私立の新学期は、とっくに始まっていた。
あの法事以来、オレたちは急速に仲良くなっていった。
一緒に家を出て駅まで行き、オレはそのまま電車に乗り、智は駅を通り越して公立高校へ行く。
そんな日常が始まっていた。
『翔くん、バイバ~イ』
「あぁ、気を付けてね💕」
[……翔ちゃん]
ふいに後ろから声をかけられた
同じ小学校卒の相葉だった。
[今、見てたんだけど。。一緒に歩いていた少年は誰?]
偶然、彼も同じ中学を受験していた。
「従兄弟だよ、ホラ、あ、でも(面倒だな)いや…説明するには長いから。学校へ行くのに、ふさわしい話じゃないし……」
というと
[えぇ〜。何なに?余計興味がわくなぁ。]
しまった。
彼は、人の興味を集めてしまう
まさか、相葉まで……
いや、考え過ぎだろう。
[可愛いじゃん。今度紹介してよ]
ほらぁ……ヤバいし、ぜってぇ嫌だ
「相手は男だぞ」
[わかってるよ。一緒にゲームとかさぁ]
「お生憎様。彼はゲームをしない」
[水族館とか好きかな?]
「好きじゃない(知らないけど)」
[じゃあ、皆で遊園地は?]
完全にデートのノリじゃないか
「遊園地……さぁ…どうかな?」
[翔ちゃん、ヤキモチやいてる?]
「えっ?」
[さっきから、阻止しようとしてるよね?]
「………彼は、最近お母さんを亡くしたばかりなんだ。そんな気分じゃないだろう」
[………そうだったんだ。]
それから、相葉は黙ってしまい
その後も智くんの事は何も聞かなかった。
後になって考えたら
そこで、安心してしまったのがオレの詰めの甘さだったかも知れない。