過去2回はこちら。
2010.12.20 球場考①~札幌ドーム・横浜スタジアム
2010.12.23 #448 球場考②~甲子園・大阪ドーム
1回目では、球場をただ賃貸しているだけで、管理する権利がないケースを紹介しました。
この場合、球団は売店収入や看板広告といった収入がとれないので、経営的にも厳しくなってしまいます。
2回目のケースでは、逆に球場を所有している場合で、ニーズに応じて自由にリニューアルすることができる2つの球場を紹介しました。
3回目の今回は、球場を所有はしないが、その管理する権利を得ているケースです。

野球をビジネスとしてとらえたとき、興業的にはとても不利だということは以前もどこかで書いたような気がします。
ホームチームはどんなに強くても勝率が.600程度、10回見に行って4回は負けちゃうんですね。
好きなピッチャーも1週間に一度くらいしか出てきませんし、好きなバッターもせいぜい打率.300くらいですから、見に行ったゲームでヒットやホームランを打ってくれる確率はとても低いです。
だから、経営的には、たとえチームが勝っても負けても、それとは別に楽しむことができる何かを用意しないといけないんですね。
今回の二つの球場はいずれもそれを備えているために、人気を得ているワケですね。
2009年にオープンした広島のマツダスタジアム。
blogでも取り上げています。→ コチラ。
屋根が無い総天然芝球場という、ボールパークに文法にかなった球場です。

この球場は広島市や県が中心となって建設したものですが、カープの要望を取り入れていますし、球場の管理権もカープが得ています。
球団はこの球場を作るにあたって、役員だけではなく、グラウンド整備や売店の担当者までメジャーのボールパークの視察に行っています。
そのため、球場の運営ノウハウについても一流のレベルに達していると言えるでしょう。
記事によると、それは業績面にあらわています。
以下記事からコピペ。
2008年、球団の売上は過去最高の117億円にのぼり最終利益は4億円。
4年前は売上が57億円、利益は1,400万円だったから、球場こそが利益の源泉だ。
(中略)
(球場の)利用料は年6億円で、ビールやグッズが売れるほど球団が潤う仕組み。
至れり尽くせりの厚遇だ。
手狭な広島市民球場では考えられなかったほどの設備とサービスのおかげで、観客動員は2010年もマリーンズを上回る160万人を集めました。
広島市の人口は120万人しかいません。県全体でも約260万人です。
首都圏にある千葉市や横浜市よりも豊かなマーケットとはいえない広島でこれだけのお客さんを集めるのはタイシタものです。
もうひとつはゴールデンイーグルスが管理している仙台のクリネックススタジアム(Kスタ)です。

ここは2004年に球団がスタートしたときに、球場の改装費用をすべて楽天が負担するかわりに球場の管理権を手にしています。
ここの使用料は年1億円と格安料金。まるでLCCみたい。
球団副社長はこう言っています。
「試合も含め7時間近く家族で休日を過ごしてほしい」
ここにも、先ほど書いた、球団の勝敗に関係なく球場で収益を上げる姿勢が表れています。
Kスタの見どころは球場の外にもあります。
ゲームのある日だけオープンする遊園地、 「こどもの国」 があるのです。
サイトにはコンセプトについてこのように書かれています。
こどものためのエンターテイメント『こどもの国』。
Kスタ宮城おなじみのイーグルストレインを始め「こどもが遊ぶ」「大人が休む」に適した場所です。
エアー遊具周辺には、ガーデンテーブル、ベンチなどもあり「ファミリーで楽しい憩いの場」を提供します。
ここにはこんな滑り台やSLまであります。


ここで革新的なのは有料!だということです。
今まで球場の外に野球と関係ないアトラクションを置いてカネを稼ぐという発想はありませんでした。
家族連れで球場に来るヒト全員が野球好きというのは少ないと思います。
お父さんやお母さんが好きでも、ゲームの途中で飽きてしまっている子供をよく見かけます。
将来的にお得意さんになってもらう子供が球場で退屈にしていたら、大人になっても来てくれないかもしれません。
でも野球と関係ない部分で、球場は楽しい場所だと思わせようとする戦略は他のチームでも見習わないといけません。
これが、球場をただ借りているだけの横浜スタジアムや札幌ドームではここまではしづらいことなのですね。
これが、結果的に球団の収益を左右するのです。
4回シリーズのこの特集記事。
最終回はまたいつか。