用するように

 4)フェムテックの使用

   外陰専用のクリーム、乳酸菌配合のゼリーなど

 

治療としては、

 

  1)   HRT(ホルモン補充療法)

  2)   エストロゲン腟錠 

  3)   エストロゲンの経口・経皮投与

      性器萎縮への長期的エストロゲン投与には

      体がんの予防で黄体ホルモンも併用が大切です

  4)   レーザー(クリニック)

  5)   モイストケアジェル(市販)

      セックス用ゼリー(リュープゼリーなど)

 

診療で気になること。

温水洗浄便座の使用についてです。

排便後に流したつもりでも洗浄できず、

むしろ便が飛び散っていることを見受けます。

 

大腸菌が弱ったデリケートゾーンに付着すると

ますます悪化、弱り目に祟り目です。

腟の炎症を増悪させてしまいます。

 

洗いすぎても粘膜によくないし

洗い方が間違っていても本末転倒です。

 

デリケートゾーンの具合が悪いとき、

洗いたくなる気持ちは理解できるのですが、

治癒するまでは

トイレットペーパーの使用をお勧めします。

「前からうしろ」へやさしく拭きましょう。