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村上春樹さんが父の従軍体験、克明に 「文芸春秋」に寄稿

5/10(金) 5:00配信

産経新聞

 作家、村上春樹さん(70)が亡き父の戦時中の従軍体験などを克明につづった寄稿文が10日発売の月刊誌「文芸春秋」6月号に掲載されることが分かった。村上さんが家族の詳細な履歴を文章で公表するのは初めて。

 寄稿のタイトルは「猫を棄てる-父親について語るときに僕の語ること」で計28ページ。父と野球をする幼少期の写真も掲載されている。それによると、平成20年に90歳で死去した父の千秋さんは昭和13(1938)年以降3度応召し、日中戦争の戦地を転戦した。12年の南京攻略戦に参加した部隊に父が所属していたのでは、との疑念を長年抱いていたという村上さん。従軍記録など調べた結果、別の部隊の所属だったと分かり「ひとつ重しが取れたような感覚があった」という。

 ただ、父が生前回想していた戦地での中国兵捕虜殺害の光景と、それがもたらした「トラウマ」を「息子である僕が部分的に継承した」とも明かし「目を背けたくなるようなことであれ、人はそれを自らの一部として引き受けなくてはならない」とした。その上で、数多の偶然が重なって生をつないでいく人間の姿を「雨水」に例え、「一滴の雨水には、一滴の雨水なりの思いがある。一滴の雨水の歴史があり、それを受け継いでいくという一滴の雨水の責務がある。我々はそれを忘れてはならない」と過去を直視し記憶を継承する覚悟を示した。

 父の体験が物語る戦中の暴力や負の記憶は、村上さんの「ねじまき鳥クロニクル」や「騎士団長殺し」といった代表的な長編の題材とも重なる。

 一方で、父子間の軋轢(あつれき)も詳述。村上さんが職業作家となって以降心理的な摩擦が強まったといい、20年以上全く顔を合わせない「絶縁に近い状態」を経て、父の死の直前に「和解のようなこと」をしたと明かした。

 公の場にあまり姿を見せなかった村上さんだが、最近は、ラジオに出演をしたり母校の早稲田大で記者会見に臨んだり、と発言する機会が増えている。

 今回の寄稿について「文芸春秋」の松井一晃編集長は「『文芸春秋』の令和第1号に、時代が変わろうとも人間にとって重要であり続けることが記された村上春樹さんの原稿が掲載できる意義を強く感じています」とコメントしている。



引用:村上春樹さんが父の従軍体験、克明に 「文芸春秋」に寄稿