一曲目は、Whenever you call
バラード調で、ロックフェスに相応しいか?と、言われたら確かに盛り上がりに欠けるかも知れない。
だけど、全員が一致した。
勿論、全文英語だという点もあるが、何よりオレ達がこの曲を好きだった。
そして、2曲目は意見が割れたけど
P・A・R・A・D・O・X
で、行くことになった。
最初の振り付け通り、ハットを使用する。
フェスでは、歌が上手い
踊りが合っている、
事より、ノリが大切だった。
曲が決まれば、あとはひたすら練習するに越したことはない。
一つだけ良かったのは、司会者が日本での僕らのことを、ちゃんと紹介してくれるというところ。
これで、オレ達は少し安心した。
日本から連れて行くスタッフも決まり、オーディションで選んだというダンサーさんもつくことになり、いよいよ全員が揃ってのリハが始まった。
二宮が、鏡の前で何度も振り付けを確認している。
智くんは練習した甲斐があり、バックダンサーさんたちともマッチした
完璧な出来栄えだった。
《リーダー良いよ!》
これには、プロデュースした松本が絶賛して、喜んだ。
そう、大野くんはコンサートで輝く。
誰にも真似できない、彼ならではの独特の空気。
透き通った歌声
キレキレのダンスは、プロのダンサーさんたちにも負けてない。
額に光る汗の下で見せる、真剣な眼差し
それは、とても強い眼光
そこには、いつもオレに見せていた智くん。……は何処にもいなくて
エンターティナーとして存在する大野智だった。
パンッ!
《ちょっと休憩しよう》
松本の一声で、テーブルの水をとるメンバー
スタジオの中は、ダンサーの荒い息が聞こえ温度が上がる
[はぁ〜キツい。………ねぇ。翔くん。大丈夫?]
相葉が隣に座って声をかけてきた。
「あぁ、さすがにブランクがあって、(体に)こたえるなぁ。」
差し障りなく答えたつもりだった。
[そうじゃないよ。わかってんでしょ?]
意味深な問いかけに、今のオレの心境を聞かれているんだとわかった。
「………え………」
[ごめん。デリカシーに欠けていた。忘れて…]
相葉が気まずそうに立ち上がる。
オレの今は、外からみてもバレバレだということか……
『翔くん…』
初めて智くんが声をかけてきたのは、打ち合わせ含め、8時間後だった。
『今日から、自分のアトリエに帰る。』
「えっ!え……それって……」
もう、オレはパニックだった。
『今まで…………』
もう、帰ってこないのか
松本に何を、言われたんだ?
その後も言葉は続いたみたいだけど
きっと
『今まで、ありがとう…』なんだろ?
彼と暮らせなくなる事は、一番望んでないこと。
オレの頭は真っ白だった。