細かな雨が静かに降ってます


大阪府南部

雨のち曇

最高14℃  最低10℃ 降水確率80%
花粉情報 少ない


今日の暇人

小説家になってみる

小説は、書くものではない。読むものだと覚る魂が抜ける

事故物件 Ⅴ



恐る恐る手を伸ばす…
なんの抵抗もなく女の腕をすり抜けた。
自分の掌を凝視してしまう。

それから女を見て「もう1回触っても?」

女「どうぞ」やはり触ることが出来ずすり抜けてしまう。
変な汗が出てくる。

女「ねっ?わたし幽霊のようです」と少し寂しそうに言った。

「でも、コーヒー入れてくれてるじゃないですか?何かのトリックですか?」

女「物には触れることが出来るのですが人には触れられないんです」

ホラー映画の影響かもしれないが彼女が幽霊だと信じられない。
「貴女がホンモノの幽霊だとして、いつまでもここに居られても俺も色々と困るわけで」

女「でも、ここから出られないんです」
彼女は、深いため息をはいた。

女「私の前にここに居た先輩幽霊さんにいろいろ聞いたんですが成仏すればここから離れられるらしいです」

「ヘェ、それじゃ先輩幽霊さんは成仏したんですね。貴女は、何かやり残したこととか伝え忘れたこととか心残りが有るんですか?それが叶ったら成仏出来るんですね」

女「先輩幽霊さんは、心残りが叶わず消えました。」

「消えた?」

女「そうです。この世に留まれる時間が決まってるようで それまでに叶わなければ暗闇に消えるそうです」女は辛そうな顔をする。

「貴女の心残りは、何なんですか?」

女「それが分からないんです」

「何かお手伝い出来ることは? てか名前は?」

女「・・・ゆ・か?」

「ゆか?さんですか?」

女「たぶん…」

「名字は?」

女「思い出せないんです。何も覚えてないんです。」


その日から奇妙な同棲生活が始まった。