朝まで眠れなかった……
この日公立高校は、授業開始前の登校日だった。
そのせいか、早くからリビングかキッチンでオフクロの声がした。
“翔〜!!あなたも起きなさいっ”
えぇ〜っ!
“まだ、慣れないでしょう?学校まで私、行こうか?そうだわっ翔にいかせよう!”
仕方なく
部屋着に着替えて降りると
そんな話をしていた。
「勝手なこと言うなよ〜」
こっちは、まだ夏休み中なんだからぁ。
『オバさん、ダイジョブ。カズと行くから』
“あぁ、それなら良かったわ”
カズって……
小学校の時、同じクラスだった二宮和也のことかなぁ?
この家に来たばかりなのに、智には泊めてくれる友達の松本、学校に一緒に行くほど仲の良い和也
友達が、既にいた事に驚く。
その本人は、素直に出されたクロワッサンとスープを飲んでいた。
そして…その張本人は、オレを寝不足にするほど悩ませた事など、知る由もない。
やがて申し合わせたように、家のインターホンが鳴り、智が出ていくと門の前には、想像通り二宮和也がいた。
『もう?来たの?』と
ちょっと慌てて、残りのクロワッサンを口に詰め込み、急いで玄関に向かっている。。
庭の前の通りを、楽しそうに歩く2人が見えた。
楽しそうだった。
オレも公立にすれば良かったかなぁ
あんなに努力と苦労の末に勝ち取った、私立の男子校。
それが、今公立高校が羨ましいなんて……
小学校の友達は、殆ど公立に行ったから、女子と遊んだりなかなか楽しそうだと聞いている。
大学受験は、どちらもスタートが同じ。
何だったんだよ
あ…………アイツ
どこの大学行くんだろう
オレはだんだん彼の事が、気になりだしていた。