智くんの個展は、盛況のうちに終わった。
やがて、相葉とオレのドラマも終わり
嵐としての体制が整った
と言っても、今までコンサートで散々やった曲だから…
敢えて衣装も、作らなかったんだ。
日本から一緒に行くスタッフさん
ダンサーさんに加え
動向記者も沢山来るそうだ。
そして二宮は、家族で参加した。
これが、あの頃と圧倒的な違いだ。
だけど……オレだって…、
嵐……
これまでの積み重ねだから、緊張しなくても良いのだが、他のグループとフェスの体験がない我々は、デビューに近い緊張を覚えた。
飛行機は、ファーストクラス。
他の乗客とは、違う待遇の待合室
ドキドキしながら、ハワイに行ったデビューの時より、ずっと大人になった僕たちは、また新たな門出になるんだ。
空港からは、スタッフさんたちに出迎えられ、ホテルに案内された。
もちろん、一人一部屋。
窓から見えるニューヨークの風景は、東京とは全然違う。
偉大なビル群は、おれたちに立ち向かっているようで恐怖さえ感じる……。
頑張れ……オレ……
コンコン………
その夜、智くんの部屋をノックした
「智くん。食事に行かないか?」
…………………
ピンポン♪
チャイムを押しても出てこない
あれ?
仕方なく電話してみる
『………モヒ、モヒ……』
明らかに寝ていたと思われる
「智くん、ドア開けて」
カチャ……
『ごめ……飛行機で寝られなくて……』
あり得ない
「まぁ、良いさ。飯でも食べに行かないか?」
『疲れたから、今度に……』
ダメだ。
この人、何処に行ってもルームサービス専門だったわ。
「ふふっ………」
『何が可笑しいの?』
「いやぁ、kyotokyoを思い出して……智くんは先輩でさ、オレたちにルームサービス取ってくれだよね?」
『そうだっけ?』
「あの時は、将来自分がニューヨークのステージに立つと思った?」
と聞くと、冷蔵庫から水を持ってきて
『まさか、あの時は事務所に残る事すら、考えられなかった。デビューもしたいとは思わなかったし。』
「そうだね。オレもデビューなんか出来るとは思ってなかったよ。ついでに、売れる事もないんじゃないか?って。」
『そうだねぇ…』
懐かしい時代を回想しながら
2人……
お互いを見つめ合って笑った。
何となく心細くて、何となく幸せ……
智くんの頬に手を伸ばして
「サトシ…」
柔らかいキスをした。
そう
あの頃は、偉大な先輩だった彼と…こんな仲になるなんて……誰が思っただろう。