「僕にはパートナーがいます。」



日本ではもう、このBIGニュースは伝わっているはずなのに、親父やオフクロから連絡が来ないのが不思議だった。


病院に行く前に、米国の記者クラブのインタビューだけ、受けてくれないか?

と、マネージャーから連絡があり、これは、事務所も通ってるらしい。

と、なると咄嗟に断れないと知る。

「わかった…」



会場に入ると、思ったより多くの記者

カメラマン。

だけど、日本人記者も多かった。

智くんにも同席して欲しかったようだけど、本人は今、過労で入院している。とだけ伝えた。



«どうして、コンサート会場で同性婚を告白したのですか?»

«日本では認めてないですよね?»

「はい。でもどうしても、ファンの皆様や、両親に理解をして欲しかったので……」

«相手の大野さんは、この事をご存知でしたか?»

「いえ、私の思いつきです。」

«結果、変わりましたか?»

「まだ、わかりません」

«大野さんの何処に魅力を感じました?»

「それは……」

«本当に、生涯彼だけを愛していけますか?»

「あ、はい、モチロン」

矢継ぎ早の質問だ。


日本の文化についての事ばかりだと思っていたが、日本人記者からは週刊誌レベルの質問も多く…予想外だった。



そんなこんなで、病院に着いたのが

夕方になってしまった。

教えてもらった病室に向かうと

智くんが、車椅子に乗って出てくるところだった。

「智くんっ!」


『あ…翔くん…』

「歩けないほど悪いの?」


《いや。そうじゃないけど。まだ、目眩がするっていうから…》

「検査結果は聞いた?」

と言うと、大きな封筒を渡された。


《一応…急な治療が必要と言うことは無さそうだけど、東京に帰ってから、これを持って、改めて病院に行ってくれと言われたよ。》


「わかった。松本、世話になったな」

『迷惑かけてごめんなさい。』

《じゃ、オレは翔さんと交代するね。リーダーちゃんと治してよ。》

『うん…』

松本に、責められることを想定していたが、それも無かったので、ちょっと拍子抜けの感があった。。



それから、智くんが大丈夫だと言うのでオレ達は、翌日の便で帰ることにした。

東京では、どんな洗礼を受けるんだろう。

でも、自分が撒いた種は自分で摘み取らねば。

身勝手な行為で、智くんが、集中砲火を浴びるような事が無ければ良いが…

とにかく

今のオレは、彼を一番に守ること。

それだけに集中したかった。



だけど……翌日の便の中で

オレの、その行動が

思わぬ波紋を広げているのがわかった。