8時までに大学病院に着くつもりで家を出たのに、渋滞で…(あー、高速に乗ればよかったイライラするなら安いものだったのに)着いたのは8:15。

急いで受付を済ませて『遺伝子診療部』に向かう。
 
でも、よく考えたら一体この人たちの勤務時間は何時からだ?
通常の診療時間は9:00からのはず。
血液検査をする人たちはすでに長蛇の列。検査部門は始まっている。
 
遺伝子診療部の部屋に行くと、誰もいない。
「御用の方はお知らせください」と書いたベルがあったので、押す。
"ちーん" すぐに返事があり、淡いグリーンのニットを着た私より少し(だいぶ?)若い、でも同年代かな?と思われる女性が出てきた。
「おはようございます。Yuki姐です。」というと「はい。朝早くからすみません。お待ちしてました。」
と席を勧められ、何やら腕の下に敷く枕とプラスチックのケースに入った血液検査キットと思われるモノをテーブルに置いた。
 
「今回T先生から聞いて頂いているとは思いますか、遺伝子検査の為に血液を取らせていただきます。本来なら説明を聞いていただいて納得されて、検査を受けるとなった段階で血液を取るのですが、2回針を刺すのも…という事で。」
抗がん剤治療為の血液検査ともう一本、遺伝子用の血液を一緒に取っておくということだ。そして検査に同意した場合にはそれを使って検査する。
白衣を着ていないのでなんだか変な感じ。彼女は医師か?それとも看護師?
遺伝子のカウンセリング(?)をするということは医師なのだろう。どちらにしても血液検査は医療行為なので、どちらかだ。
 
左腕を出して準備をする。
ハイちくっとします。・・・ハイ終わりです。 いつものことだ。
 
そして、遺伝子とは?というところから説明が始まる。
順を追って話してくれたが、わかっていた(聞いていた)ことだったり、とにかく核心に触れるまではただふんうんと聞いていた。そして、気になるワードはメモをして(次男にいつも言われている)おいた。
 
帰って来てから『乳がん』になった人へ向けての冊子に
遺伝子の話が載っていた。私の家族にがんにかかった人がいないと思っていたのでスルーしていたところだった。
でも、実際のところ詳しく分かっていない。
 
そもそも、遺伝するがんは、『乳がん』『卵巣がん』『前立腺がん』と一部の『大腸がん』だけ。
だから、がんでも「胃がん」や「肺がん」にかかった家族歴は除外される。
 
父は最後は肺炎で亡くなったが、前立腺を患っていた。母も実際の死因は分からない。
そして若いころ(40代中ごろ)に卵巣と子宮を全摘している。子宮筋腫だったが卵巣に原因があったかもしれない。父は8人兄弟の末っ子。他の兄弟にがんにかかったとはっきりしている人はいない。父方の祖父母は父が小さいころに亡くなっている。がんは不明。
母の兄弟は5人。 つい最近母の妹(私の伯母)が2019年の末に乳がんになり、手術をしたと知らされた。それをT先生に診察の際に報告したあとに遺伝子診療部から電話があったので、T先生が検査を依頼したのだと思った。母方の祖父母もだいぶ前に亡くなっているので不明。
どれか一つでもあれば遺伝子検査をしたほうがいいというから、私はするべきなのだと思った。
 
検査には血液中のDNAの中にある13番目と17番目を調べる。その中のBRCA1とBRCA2に異常があると「変異陽性」となる。
 
「変異陽性」だった場合、上にあるPARP阻害薬が有効になる。私の場合は術後の治療に適応される。
「変異陰性」だった場合は治療が困難になるかも、しれない。
 
ただし「変異陽性」だった場合、娘にも遺伝する可能性がある。そのリスクは避けたい。
だけど、特効薬と思われる阻害薬=リムパーザは使えない。
どちらにしても、悩ましいところだ。
 
アンジェリーナジョリーは「変異陽性」だった。
彼女はそれがわかった時にはすでに実子が3人と、養子も何人かいたため
リスクが想定される乳房と卵巣を全摘した。
私も「変異陽性」だった場合は手術の際に全てを摘出することもできる。
今がんである右胸だけではなく、同時に。
 
そして、他のリスクも説明された。
遺伝子とは「究極の個人情報」と呼ばれているらしい。
私には弟がいるが私の遺伝子を調べると同時に弟の遺伝子がわかってしまう。
そして、私の遺伝子は病気との関係を調べると同時に研究材料にもなる。
もちろん検体が誰のモノかは名前は明かされない。でも、私のカルテがついてくるのだ。
がん、膠原病…そのほかの症状等。家族構成も。
大学としてはそういう検体を集めることは研究のために必要だ。私は喜んで協力したい。
 
最後に、これにかかる費用が説明された。
この検査の費用は¥200000。 うん。まあ、それぐらいかかるだろうと思っていた。
黙って聞いていた。 「変異陽性」だった場合、子供の遺伝子検査(私の場合は娘)は
¥10000(これは安い)。
「そして、この検査は「リムパーザ」が2019年3月から保険適応の薬になったため(乳がんの早期に発見して治療に役立つから)その薬を使うための検査として、検査にも保険が効きます。」
やったーーーー!ただじゃん!
 
「やります!遺伝子検査!」
 
そして「変異陽性」のために摘出手術をする際にも保険が利くそうだ。
 
検査結果には3週間かかるとのことだったが、もう少し早く検査結果を聞くための予約を取ってくれた。
あとで大学病院のHPに載っていた彼女の名前を見つけた。遺伝子カウンセラーだった。
彼女もピロリ菌にパラサイトされていたという話をした。その際に「何型ですか?」と血液型を聞かれた。「O型です。」と答えると「私もO型です!O型はピロリ菌がつきやすいんですよ。」
と。なんだか親近感がわいた。 
 
ともあれ、検査結果までちょっとドキドキだ。
そう思いながらも、時間がだいぶ過ぎているから、挨拶もそこそこにT先生のところに急いだ。