‹智くん、本当に送らなくて大丈夫かい?›
『はい。ショウも来てくれますし』
「……………」
«その、翔が頼りないから心配してるのよ(笑)»
「……………」
『大丈夫です。初めてじゃないし。』
«あ、そうだったわね(笑)»
『じゃあ、行ってきます。伯父さん叔母さん、今まで本当にありがとうございました。』
と、深々と頭を下げると
«おいおい、今生の別れみたいな事言うなよ。終われば帰って来るんだし(笑)»
『……あ、そうですね😊』
«…………»
智の荷物を持つと
‹じゃ、翔、頼んだよ›
「はい……」
サトシの荷物は意外と少なかった。
バックとスーツケースだけ。
潤たちには、サトシが今日出発することを知らせてない。
サトシには、しっかり口止めさせた。
バスで駅まで行くつもりだったけど、上手く通りかかったタクシーを止めた。
『ショウ?』
「いいから乗って……」
スーツケースはトランクに仕舞われて、車内は身軽になった。
「上野まで…」
『結構(距離)あるよ』
「いいんだよ。ホラっ!」
奥にサトシを押し込んで乗る
サトシと一緒にいられる時間は、あと少しなんだから……
落ち着くと
「サトシ…」
指をからめて握った
『ショウ…元気でいてね。』
「無理……」
『…そんなこと…言わないで』
サトシの手が震え始めた
困らせたくいのに……いつもオレは彼をこまらせている。
実際明日から、どうやってあの家で暮らしていけば良いのかわからない。
サトシのいない世界なんて……
考えられない
考えたくもない……
『すぐ、会えるから…』
「出来ない気休め言わないで…」
こんなこと言うつもりじゃない
だけど…
『ショ…意地悪だよ…』
涙目のサトシを見ないようにして
「サトシ…帰ったらもう一度鎌倉に行こうね」
サトシがうんうんと頷く
おれたちのただならぬ関係に気づいたのか、運転手がミラー越しにチラッと見た。
チェッ……
ふふん
サトシ……
確かにすぐ会えるかも知れないよ…
今日の飛行機は満席
そんなことは知ってるさ
だけど…、当日キャンセルってのがあるかもしれない。
オレはカードもパスポートも持ってきた…
チケットさえ手に入れられれば……
サトシを成田だけじゃなく
バルセロナまで見送る事もできるんだから……