循環器内科のK先生の診察の予約時間の始まりは9:30なんだけど…
無理を言って9:00にしてもらった。
まあ、診察というよりは検査結果を説明してくれるだけだからね。
ぴったり!9時に呼ばれた。
ノックをして…
「おはようございます…!」
あら。K先生…今日はなんだか様子が違う…。
髪の毛が…オールバック!
ん…高橋一生というか…誰か他に……
と、考えていたけどK先生はそんなことお構いなし(当たり前…)でパソコンの画面を操作していた。
どうもエコーで撮った動画のスピードが早すぎるらしい。
100mをできもしないのにボルトに挑戦した後のような、動悸の早さになってる。
しばし動画のスピード調整に集中しているK先生の様子を観察。
結婚指輪は前回と同じようにキラリと光ってる。
左手首には…こんなに若いドクターには似つかわしくない『Rolex』のデイトジャスト。
今時のドクターはT先生のようにアップルウオッチが流行りじゃないの?
なんだか違和感が…。
それにリストベルトが緩い。
ハイっ!私の想像力がぐーるぐる。
…誰かの(親の)形見的な?
…それとも最近はアンティークが流行り?
…診察に邪魔じゃない?(デイトジャストは重い)
…ただのボンボン?
……
K先生「はい。お待たせしました。こちらの画像がYさんの心臓です。」
エコーの画面。心臓が写ってるらしい。黒っぽいバックに白っぽい曲線のものが横になっている。真ん中あたりに何やら開いたり閉じたりする小さいドアのようなものも。
K先生「こちらが左心室で、こちらが左心房です。こちらからこの弁を通って血液が流れて行きこちらの大動脈を通って全身を流れていきます。」
ほうほう…。昔むかし、習ったなぁ。
K先生「Yさんの心臓のこの部分の動きは問題ありません。大動脈の部分にも問題はないです。」
K先生「今回、膠原病内科からのオーダーで膠原病に関係する部分の心臓の疾患がないか?重点的に調べてくださいとのことでしたので、その部分を…」
というと別の角度から写したエコー画面をモニターに写した。
今回の画像は心臓が縦に写っているもので、向かって右側に左心室と左心房、左側に右心室と右心房が写っていて、右心室と右心房の間を赤や黄色、オレンジ…などに色が変わる液体みたいなものが行ったり来たりしていた。
K先生「こちらは右心室、こちらが右心房。真ん中に弁があるのが見えますか?
この弁を血液が流れるんですが、この一瞬赤くなっているのが血液が『逆流』しています。」
Y「ほわっ?逆流?」
K先生「逆流と言ってもそんなに病的に逆流しているわけではありません。(何やらの数値がカルテに書かれていて…)○○mlとホンの微々たるもので、問題ありません。」
Y「よくあることなのですか?」
K先生「このぐらいのことは、よく見ます。気にする値ではありません。」
Y「そうですか…」
K先生「今回見てほしいのはそこではなくて、膠原病の症状で心臓に問題が出てくるとこちらの右心房と右心室が、左心房と左心室より大きくなってきます。」
Y「はぁ。」
K先生「壁も厚くなって固くなります。Yさんの場合は左心もしっかりしていて、流れも問題ありませんし、右心の大きさも正常です。エコーを撮ってくれて読影した先生からのコメントも『異常なし』(←英語 Almost w.n.l)です。」
(Almost w.n.l=Almost within normal limits=ほぼ正常範囲内)
Y「てことは、なんでもないってことで。」
K先生「はい。正常です。今のところ膠原病に関係する異常だけでなく、心臓に関しては他の異常も見られません。Yさんから、何か質問、気になることはありますか?」
異常なし!って言われたのに、なんだか残念な気が…
Y「あのぉ…。異常なしってことですけど…状態は…?
逆流はちょっとあるけど気にするほどじゃなくて、言うなれば『年なり』に正常ってことでしょうか?歳をとると心臓も年をとりますよね…。」
K先生は目を『高橋一生』が笑った時のように細ーくして声を出して笑った。
「『年なり』じゃ、ありません。Yさんの心臓は…かなりイイです。年より若いと思います。」
!!あーーーら、びっくり!
太鼓判押されちゃった。
もう何も聞くことなんてないな…これ以上はない。
Y「あーよかったです。ありがとうございました。」
K先生「では、この結果を膠原病内科のI先生にボクから知らせておきますね。」
深々とお辞儀をして、目にK先生の姿を焼き付けて診察室を出てきた。
9時5分。
たぶんK先生は3人目の主治医にはならない…循環器内科はこれで終了だな。
心臓は若い。
よしっ。