4月に朗読キネマ【葵上】に出演致しました。

 

葵上は本来、4月4日が千秋楽になるはずでしたが
コロナの影響で1日短縮して3日が千秋楽に。
 
稽古は日を追うごとにどんどん密度が増し
1公演ごとに、みんなでひとつのボルテックスに没入していくような
魂が宿ってゆく公演でした。
もう1日があったらどうなっていたんだろう?

もっと沢山の人に見て頂きたかったと思っていたら
今回、この公演が音源となって販売されることになりました。
※5月31日までの限定販売です。
⬇️から本編を少しだけ試聴できます。
 
朗読キネマ『#葵上』
配信プロモーション動画
https://www.youtube.com/watch?v=z_elKnSHzyo 
 
★【葵上】音源販売詳細


             [撮影:市川唯]





販売を記念して【葵上】を、少しふりかえってみたいと思います。
 
まず、毎年修験道をしているけれど
台本の中に修験者が出てくる作品は初めてでした。
 これもご縁。横川小聖を演じる #河内大和 さんの助けになればと少し法具の扱い方などお伝えしました。

 
 
いよいよ本格稽古スタート!というその時、
 
いきなり飲食店で謎の腹痛に見舞われ動けなくなり
驚いた店員さんに救急車を呼ばれ、初めての緊急手術&入院。
食中毒かと思ったら、急性虫垂炎でした。
 
しかし、入院期間はちょうど光源氏役の #鈴木彰紀 さんと、
横川の小聖役の #河内大和 さんが出演する【ヘンリー八世】の公演中。
手術&入院期間の一週間がちょうど、お稽古もお休みというミラクルタイミング!


退院したらすぐ全力でお稽古しよう!と思っていたのに
声を出すと思ったより腹筋が動き、切った腹膜の傷に直撃 えーん爆弾
「退院」って動ける最低基準で、完全治癒ではないんですね。
声を出しても痛みがなくなったのは本番3日前でした。
 
なんとか間に合ったけど、もっと本域でたくさん声出し稽古して、
もっと心と体に感覚を叩き込みたかった。
 
 
ちなみに私の声の一番鳴る音を使うと
高く響きすぎて光源氏より年下に聴こえたり
最初、他の方よりすこし浮いてたんですよね。
 
音質を合わせるため、私はすこし低めの、
奥にくぐもった響かない音を推奨されていたのですが
これだとどうしても音圧がでないし、細かなニュアンス調整ができない。
 
なので公演中に自分の中で新たな発声法を作り出しました。
 
一番鳴る音は使うけれど、
喉奥を拡げるタイミングと、息の調節、
響きすぎる文字に注意して空気を逃す鼻腔の開閉。
 
常に意識をある一点に置き、アコーディオンの原理で腹筋を調節して
響くけどナチュラルに落ち着く空間を発見。
 
時間がないので、体に馴染ませるために稽古以外の時間はずっと録音を聞いてました。



声優のお仕事は、マイクの向こうにいるお客様に疑似体験をしてもらう仕事。
 
テレビやCD、イヤホンといった媒体で聴かれる事が多いので
日常で会話をしている時と変わらない距離感でのリアルさや感情表現を、
マイク前では追及することが多い。
 
ナレーションにしてもマイクを通した聞き心地の音量が前提。
 
でも舞台の場合は生声で、
『遠くにいるお客様にも届けることが前提』なので
ある意味、日常会話の生理では使わないくらいの音量と音圧が必要。
 
日常のリアルな音量の表現を、 
遠くにいるお客様まで聞こえる音量に上げ、
しかもナチュラルに届く音圧に調整しなければならない。
 
それは【届ける意識】の問題であると同時に、
物理的に【発声自体も変える】ことが必要になる。
 
マイクを使わず、広い空間に生声で届けるには
日常の生理を捨てて、
ボリュームアップしつつもナチュラルに聞こえる【舞台発声】の生理に変えなければ。
 
他の皆さまは普段から舞台畑の人なのでそれが普通で
私だけ『舞台での』リアル表現に馴染んでない。
腹筋使えなかったから時間もない!
 
今までの【マイク前リアル表現】を切り離し
【舞台でのリアル表現】にするために
本当に毎日が徹夜に近い突貫工事でした。
 
でも、それで表現の幅も拡がり、
非常に勉強になりました。
一旦、その媒体の生理が分かれば、
「演技」という意味では根底は同じ。
最後はなんとか溶け合えたと思います。
 



 
私は昔からずっと、朗読は同時体験だと思っています。
 
自分が物語に没入して語っているとき、
同じ感覚をお客様が共有していることを感じる、
テレパシー的な繋がり。
 
演者が強く感じたものが、そのまま伝わる。
 
本当にリアルに思い描いていれば、
情景まで浮かび上がる。
その心象風景も、感情も共有し
みんなでひとつになっていく感覚が、
朗読の大好きな所です。
 
大人も子供も関係ない。
そこに降ろしているエネルギーが本物なら、
必ず同じものを感じてくれる。
 


今回は、以前から朗読や声に関する価値観が近く、時々お話していた #高橋郁子 さんにオファーを頂き、【葵上】で花散里と照日巫女を演じさせていただきました。
 
ストーリーテラーでもある穏やかで暖かな花散里と、
凛として真っ直ぐな照日巫女。
 
その二つの役の人格の役作り、
そして大半を占める物語の語りは思った以上に時間がかかりました。
 
 
郁子さんの演出はとても緻密で、細かい音階までもが『型』としてあります。
それがまさに楽譜のように言葉を奏でる表現になる。
 
最初は演出イメージと生理を重ねていく作業が試練。
これはどんなベテランの人でもそうかもしれない。
 
特殊な演出ということもあり、
途中、どうしても感覚に落とし込めなくて
演者の主観の感覚と、客観の演出イメージ、
言葉の行き違いに悩んだけれど
表現は必ずどこかで繋がっている。
 
試行錯誤の中、
求められるものを自分の感覚に翻訳できてからは
イメージを共有できるように。
 
いま思うとそのプロセスも楽しかった。

根気強く何度もディスカッションしてくださった郁子さんに感謝✨
 
 
そんな特殊で繊細な行程を経て作られた
朗読キネマ【葵上】。
 
音源を購入できるのは今月5月31日19:00までです。
「言葉の楽譜」を公開した台本も同時に発売しています。
 
販売終了まで、あと少し。
この機会に是非、お聞きくださいませ。
⬇️から本編を少しだけ試聴できます。
 
【音源初公開】

朗読キネマ『#葵上』
配信プロモーション動画、第1弾を公開しました!
https://www.youtube.com/watch?v=z_elKnSHzyo 
 
 
★【葵上】音源販売詳細
https://idenshi195-aoinoue2020.peatix.com/
https://idenshi195.com/info/20200510/


光源氏役の鈴木彰紀さん。唯一の言葉の楽譜経験者の言葉にすごく助けられました。感謝✨m(_ _)m

横川小聖役の河内大和さん。轟くような修験者の声は本物以上でした!


そして六条御息所役の稲川実加さん。

二人で同時に語る台詞があるのですが、
やっていくうちにどんどん台詞と気持ちがシンクロしていき不思議な感覚に。感情が流れ込み、増大してまた相手に流れ入る。二人なんだけど共有している感覚は言葉の楽譜ならではなのかもしれません。

楽屋も隣同士ですっかり仲良しに。

中田さんと一緒に撮った写真がなかったので和楽器を。琵琶の音、笙の響き、本当に素敵でした。

衣装も黒一色なのにそれぞれの役柄や平安時代を彷彿とさせるもので素晴らしかった。

いつか、みんなで再演できたら嬉しいです。


【葵上】の販売期限は明日まで。
是非是非、この機会にこの作品世界に触れてみてください✨


※5月31日まで期間限定販売。
⬇️から本編を少しだけ試聴できます。
 
朗読キネマ『#葵上』
配信プロモーション動画
https://www.youtube.com/watch?v=z_elKnSHzyo 
 
★【葵上】音源販売詳細